真夕は呆れて何も言えなかった。
華はとても興奮している。「医術に長けたケー様って、実は男だったのよ!真夕、ケー様は私に一目惚れして、もう付き合ってるの!」
は?
真夕は顔中にハテナを浮かべた。
「もう話せないわ。近日中に池本家に戻ってきてね!」華は一方的に電話を切った。
真夕はすぐに悟った。華、絶対に詐欺に引っかかってる!
真夕はシャワールームに入ってシャワーを浴びた。出てきたとき、スマホがまた鳴った。今度は月からだった。
向こうから、月の不安げな泣き声が聞こえた。「もしもし、真夕……大変なの、助けに来てくれない?」
真夕はスマホをぎゅっと握った。「月、どうしたの?」
「今、錦の宮ホテルでバイトしてるんだけど、さっき張本(はりもと)社長って人に目をつけられて、今夜一緒に寝ろって……私、怖くてトイレに逃げ込んだの。外には彼のボディーガードが見張ってて……真夕、私怖いよ、そんなこと絶対したくないのに、他に頼れる人がいない……」
「月、落ち着いて。トイレから絶対に出ないで、今すぐ迎えに行く」
「真夕、本当にありがとう……」
真夕は電話を切ると、すぐに錦の宮ホテルへと向かった。
その後、錦の宮ホテルにて。
真夕が女子トイレに到着すると、やはり外には黒服のボディーガードが二人立っていた。
真夕は落ち着いた足取りで中に入った。中では月が涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
月の顔色は真っ青で、全身が怯えて震えている。「真夕、来てくれたのね……」
真夕は月の手を取った。「月、もう大丈夫よ。今あなたを連れて出してあげる」
「でも、外には張本社長のボディーガードが……どうやって出ればいいの?」
「変装よ」
真夕は持ってきたバッグからワンピースと帽子、サングラスを取り出して月に渡した。「これに着替えて」
月はすぐに着替えた。清楚で可憐なウェイトレスから、一気に派手で強気なギャルに変身した。
これで誰にもバレないはずだ。
「月、今なら出られるわ」
真夕は月の手を取り、トイレを出ようとした。
外のボディーガードが二人をじっと見つめた。月の手は震えていた。バレるのではと、不安が押し寄せた。
その時、真夕は彼女の手をぎゅっと握り、真っ直ぐな目で安心させた。
月は深呼吸し、真夕と一緒に歩き出した。
ボディーガードたちは特に気づいた様子もなかった