author-banner
島田 たのじ
島田 たのじ
Author

Romances de 島田 たのじ

ありんすっ‼ ~吉原、華の狂騒曲~

ありんすっ‼ ~吉原、華の狂騒曲~

主人公の梅乃が老舗妓楼で様々な経験をする。 妓楼や花魁、玉芳などから寵愛を受けて梅乃が花魁になっていく物語
Ler
Chapter: 第九十二話 名字
第九十二話    名字「おはようございます……」 梅乃が早くに岡田の部屋に顔を出すと、「あれ?」 岡田は出掛けていたようで、ポカンと部屋を見つめている。「う 梅乃ちゃん、今日も勉強なの?」 古峰が話しかける。 ここ最近、梅乃は勉強ばかりで禿としての関わりが少なくなっていた。「ごめんね、古峰…… 仕事を押しつけちゃって」「大丈夫。 一花たちも頑張っているからさ。 う 梅乃お姉ちゃんが医者になれば、私も花魁になれるから……」 古峰は梅乃に心配かけまいと笑って振る舞うようにしていた。この日、岡田は朝から外出をして吉原から出ていっていた。 三原屋には往診の依頼が来ていたが、梅乃の悪い噂もあり断っている。(死神か…… 確かに多くの人が死んでいった。 赤岩先生や絢も…… 本当に私が医者になって良いのだろうか……)梅乃は筆を止めることなく医術書と向かい合っていた。「お婆、失礼します」 采の所に片山が来ると、「なんだい? どうしたんだい?」「実は……」 片山が采に耳打ちをすると「本当かい? よくやった!」 采の声が響く。“ビクッ―”その瞬間、梅乃の背筋が伸びる。 やはり采の大声には無条件で反応してしまうようだ。「どうしました?」 梅乃が采の
Última atualização: 2026-05-21
Chapter: 第九十一話 新たな道
第九十一話    新たな道「さぁ、梅乃。 これを頭に叩き込むんだ」 岡田が医術書を大量に出すと、「はい……」 梅乃は医術の勉強に励んでいく。この医術書は赤岩が残してくれた物だ。(これは難しいな…… でも、赤岩先生が残してくれたんだ)梅乃が勉強に励んでいる時「梅乃、大丈夫かな……」 小夜が岡田の部屋を心配そうに見つめている。 梅乃は岡田の部屋を借りて勉強に打ち込んでいた。 それを見て小夜が変わっていく。 吉原で梅乃の噂話をしている者を見つけると 「医術の知識も知らないクセに、文句を言ってるんじゃないよ!」 小夜が文句を言い出す。 これには采も困っていた。 梅乃の噂話をしている人たち全員に文句を言っていたのだ。 禿だけではなく、妓女にまで食ってかかっていく小夜の行動に呆れていたのだ。 「すみません…… おたくの小夜ちゃんから怒鳴られたって言っていまして……」 これは中見世の遣り手が三原屋に苦情を言いに来ていた。 「すまないね…… 梅乃の事となるとカッときちまうんだよ……」  采は何件もの苦情に頭を下げている。 「小夜!」 つい
Última atualização: 2026-05-16
Chapter: 第九十話 死神と呼ばれて
第九十話    死神と呼ばれて 明治九年 二月。 寒い吉原に涙の雨が降る。 「寒いから濡れないように」 菖蒲が妓女たちを見送ると 「はい。 いってまいります」 妓女たちは静かに見世を出る。 前日、長岡屋では花魁の喜久陽が亡くなった。 襲名の道中、足を捻挫して梅乃が確認すると梅毒が出てきた。 そのまま床に臥せっていたが、回復することなく他界してしまったのだ。 普通の妓女なら葬儀はしない。 若い衆や主が大八車に乗せて浄閑寺へ投げ捨てていくのだが、喜久陽は一日といえど花魁である。 長岡屋で葬儀が行われたが、坊主を呼ばずに献花だけで済ませた。 「この度は……」 妓女は頭を下げ、三原屋が用意した切り花を置いていく。 「すまないね…… 采さんによろしく言っておくれ」 長岡屋の遣り手が頭を下げると 「お伝えします」 妓女は三原屋に引き返していった。 「次は私たちと一緒に……」 菖蒲と勝来が声を掛けると、禿六人が一緒に向かう。 「梅乃……」 勝来が声を漏らす。 梅乃の表情は暗かった。 (また梅乃ちゃんが責任を感じて……) 古峰がチラッと見て察してしまう。 梅乃が喜久陽の梅毒を見つけた時には手遅れだった。 しかし、梅乃は責任を感じてしまっていたのだ。 (また救えませんでした……) 
Última atualização: 2026-05-11
Chapter: 第八十九話 街の明かり
第八十九話    街の明かり梅乃は大門の前に行き、会所の男性に話をする。「すみません、古峰が……」 梅乃が話すと、 「確かに出ていったな……」 会所の者は古峰が出て行ったことを話す。 三原屋は大見世であり、禿服で判断されていたようだ。「ありがとうございます。 それと、私は必ず戻ってくると三原屋の人に言ってください」そう告げて梅乃は吉原大門を出ていく。 細い道を下り、見返り柳を越すと左右に道が分かれている。(どっちだ……) 梅乃がキョロキョロしていると「お前さん、吉原から逃げてきたのかい?」 年配の女性が話しかけてきた。「いえ、同じ禿の子を探しにきました」 「子って、お前も子供じゃないか」 梅乃が説明すると、女性が切り返す。(むっ―) 少しカチンときた梅乃が、「これと同じ服だと思うのですが、その……」「それなら、アッチ行ったよ」 女性が指をさす。 「ありがとうございます」 梅乃は大きく礼をして走っていった。(元気だこと…… 何でワッチは吉原を出たんだろうね……)女性は吉原を出て夜鷹になってしまった。 元気で綺麗な服を着た禿を見つめ、少しの後悔を感じていく。(どこ? 古峰……)梅乃は走っていく。 吉原を出ると、その周りには小さな露店が並んでいる。 これは吉原帰りの
