直人は一言だけ返した。「タバコを吸いに行ってくる」
胸の中の辛い気持ちは、どうしても抑えきれなかった。
乃亜は「うん」とだけ答え、直人を外へ送り出すと、大きな足取りで病床へと向かった。紗希を見て、心が痛んだ。思わず声をかけた。「紗希!」
その瞬間、涙が止まらなかった。
紗希もまた涙をこぼしながら言った。「乃亜、私はもうダメだ......」
「違う、あなたはダメじゃない!まだ立ち上がれるし、普通に歩ける。普通の生活だって送れるよ!」乃亜は必死に励まそうとした。
「でも、足が......」義足をつけたとしても、もう短いスカートやショートパンツを履けないし、生活はどうしても不便だ。
「紗希......」乃亜は彼女を強く抱きしめ、たくさんの言葉を言いたかったが、何も言えなかった。
晴嵐が目を覚ますと、家には誰もいなかった。しかし、彼は淡々と洗面を済ませ、冷蔵庫からパンと牛乳を取り出して食べた。
その後、上の階に上がり、バッグを整理した。下に降りると、リビングに拓海が座っているのを見て、驚きの表情を浮かべた。「パパ、仕事に行ってなかったの?どうして戻ってきたの?」
以前、両親が忙しい時は、よく家に一人で残されていたので、起きたときに家に誰もいなくても、仕事があるんだろうと理解していた。
「今日は保育園に行く日だから、もちろん送るよ!」拓海は晴嵐のバッグを見て、笑顔で言った。「もう準備ができているんだね、すごい!」
晴嵐は2歳の時から一人でお風呂に入り、顔を洗い、歯を磨き、服を整えることを覚えた。3歳になった今、かなり自分でできることが増えていた。
おじいさんたちは、「子供があまりにも賢いと、早く亡くなる」とよく言っていた。そのため、乃亜はこんなにしっかりしている息子を見るたびに不安を感じていた。
晴嵐は実は今日、保育園に行くつもりはなく、凌央を探しに行こうとしていた。バッグの中には、コンピュータと携帯が入っている。
しかし、すぐに冷静さを取り戻し、拓海にニコニコと微笑みかけて言った。「今日はちょっと体調が悪いんだ。パパ、先生にお休みをお願いしてくれない?」と額をさすりながら、「頭が痛いよ!」
拓海は彼が演技をしていることに気づき、クスッと笑いながら言った。「それは僕には決められないよ!ママに聞かないとね!」
子供の教育に関して、拓海は乃亜とい