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Home / 恋愛 / 前世の虐めに目覚めた花嫁、婚約破棄を決意 / 第268話

第268話

Author: 小春日和
「......」

初はそう言ってドアを開け、奈津美に車へ促した。

「滝川さん、緊張しないでください。この界隈の人間は、他の世界の人とはほとんど知り合いません。経済状況が似通っているからです。私が滝川さんに何か下心があると疑う必要もありません」

「下心があるとは思いませんけど、ただ単純に、どうして冬馬があなたに私の治療を頼んだのか不思議で」

「それは、滝川さんが彼に聞くべき質問でしょう」

「あなたは彼と親しいんですか?」

「まあ、友達ですね」

「彼のような人に、友達がいるんですね」

奈津美には想像もつかなかった。

冬馬のような人間と付き合うのは、どれほど恐ろしいことだろうか。

「滝川さんはまだ冬馬をよく理解していませんね。彼は確かに外面は悪いですが、深く知れば知るほど、その悪質さが想像以上だということが分かります」

「......」

初のジョークに、奈津美は苦笑いを浮かべた。

面白くない。

全く面白くない。

彼女は今、それを身をもって実感していた。

初は車を走らせていたが、途中で奈津美は異変に気づいた。「私のマンションとは違う方向に向かってる」

「滝川さん、鋭いですね」

初はわざわざ奈津美のマンションの前を通り過ぎ、3回も曲がったというのに、奈津美は違う方向に向かっていることに気づいたのだ。

「どこへ連れて行くの?」

「冬馬から連絡があり、必ず滝川さんを連れてくるようにと言われました」

初は意味深に言った。「どうやら冬馬も、ついに恋をしたようですね」

「佐々木先生、その冗談、全然面白くないわよ」

「冗談はさておき」

初は言った。「あなたを呼んだのは、真面目な話があるからです。彼があなたに気があるからではありません。冬馬が女性を好きになったところを、私は見たことがありませんから」

「まさか......彼は男が好きなの?」

奈津美がそう尋ねると、初は一瞬黙り込み、それから彼女にシーッという仕草をした。「シーッ、私は何も言ってませんよ」

奈津美は苦笑した。

前世、冬馬が綾乃に狂おしいほど惚れていたことを知らなければ、奈津美は初の言葉を信じなかっただろう。

しばらくして、初は入江家の屋敷の前に車を停めた。

奈津美は初と一緒に車から降り、冬馬がこんなところに住んでいるとは信じられなかった。

「この家...... 20
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