Última atualização: 2026-05-07
Chapter: 第八十八話 予感
第八十八話    予感「こんにちは……」 小夜が話しかけると「こんにちは……」 女性は笑顔で返してくれる。走って追いかける梅乃と古峰が到着すると……「ま まさか玲さん……」 梅乃が驚く。 古峰の目が厳しくなると「梅乃ちゃん、久しぶりね」 玲はニコッと微笑む。「あ あの…… また梅乃お姉ちゃんに何か?」 古峰が前に出て、背中で梅乃を隠すと「そんなに心配しなくて大丈夫よ。 もう知っているでしょ? 香梅楼のこと」 玲が言うと、梅乃は頷く。 「母の仕事だからね…… 様子を見にきただけ。 じゃね」 玲は微笑んでから香梅楼に向かっていった。「あれ? 玲って人、梅乃を誘拐した……」 小夜が遅れながら驚いていると、(多感な割に鈍いのよね……) 古峰は苦笑いになる。玲が香梅楼に到着すると、「玲……」 洋蘭が早足で近づいてくる。「母様、さっき梅乃ちゃんに会ったわよ」「……」 洋蘭は下を向く。(買えなかったのね……) 玲は雰囲気で察してしまった。「お父様は、先ほど九州に向かっていきました」 玲が報告をすると、洋蘭は落ち込んでしまう。 これは平八郎の行動が屋敷全体に影響する問題だと分かってしまったからだ。「お前は……」 洋蘭が話しだすと、 「わかりません…… どうするかは今後、決めます……」 そう言って、玲は吉原を出て行った。「あの……」 奥から定彦が出てくる。 定彦は香梅楼の若い衆として働いていた。「ああぁぁ……」 洋蘭が言葉にならない様子を見ると「また大きな問題か……」 定彦は理解できてしまった。数日後、吉原に変化が訪れる。 四郎《しろ》兵衛《べえ》会所《かいしょ》の者が三原屋やってきて、「芸《げい》娼妓《しょうぎ》解放《かいほう》令《れい》が発令されてから五年が経つことから、大幅に緩和することになった」 と、言い出してきた。「確かに時間が経ちましたけど…… それで緩和とは?」そう聞くのは文衛門である。 いきなりの方針転換に驚いていると「今後は妓女も大門を自由に通れるようになった。 我々は、顔の確認と記録はするが見世に連れ戻すことが出来なくなったんだ……」四郎兵衛会所の者が申し訳なさそうに話している。 これは吉原の妓楼が組合のような形で四郎兵衛会所や岡引きに金を出していたからだ。 受け取っているものの、取り締まりが緩くなってしまうことに
Última atualização: 2026-04-29
Chapter: 第八十七話 約束の年
第八十七話    約束の年明治九年、正月。 元旦は吉原の妓女にとって数少ない休みとなる。「ほら、出来たぞ~」 片山が鍋を運んでくる。 この日は妓女たちを労う為、若い衆の片山だけでは手が足りない。 そこに禿の六人も手伝いに入っていた。「少し運んだら、お前たちも雑煮を食べな」 片山が梅乃と小夜に言うと、「でも、潤さんだけじゃ大変でしょ。 私もやるから」梅乃は数日の台所の勉強をしていた為、どこでも器用に仕事をこなしていく。「梅乃姐さん、凄いですね……」 新しい禿の一花が言うと、「そ そうでしょ。 台所だけじゃなく、遣り手も出来るんだから……」説明しながらドヤ顔するのが古峰である。「小夜姐さんは、どんな仕事を……?」 一花が訊くと、小夜は不機嫌そうな顔をしてしまう。「どーせ、何もできませんよ」 顔を背ける小夜が子供みたいな顔になると、「さ 小夜お姉ちゃんは真面目で禿たちの班長をしているんだから、立派なんだよ」 古峰は気遣いの達人である。 小夜の機嫌を損ねないように話していった。「出来たよー 食べよう」 梅乃が雑煮を運んでくる。そして食べようとすると、 「梅乃― お餅~」 妓女からのお呼びが掛かってしまう。「先に食べてね」 梅乃は台所に向かっていく。毎年、正月になると雑煮が振る舞われる。 妓女たち
Última atualização: 2026-04-28
Explore e leia bons romances gratuitamente
Acesso gratuito a um vasto número de bons romances no app GoodNovel. Baixe os livros que você gosta e leia em qualquer lugar e a qualquer hora.
Leia livros gratuitamente no app
ESCANEIE O CÓDIGO PARA LER NO APP
DMCA.com Protection Status