Início / 恋愛 / 御神先生の秘蔵っ子 / Capítulo 1 - Capítulo 10

Todos os capítulos de 御神先生の秘蔵っ子: Capítulo 1 - Capítulo 10

37 Capítulos

1話 プロローグ

 朝ご飯を食べ終え学校に行く用意をしていたら、テレビから流れるニュースの音に立ち止まる。『Takashi Mikami──世界を圧巻したあの御神の凱旋帰国決定!』「御神さん、一言お願いします!」「久しぶりの緊急帰国になりますが、暫く日本で活動されるのですか?」「今回、御神堂での凱旋公演とのことですが、お父様の御神 幸造氏はいらっしゃる予定ですか?」 空港ロビーに集まる報道陣のフラッシュの中、明るめの茶色い長髪が光りを浴び金色に輝く中、サングラスを外すことなく無言で人混みを掻き分けるように足早に去っていたが、記者の最後の質問に、サングラス越しにも分かるぐらい一瞬怪訝な顔を浮かべた。 だが、言葉を発することなく出口で待つ迎えの車に、颯爽と乗り込み消えて行く。 御神 貴志──御神グループ総帥、御神 幸造氏の嫡男として育ち、幼少期よりジュニアピアノコンクール、バイオリンコンクールを国内外で総誉にした後、15歳で単身渡米し、日本人初の世界最高峰音楽院に特別入学を認められた神童だった。 その後、活動の拠点をヨーロッパに移し、現在は、日本が世界に誇る指揮者として活躍中であった。 ◇「御神? 貴志? が日本に帰って来る? うそおお!! え? いついつ?」──ガシャン「痛ったァ~」 山積みになったCDケースの雪崩が落ちてきて、その中に埋まる少女がいた。「御神先生。私は貴方の為に今日も頑張ります!」 大事そうにCDケースを抱きしめ、テーブルに置く。「行って来ます」 小さな仏壇の写真に手を合わせ、花音は急いで玄関を出た。 彼女の名は桜井花音。ごく普通の高校に通う、ごく普通の女の子が、この後、彼女の運命を180度変える出会いに遭遇するとは本人は勿論のこと、誰一人気づいていなかった。『御神音楽学校─Мアカデミー学園春期特別奨学生募集中』 電車の中吊り広告を花音は凝視する。 子供の頃からの憧れの人。 たまたま商店街の福引きで当たったクラッシックコンサートのチケット。 生まれて初めて祖母に何度もお願いして、やっと連れて行ってもらったコンサートで衝撃を受けた。 後頭部を誰かに殴られたような強い衝撃。 それ以来、彼の音に虜になった私は、小遣いを貯めてはCDを購入したり、彼のことが載っている雑誌を購入したりと、私の全てをかけた推しであった。 周りが騒
Ler mais

2話 神降臨

夢にまで見た日がついに目の前に建っている。門に掛けられている看板に頬ずりしながら撫でる。「御神様~~あ~~ん素敵!」 周りの人に変な目で見られようが関係ない。そんなことはもう慣れっこである。『御神音楽学校─Mアカデミー学園』「夢かも~~~あ! 急がないと!」 ──『御神音楽学校』三年間で普通高等学校同等の卒業資格が与えられる。留年制度はなく単位不備の者は即退学となる。「声楽コース、弦楽器または管楽器コース」の二種のうち選択受験。 音楽学校を卒業した者で成績優秀者はMアカデミーへの進学を許可される。 アカデミーの生徒は、プロデビューを目標とする者を対象に、御神財団より海外留学の斡旋や、資金などの援助を受けることが出来る。 ──『弦楽器コース試験会場』「桜井花音です。お願いします」「42番ね。この札を胸につけて控え室で待つように」「不吉な番号ね……にしても。今日で二日目よねえ。何人応募してるんだろう……5人一緒に弾くのね……」 次々と受験者が呼ばれていく。思っていたより進むのが随分と早い。5人一緒でも短めしか弾かないってことかしら? もう直ぐ順番だわ。 緊張の為かハンカチで何度も手汗を拭く。 あと8人? え? あれ? 順番抜かされた? あ、同じ曲を選択している人でグループを組まされているからね。 同時演奏ってことは、一緒に弾く人と合わせる感じが良いのかしら? ──ザワザワ「え?」「え? 何で?」「嘘? 本物?」「何で日本に?」「え? 御神 貴志?」 私は、思わず声がする方向に振り向く。 嘘!? 御神様!! え!? えええッ? 本物?! 歩いている! 動いている! 本物だ! 私、息してる? 生きてる? サングラスをしていても、何度も夢にまで見た御姿を、私が見間違えることはない。 紛れもなく「御神 貴志」本人である。 彼の身長、体重、足のサイズに至るまで(公表プロフィールではあるが)知り尽くしている。間違いなく彼である。 周りのザワつきに一切気にかけることはなく、サングラスをしたまま颯爽と歩き去って行かれた神は、無言で「試験会場」へ入って行った。 え? 嘘? 御神様の前で弾けるの?? 御神様が聴いてくれるの?! 今日で死んでも良いです! 冥土の土産に宝物にします! ◇「珍しいわね。貴方がわ
Ler mais

