佳子はもともとドアのそばに立っていたが、真司の高く引き締まった体が近づいてきた瞬間、彼の影が彼女の前に覆いかぶさり、反射的に後ろへ下がってしまった。しかし、そのままでは壁にぶつかりそうになり、真司はすぐに彼女の細い腰を腕で抱き寄せ、軽く引き寄せると、彼女をそのまま自分の胸に収めた。二人の身体が一気に近づいた。佳子の長い睫毛が小さく震えた。「藤村社長……」真司は彼女を見つめながら言った。「何を慌ててる?俺のラインが欲しいのか?」佳子は詩乃に同意したのが間違いだったと後悔した。「藤村社長、無理なら、もらわなくても……」言い終わる前に、真司が力を込め、彼女の体は彼の厚い胸板にぶつかった。その清潔で凛とした男性の香りが一気に佳子に押し寄せてきた。佳子は思わず両手を彼の胸に当てた。「藤村社長……」真司は視線を落とし、彼女の手を見た。「どこを触ってる?」佳子「……」触ってなんかいないはずなのに。だが、その手のひらの下には、固く盛り上がった胸筋がある。最近また鍛えているのだろうか、力強い筋肉がはっきりと感じられる。佳子は慌てて手を引っ込めた。「ご、ごめん。藤村社長」真司は困惑する彼女の様子を見て眉を上げた。「俺のライン、欲しいのか?」「藤村社長、違う、私じゃ……」欲しいのは自分ではなく、詩乃なのだ。だが、佳子が言葉を続ける前に、真司は口を開いた。「いいよ」ラインを教えてくれるの?てっきり断られると思っていた。第一に彼の性格は冷淡だし、第二に今は理恵がいるはずなのに、なぜ他の女の子にラインを渡すのだろう。「俺のラインはずっと変わっていない。電話番号そのままだ」「わかった」佳子は頷いた。「藤村社長、もう放してもらえる?」しかし、真司は腕を緩めず、そのまま抱きしめている。その時、奈苗の声が響いた。「佳子姉さん?佳子姉さん?」奈苗が佳子を探している。佳子は焦って言った。「藤村社長、何をしてるの?奈苗が探してるの。見られたらまずいでしょ。離して!」佳子は手で彼を押しやった。もともと密着している身体が、彼女の抵抗で薄い布越しに擦れ合い、火花のように熱が走り出した。真司の喉仏が大きく上下した。「……動くな」佳子ははっとし、すぐに彼の体の変化に気づいた。彼が……彼女は咄
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