言いながら、白石真奈美はパソコンの電源を切り、佐藤啓介を立たせて、彼の上着ポケットからスマホを取り出した。
スマホを自分のポケットに押し込むと、白石真奈美は手を振って警備員を呼び、驚愕する佐藤啓介をよそに口を開いた。
「この部外者は、今後見かける度に追い出してください。会社に入れないように!」
「もしこの人を会社で見かけたら、全員クビよ」
数人の警備員はびくびくしながら、目を細めて佐藤啓介を掴み、外へ放り出した。
今度は佐藤啓介がようやく状況を理解した。
ドア枠にしがみつき、必死に中に向かって叫んだ。パスワードを教える、借金を返す、と。
しかし、スクリーンの中で、白石真奈美は彼を一瞥もせず、佐藤啓介の指紋を使って彼のスマホのロックを解除した。
ライン、ネットバンク、次々とアプリを開き、隅々までチェックした。
見ていくうちに、彼女の目は輝きを増し、口の中で「大儲けだ!」と呟き続けた。
追い出された佐藤啓介は、無一文だった。スマホもなく、鍵もなかった。
家にもホテルにも帰れず、仕方なく、彼は街をさまよった。
歩きながら、通行人にスマホを借りて、私に何度も電話をかけ続けた。
私が飛行機を降り、機内モードを解除した時、スマホには六十件以上の不在着信があった。
画面を見た私はくすくす笑いながら、母とレストランに入り、料理を注文して食べながら、ようやく電話に出た。
昼間中電話をかけ続けていた佐藤啓介は、ひどく苛立っていた。
電話が繋がるとすぐに、彼の激しい罵声が聞こえてきた。
「恵美、死んだのか?」
「六十回以上も電話したのに、どうして一度も出ないんだ!」
全く要点を得ていない、感情をぶつけるだけの言葉だった。
私は箸でたっぷりと肉を掴み、口に運びながら尋ねた。
「どうして電話に出なきゃいけないの?」
「あなたの葬式に参列しろって通知?そんなに死に急いでるの?」
私の言葉に詰まり、電話の向こうは一瞬静まり、受話器からは荒い呼吸音だけが聞こえてきた。
しばらくして、佐藤啓介は落ち着きを取り戻したようで、口を開こうとした。
すかさず、私は電話を切り、この通行人の電話番号をブラックリストに追加した。
さあ、炎天下の中、もう一度苦労してスマホを借りるがいいわ。
クズ男へのささやかな罰。当然の報いよ!
その日、いくつかの観光地を巡り