かおるは全然寝付けず、ベッドに横たわりながら、その身が緊張と興奮でいっぱいだった。もうすぐ冬木を離れ、あの嫌な月宮からも離れると思うと、どうしてもワクワクしてしまう。
もう待ちきれない。
「ドンドンドン!」
その時、玄関から突然大きなノックの音が響いた。
かおるは驚いて飛び起き、外に目を向けた。部屋の中の女の子も目を覚まし、「何があったの?」と尋ねた。
かおるの胸に不安の影が一瞬よぎる。まさか、追いついてきた? こんなに早いの?
彼女はベッドを降りると、「ちょっと見てくるから、君たちはここで大人しくしていて」と言った。
女の子は心配そうに「かおる、大丈夫かな......?」と呟いた。
かおるは頷き、「大丈夫、何も起こらないよ」と落ち着かせてから、服をまとい、家を出た。
「誰?」と慎重に尋ねると、「かおる、私よ。早く出てきて!」玄関から里香の声が響いてきた。
かおるは一瞬驚き、急いでドアを開けた。「里香ちゃん、どうしてここに?」
もう家に戻っているはずじゃないの?時間を計算すれば、今頃はカエデビルについているはずなのでは?
里香は彼女の手首を掴み、焦った表情で言った。「月宮の車を見たの。彼が君を見つけた。今すぐ逃げるよ!」
その言葉に、かおるは呆然とした。「見つけたって?どうやって私を追いかけてきたの?」
自分の行動は完璧に隠していたはずなのに、こんな短期間で見つけられるなんて、あり得るのか?
里香は言った。「そんなこと考える場合じゃない。今すぐ逃げないと!」
「そうだね、わかった。ちょっと待って、荷物取ってくる」
かおるは急いで部屋に戻り、女の子に何か言ってから、リュックを持って外に駆け出した。
かおるが車に乗り込むと、里香はエンジンをかけ、車を前に走らせた。
かおるは恐る恐る後ろを一瞥し、見た瞬間、目を見開いた。「里香ちゃん、たぶん私たち逃げ切れないよ」
里香も後方の車のライトに気付くと、表情が一気に険しくなった。
どうしてこんなことに?どこで手違いがあったというの?どうして月宮がこんなに早く来れるの?
背後の車が追いかけてくる中、里香はアクセルを床まで踏み込み、前へと車を飛ばした。
かおるは里香の表情を見て、不安そうに言った。「里香、もう見つかってるし、たぶん逃げられないよ......もう諦めたほうがいいんじゃない?