だが、隣の部屋の音はまだ続いており、しかもどんどん大胆になってきた。これままだと、到底眠れないのだ。
司は手を上げ、鋭い指の関節で壁を「ドンドン」と二度叩いた。
隣の音はすぐに静かになった。
司は目を閉じた。
だが、彼は眠気などまったくなかった。若く血気盛んな彼の体はこの状況ではとっくに落ち着きを失っていた。真夕はすぐ隣で、甘く柔らかな存在として彼のそばにいる。彼の脳裏には、西庭の別荘の寝室で、彼女を壁に押しつけ、無理やりその手を握ったあの夜の光景がよみがえっていた。
そのとき、隣の部屋から再び音がし始めた。
司は苛立たしげに目を開け、身を起こすと布団をめくってベッドから下りた。
しかし、その腕を、小さな手が掴んだ。
司が振り返ると、真夕が布団の中から小さな頭を出していた。さっきまで潜っていたせいで、すっぴんの顔はほんのり赤みを帯び、潤んだ瞳が彼を見つめている。白く幼いその顔は、思わずかじりたくなるほど可憐だった。
真夕は彼の袖を握り、不安げに尋ねた。「どこに行くの?」
彼が怒っているのは分かっていた。その表情は、まるで隣の人と喧嘩でもしに行きそうな雰囲気だった。
真夕は今日、彼が洞窟で人を殴った姿を初めて見た。こんなにも品格のある彼が、あんなにも激しく手を出すとは思わなかった。真夕は、彼が喧嘩するのを見たくなかった。
今日、彼の機嫌がずっと悪そうだったのは、自分のせいなのかな?自分が彼の時間を無駄にさせたのだろうか?
さっき、彼が自分を助けに来た理由を考えていた。きっと、自分がまだ名義上では彼の妻だから、彼は放っておけなかった。彼は、そういう優しい人なのだから。
ベッドの上で幼い寝顔を見せる彼女を見て、司の喉が焼けつくように熱くなった。彼はさっと袖を引き抜いた。「先に寝ろ」
そう言いながら、彼は部屋を出て行った。
司はそのまま隣の部屋のドアを叩いた。すると、中から若い男の声が聞こえた。「誰だ?今行く」
ドアが開き、男が姿を現した。
司は険しい顔で言った。「俺は隣部屋の者だ。今何時だと思う?休まないのは勝手だが、こっちにまで迷惑かけるな」
若い男はすぐに司を脇に連れ出し、タバコの箱を取り出して一本差し出した。「悪かったな兄貴、うるさくして。俺と嫁、まだ新婚でさ、ちょっと盛り上がりすぎた」
勝手に兄貴とか呼ぶな。
司はタバコを