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第31話

Author: 雪吹(ふぶき)ルリ
真夕は不幸な幼少期を過ごしたが、それでも愛する勇気を失わなかった。

藍であれ、司であれ、彼女は自ら積極的に愛そうとした。

誰かを愛することは、卑屈になることでも、劣ることでもない。

ましてや、それが誰かに辱められる理由になるはずもない。

それに、彼女はもう愛していないのだから。

彼女はもう司を愛していなかった。

司は冷たい瞳で彼女の澄んだ瞳を見つめ、薄い唇を冷笑の形に歪めた。「本当に俺のことが好きじゃなくなったのか?」

「そう……んっ!」

真夕の言葉が終わる前に、男はすでに顔を近づけ、彼女の赤い唇を強引に塞いだ。

「ドンッ」と脳内で爆発音が鳴り響き、真夕の思考は真っ白になった。白黒はっきりした瞳が驚愕に見開かれ、突然のキスを信じられずにいた。

二人がキスしたことはあった。だが、最後にシャワールームでキスをしたときは、彼女が彼を誘い、縋るようにして唇を重ねたのだった。

しかし今、司がキスをしてきた。

真夕はすぐに抵抗し、手を上げて彼を押しのけようとした。「司、離して!」

しかし、彼の逞しく整った体が彼女の華奢な体を壁に押し付けた。薄くて冷たい唇が容赦なく押し付けられ、そこには強奪と征服の気配が漂っていた。

彼女が口を開いた瞬間、彼はその隙をついて歯列をこじ開け、侵入してきた。

一瞬にして、彼の特有の香りが彼女を包み込んだ。

清潔で、冷ややかで、それでいて男性的な香りだった。

彼女は今まで、司以外の誰とも親密な接触を持ったことがなかった。彼女は、白紙のような存在だった。

真夕のその未熟な体は極めて敏感で、この唇と舌の絡み合う感覚に、顔が真っ赤になった。彼の口づけの中で溶けてしまいそうな気がした。

彼の胸を押し返そうとしていた手がゆっくりと縮まり、高級なシャツの生地を指先で握りしめた。足元がふらつき、崩れ落ちそうになった。

それを察知した司は、逞しい腕を伸ばし、真夕のくびれた腰を抱き寄せた。しっかりと彼の胸の中に固定した。

司は彼女を解放し、キスを終えた。

真夕の顔は真っ赤になった。「あなた……」

司の低く嘲る声が響く。「これが『好きじゃない』ってことか?俺がキスしただけで、もうグズグズになってるくせに」

この女が、俺のキスを馬鹿
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