鑑定研究所は若江和嘉が選んだ。私が何か細工をするのを恐れて、彼は最も権威のある法科学鑑定研究所を選んだのだ。
私は冷笑した。利口ぶりやがって。
鑑定研究所の研究員が私、白井雅絵、そして詩織の血液サンプルを採取し終えた後、私は彼らに若江和嘉の血液も一緒に採取するよう頼んだ。
若江和嘉は信じられないという顔で私を見て、「若江雨音、頭がおかしくなったのか?詩織が俺の子供であることに疑いなんてないだろう!」と怒鳴った。
私は意地悪く笑みを浮かべて言った。「せっかく来たなら、一緒にやっても大丈夫だろ?」
詩織は私が何を企んでいるのか理解できていなかったが、私には必ず目的があると知っていたので、わざと駄々をこねて若江和嘉にも親子鑑定をさせた。
今の若江和嘉にとって詩織はまるで神様のような存在。彼女の要求には逆らえず、仕方なく応じた。
鑑定研究所を出ると、白井雅絵の息子、若江格が花束を抱えてのこのこ現れた。
「姉さん!」と彼は詩織に親しげに呼びかけ、花束を渡しながら抱きつこうとした。
詩織はまるで虫でも見るような嫌悪感を露わにし、彼を乱暴に突き放した。
「触らないで!」
この少年、詩織よりも頭半分背が高いが、良い人とは見えない。
「詩織、彼はあなたの弟なのよ!」と白井雅絵が急いでなだめた。「家族は仲良くしないと」
しかし、詩織は冷めた目で白井雅絵を見て、目をひとつ翻して言った。「鑑定結果が出るまでは、勝手に親戚だなんて言わないでよね」
私は淡々と言った。「私はあなたたちが家族で仲良くするのを邪魔する気はないわ」
そして若江和嘉に向き直り、「さあ、私たち、今すぐ離婚届を出しに行きましょう」
双方の名義に特に財産もなく、子供の親権についても協議する必要がなかったため、私たちは離婚協議書すら不要で、直接役所に向かって離婚届を提出した。
白井雅絵の目は大きく見開かれ、大喜びしていた。
まさか私たちがこんなにもあっさりと離婚するとは思っていなかったのだろう。
彼女はきっと私がしがみついて離婚を拒むと思っていたに違いない。
しかし、詩織はしっかりと私のそばに寄り添い、私と彼女が親しくしているのを見て白井雅絵は明らかに悔しそうだった。
詩織が駐車場に車を取りに行くと、白井雅絵は私がひとりになった隙を狙って、嫌味たっぷりに言った。
「若江雨音、若江和嘉