真夕はその写真を見てすべてを悟った。彼女は震えるように顔を上げ、彩を睨みつけた。「この写真……あなたが虎兄に渡したんでしょ?」
彩の目に一瞬、陰りと絶望が走った。和也はどうして真夕を庇ったの?
死んだのはどうして真夕じゃなかったの?
それに、今になって写真まで見つかるなんて。彼女の表情が一変した。
司は真夕の手からその写真を受け取ると、数秒後、その鋭く美しい目をゆっくりと彩に向けた。
その視線は、冷たく、そして刺すように彼女の顔を切り裂こうとした。
彩は恐怖を感じ、とっさに否定した。「何の写真?何言ってるのかさっぱり分からないわ!真夕、和也のことで動揺してるのは分かるけど、人を陥れるようなこと言わないで!」
真夕は冷笑した。「自分の目でよく見ろよ、この写真。愚かさにもほどがあるでしょ!」
彩が写真を覗き込むと、すぐに青ざめた。そこには自分のスマホのロゴが写っていたから。
しまった、ロゴを消すのを忘れてた。
虎兄にこの写真を送ったことがバレてしまったのだ。
彩は司を見上げた。彼の瞳はまるで底なしの闇のように冷たく、鋭く、危険な光を宿していた。
彼は、今まで一度もこんな目で自分を見たことがなかった。
彩は怯え、慌てて言い訳を始めた。「司、違うの!こんなの誤解よ、私……私を信じて、ちゃんと説明するから!」
「そんなのもう聞きたくない!」真夕が鋭く遮った。怒りに燃える瞳で彩を睨みつけ、怒声を上げた。「池本彩、気が狂ったの?今回のこと、あなたが仕組んだんでしょ!犯人はあなたよ!」
そう言いながら、真夕は手を伸ばして彩を掴もうとした。
彩は慌てて司の背後に逃げ込んだ。「司、怖いの!助けて!」
真夕の手は彩に届かなかった。司がその間に立ちはだかり、彩を自分の背後にかばったからだ。
真夕は目の前の男を見つめた。「彼女をかばうつもり?彼女のせいで和也は死にかけたのよ!」
彼女の手はまだ震えていた。顔にも手にも和也の血がまだべったりと付いている。彼はいまもまだ手術中だ。
彩こそがその元凶なのに!
彩は自分を殺そうとしたのに!
そして、和也をも巻き添えにしたのに!
なのに司は、彩が何をしようと、彼女をかばい続けるつもりなのだ!
真夕の白い瞳が真っ赤に染まり、決意に満ちた目で冷たく司を見据えた。
司は静かに答えた。声は低く、抑えられていた。