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Beranda / 恋愛 / 夫の元カノが帰国!妊娠隠して離婚を決意した私 / 第921話

第921話

Penulis: 夜月 アヤメ
若子の瞳には、焦りと不安が色濃く浮かんでいた。

「......早く教えて」

薬品と器具がぎっしり詰まった薬箱を前に、怖さはある―でも、状況は一刻を争う。

逃げている暇なんて、ない。

ヴィンセントは震える声で問いかけた。

「......怖いか?」

若子はこくんと小さく頷いた。

心臓が跳ねる。

緊張で全身が張り詰める。

「怖い......でもやる。だから、早く教えて」

「ヨードチンキと消毒用のコットンを取れ。コットンにヨードをたっぷり染み込ませて、傷口の周りの皮膚を拭いてくれ」

若子は慎重に、彼の指示通りに動いた。

震える指でヨードの瓶のキャップを開ける。

ツンとくる消毒液の匂いに、少し頭がクラクラする。

でも、そんな反応を押し殺して集中した。

コットンにヨードを浸し、慎重に、傷口の周囲を優しく擦る。

指先は震え続け、怖くてたまらない。少しのミスで、もっと悪化させてしまうかもしれないから。

「......っ」

ヴィンセントの低い呻きが耳に届く。

ヨードが傷に触れれば、強い痛みが走るはずだ。

若子の胸が痛む。

でも、手を止めず、丁寧に、そして確実に消毒していった。

「......これでいい?次は?」

震える声で尋ねると、ヴィンセントが答えた。

「箱の左にある滅菌注射針と、生理食塩水を取ってくれ」

若子は言われた通りに針を手に取る。

針の先端を見た瞬間、弾丸を取り出したときの記憶がよみがえり、全身が再び強張った。

大きく深呼吸をして、なんとか気持ちを落ち着ける。

「針を食塩水に浸して、しっかりと消毒してくれ」

彼の声はかすれていたけれど、的確だった。

若子は唇を噛みしめながら、消毒針を塩水にゆっくり沈める。

「......次は?」

「その針を......傷口にゆっくり挿せ。できるだけ安定させて」

心臓の鼓動がうるさいほど響く中、若子は手に針を握り、深く息を吐いてから、そっとヴィンセントの傷口へと挿していく。

顔が青ざめ、額には汗が滲む。

ヴィンセントの体が微かに震える。

「......大丈夫?」

彼女が問いかけると、ヴィンセントは歯を食いしばりながら小さく頷いた。

「......針を軽く回して、傷の中の汚れを取り除いてくれ.
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