3話 8分間のドラマ

──神が大きく溜息を吐いた後、御神様が私の顔を見て笑った。 神が笑った姿を生で見れた! ヤバイ倒れそうです!「天野。ピアノ科初等部に一人追加。譜読み中心に基礎を一から教えてやってくれ」「え? バイオリン科でなくてですか? 御神先生?」「そっちは俺がやる」 審査委員席に座っていた天野を含め、そこにいた全員が驚きの表情を隠せなかった。 世界中を飛び回っている超売れっ子指揮者が、一介の音楽学校の生徒を教える? しかもド素人を。 確かに先程の演奏には驚かされたが、弓使いは無茶苦茶。姿勢も酷い。逆によくアレでパガニーニを再現出来たこと自体が不思議なぐらいだ。 有り得ないだろ。そんなの。 皆が半信半疑で聞いていた。「え? 御神様が? どう言う意味?」「あーーこれか申し込み書。お前これ記入しろ」「え? え?? 合格ですか? 私??」「1ヶ月以内に楽譜通り弾けるようにしろ。話しはそれからだ一ヶ月して無理なら即刻退学だ。その間の学費や寮費は俺が払う」「え? 一ヶ月?」「お前ここの保護者の欄、未記入だが親は?」 御神様が私の応募用紙を見ながら、少し怪訝な顔をした。 父は産まれた時から居なかった。母も三歳で亡くなり、それからは祖母と暮らしていたが、その祖母も昨年亡くなったので保護者と言える者はもう居なかった。「両親は亡くなっていて、育ての親の祖母も昨年他界しました。それだと駄目でしょうか?」「………」 先程までのざわついた部屋が静かになった。「え?」 御神様が、自分の胸ポケットから万年筆を出され、おもむろに保護者の欄にサラサラと書き始めた。 保護者名を消して、保証人と書き換え「御神 貴志」と何とご自身の名前を自ら書いたのだ。「由紀、これで問題ないだろ? あとのことは任せる。必要な物は全て揃えてやってくれ」「え? はぁ……仕方ないわね。桜井 花音さん? 学長の御神 由紀です。後で学長室にいらっしゃい。そこで入学手続きをしましょう」「あ、宜しくお願いします?」 酔狂もいいところだわ…… また今までの子たちみたいに潰れてしまわなければいいのだけれど…… 由紀は、弟の顔を不安そうな目で見た。「あの? ツィゴネルって??」 さっき確か言ったような?「あん? サラサーテのツィゴネルワイゼン知らないのか?」「いえ。それは……分かります
Ler mais

4話 天国への階段

──静まり返る部屋の中、何事もなかったかのように御神様が言い放つ。「高科、ツィゴネルワイゼンで春コンに一人追加だ。一ヶ月でこの通りに完成させろ。出来なければ退学だ」「え? 彼女を? いきなり?  しかも最高難易度だよ?」 高科は驚いた顔で、彼女と御神の顔を交互で見る。「春コン?」 何ですか? それ?  一ヶ月で先程の神と同じ演奏? いや絶対無理でしょう? ド素人凡人ですよ?「高科こいつ譜読み出来ない。持ち方から姿勢、ボーイング全ての基礎を二週間で叩き込め。楽譜通り正確に仕上げた後に、今のを再現させろ」「は?」「え?」 部屋の皆が静まり返った。「毎日レッスン風景を動画で俺に送ること。あとでカリキュラムを高科に送る。それまで貸しておいてやるよ」「え? えええ?」 ──トントントン「御神先生、お時間がもう。早く!」 少し若い気の良い感じの男性が、急ぎながら部屋に入って来た。「待たせとけよ。あ、俺の名刺。それと明後日の席一枚」「無理ですよ完売ですし。無茶言わないで下さいって」 男は泣きそうな顔をしながら一生懸命、小さくなって謝っている。「あけろ。あ、財布貸して」「へ? え?」 突然、御神様はその男性の鞄を開け、中から財布を取り出した。「とりあえずはこれで。足りなければ由紀に請求しろ。他は高科に何でも相談するといい」 え? ええええ? 足りなければってそれ…… 三十枚ぐらい? が束になった、一万円札の束を渡された。「え? こんなに? 頂けません」「誰がタダでやると言った? 1ヶ月でモノにならなければ全額回収する」「ぇ?」「先生。もう本当にお時間が、リハ始まってしまいますって!」 名刺の裏にサラサラと数字を書いて手渡された。「連絡先だ。登録したら必ず処分しとけ。あとは高科の言う通りにしろ。高科あとは頼んだぞ? 後でメニュー送るから」「え? は? ええええええ?」 あまりもの突然の内容に拒否することすら忘れていた黒髪長身の男は、口をポカンと開けたままだった。「帰国するまで高科教室に入れる。レッスン室は俺の部屋使うように。別メニュー組むから枠だけ確保してくれ」 え? 俺が面倒みるの? 開いた口がふさがらないとはこのことだろう。「あ! あの、御神様。お願いがあります!!」「あ? まだ何かあるのか?」 眉間に
Ler mais

