虎兄はすでに人を連れてやって来た。
司はこの虎兄を知っている。裏社会の人間で、二番手の地位にあり、凶暴で、手に血のついた男だ。自分の義姉と浮気していたところを真夕に見られてしまった。
虎兄が真夕を生かして帰すわけがない。
裏社会にもルールがあり、互いに干渉しないのが掟だ。司はここで揉め事を起こしたくなかった。
その時、虎兄が護衛を連れて殺到してきた。「虎兄、こいつらです!」
司は顔を伏せ、突然真夕の赤い唇にキスをした。
虎兄が来たと真夕も耳にしていたが、視界が暗くなると同時に、彼の容赦ないキスが襲いかかってきた。
彼のキスは重く、荒々しく、まるで何かの怒りをぶつけているかのようだった。彼は彼女を噛むように貪った。
真夕は小さな手で彼の胸を押し返そうとしたが、司は低い声で脅した。「死にたいのか?」
死にたくなんかない。
しかし、こんなふうになるのも真夕が嫌だった。「苦しい……痛いよ……」
彼女の整った眉間はきゅっと寄せられ、小さな顔はすっかり苦瓜のように歪んでしまっていた。彼と一緒にいる時の彼女は、まるで甘えん坊みたいだった。
司は再び唇を重ねた。今度は力を緩め、彼女を苦しませないように、優しくキスをした。
彼の胸を押していた指先はゆっくりと曲がり、彼のシャツをぎゅっと握りしめた。
彼女の従順な態度に、司は彼女を抱き上げ、自分の胸に抱き寄せながらキスを続けた。
そこには大きな石があり、ちょうど真夕のか弱い体を隠してくれていた。虎兄たち黒服の護衛たちからは、司の整った上半身と、キスの音しか見聞きできなかった。
虎兄はすぐに司を見分けた。これは浜島市の堀田グループの社長じゃないか?
虎兄は後ろの護衛を止めた。「違う。あれは堀田社長だ!」
そして虎兄はいやらしい笑みを浮かべて言った。「まさか堀田社長がこんなところで女を抱いてイチャついてるとはな」
虎兄は真夕の顔こそ見えなかったが、司の腰にしがみついている白く美しい二本の脚と、白い腕が見えた。その肌は氷のように白くて艶やかで、見ているだけで血が滾るようだった。
司が気に入る女は、やはり只者ではない。
虎兄は目をいやらしく光らせながら、彼女の顔を見たくてたまらなかった。
黒服の護衛が言った。「虎兄、あの人はきっとあっちの方向に行ったと思います。急いで追いましょう!」
「行くぞ」