「疲れてなんかいないですよ、真白さん。ご一緒にお買い物できて楽しかったです」
凛も色々と勉強になった。
「あ、そうだ。お願いしたいことがあるんだけど」と、真白は「お願いね」という顔で言い出すと、可愛らしさが際立っていた。
「何ですか?」
「実はね、お茶会を開催したのよ。みんなでお茶を飲みながらおしゃべりして、茶道について語り合うパーティーなの……」
本来の講師はベテラン茶道師で、契約も済んでいたが、昨夜急な病いで緊急入院してしまい、まだ危険な状態が続いている。
「……明日がお茶会なのに、先生の状態では参加できないわ。代わりの適任者もすぐには見つからなくて。すみれから聞いたんだよ。あなたは茶道にも詳しいらしいと、お茶の淹れ方が上手だって……」
真白は少し間を置いて続けた。「だから、厚かましいお願いなんだけど、先生の代わりに講師を務めて、みんなにお茶のことを教えてくれないかな?できればお茶の淹れ方も披露してほしいの」
このパーティーは彼女が主催したものなので、もし失敗したらみんなに笑われてしまうだろう。
凛の茶道を実際に見たことはないが、すみれから聞いた情報によるものだ。まぁ、お茶について説明できれば、お茶を淹れられれば十分だ。
真白も凛に名人級の技術を期待しているわけではない。
「そうですか……」凛は2秒考え、真白の期待に満ちた視線に心が緩んだ。「わかりました。開催地を教えてください」
「よかった!ありがとうね、凛!本当に私の救世主ちゃんだね!」
その夜、凛は陽一に休みを申し込んだ。
陽一が理由を尋ねると、彼女は遠慮なく、お茶会のことを話した。
ついでに会場のあり処も確認した。
凛はすぐ場所を共有した。
見てみると、実験室から約5キロ離れたブルガリホテルにあり、終了時間は午後5時だ。
「退勤時間帯だとタクシーが捕まりにくい。明日は近くで学術シンポジウムがあるから、終わる時間が同じくらいだ。ちょうど迎えに行ける」
「お願いします」
……
翌日、お茶会は予定通りに開催された。
社交界の名だたる奥さんたちがほぼ出席し、それは主に真白のメンツを見てのことだった。
庄司家の次男の妻で、社交界の「リーダー的な存在」でもあり、その影響力は当然ながら普通ではない。
茶道の授業とは言え、彼女たちにとっては、また別の社交の場とも言えるのだ。