紗希は美しいことを大切にしているから、足の一部を失うことを受け入れられるわけがない。
乃亜は冷たい顔をして、医師や看護師の後ろについて病室に入った。
全ての検査が終わり、紗希を看護スタッフに任せて安心した。
振り返り、直人に冷たい目で言った。「外に出て。話がある」
直人はベッドの横に歩み寄り、横たわる紗希を見つめた。
彼女はとても痩せていて、顔が小さく、今は弱っているように見える。まるで、すぐに消えてしまいそうな感じだ。
乃亜は冷たく言った。「彼女を守れなかったくせに、今更後悔しても意味がない。外に出て、話がある」
直人は目をそらし、乃亜に従って病室を出た。
「なぜあなたがあそこにいたの?一体何があった?」乃亜は率直に尋ねた。
紗希が今こうなってしまったことを考えると、心が痛む。
だからこそ、直人には本当に怒りを感じている。
こんな質問ですら、彼には十分優しくしているつもりだ。
「彼女と話をしたかったんだ。でも、彼女は話したくなくて逃げてしまった。その後、車にひかれたんだ」直人はその時の出来事を思い返して言った。
「あなたが仕掛けたわけではないの?」乃亜は疑いの目を向けた。
「もちろん、違う!」直人は強く否定した。「そんなことをするわけがない!どうして俺が彼女にそんなことをするんだ!」
彼は心の底から彼女と一緒に生きたかった。
「もしあなたが関わっていないなら、私が調べる。もしあなたの両親や婚約者が関わっていたら、私は容赦しない。その時は頼んでも無駄だから」乃亜は冷たく言い放った。
この2年間、会社は順調で、紗希を狙うようなライバルは考えられない。
紗希はすでに家族とは連絡を取っておらず、今の状況を知っている人は誰もいない。家族が関わることは絶対にない。
それなのに、直人が現れたその時に紗希が車にひかれた。どう考えても、これは直人に関係している。
直人はその場で立ち尽くし、乃亜の言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。
両親や舞衣......
その中で、誰が関わっているのか?
乃亜が家に帰ると、拓海はソファに座って書類を読んでいた。遠目に見ると、穏やかな時間が流れているように見える。
その瞬間、少し心が温かくなった。
足音が聞こえ、拓海は書類を置き、立ち上がって歩み寄った。
「待たなくていいって言ったよね?」乃亜は優しく