5話 鬼が増えた

──桜並木を潜り抜け、緩やかな坂を登ると見えてくる緑に囲まれた庭園の奥から覗く白い洋館。今日もそこから漏れ聴こえてくる心地良い音の調べ。「おはようございます! 御神先生!」「御神音楽学校 Mアカデミー学園」の看板の前で、頬ずりをし深く頭を下げた。 ここの門を潜ったのは今日で二回目。 たまたま朝のニュースで御神様の帰国を知り、後ろ髪を引かれる思いで通学の為に乗った電車でたまたま見つけた広告。 あの日以来、私の人生は全く違う色になった。 学長の由紀先生や、高科先生の反対を押し切り私は通っていた高校を退学した。 これで逃げる場所は無くなった。 憧れるだけの存在だった神に、奏でる許可を貰ったのだ。 他に何が必要だと言うのだ。 大好きな音楽をこれから目一杯楽しめることに私は嬉しくて、逸る気持ちを抑えられず走っていた。 ◇『バイオリン科ー高科教室1』「おはよう御座います! 今日からお世話になる桜井 花音です。よろしくお願いします! うわぁ。綺麗!」 大きな部屋に美しい漆黒のピアノが鎮座し、黄金色に輝くフレームに寸分の狂いなく収まる美しい木の匂い。ライトを浴びて煌めいていた。「……」「誰あの子?」「編入生?」 教室の中がざわつく。 ──ガチャ「おはよう。って! 桜井! 違う。こっちじゃない。第二で待ってろって昨日言ったろ?」「え? 第二教室?」「誰? 第二って個人レッスンよねえ?」「高科先生の個人レッスンを?」「あの子何者?」 再びざわつく。 高科はこの状況になることを恐れ、学長と相談し敢えて第二に来るように言っていたのだ。 あの御神が自ら指南すると知れたら、きっと彼女は学園には居られなくなる。 高科は頭を抱えた。 仕方ない。 預かってしまった以上は…… 昨夜遅くに届いたあいつのメール内容を見て驚愕した。 本気で一から、あの御神 貴志が育てようとしている少女を、自分の手で潰すわけにはいかない。 この日を境に、高科 和樹の人生も変わることになる。「あぁ、すまない何せ身内でなぁ。色々と周りの目もあってな? その辺は多めに見てくれ。姪っ子の桜井 花音だ。皆仲良くしてやってくれ」 え? 姪っ子? いつから?? 私は思わず先生の顔を見た。 高科先生は、ほんの少しだけ俯き加減で苦笑いをした。「桜井、隣の教室
Ler mais

6話 コンサート

 ──呆れた高科先生が、学長に電話しはじめた。「高科です。学長すいません。今日の貴志のコンサートのことなんですが、桜井がですねぇ~~~。分かりました。伝えておきます。有り難う御座います」「授業終わったら学長室に寄れってさ。良かったね?」「何から何までお世話お掛けして、すいません」「あ、良いってことよ。身体で返してもらうから」「ぇ?」 え? どう言う意味ですか? 先生!?「ああ、違う違う。プロになって有名になってくれたらMアカデミーの生徒増えるしね。あと、タダで公演に呼べるし。こっちもメリットあるから」「ぇ?」「当然でしょう? いくら金掛けると思うんだ君に。その一握りを手にするチャンスが君の目の前にあることを忘れるな。気を抜けば直ぐに他の者にそれは奪われる。そういう世界に君は足を踏み入れたんだ。勘違いするなよ? ここは生ぬるいお友達ごっこをする場所じゃない」「……はい」 気を抜けば一瞬で足元をすくわれる。音楽とは音を楽しむものであって、本来は人を蹴落としてでも、とか競争したりするものではない。 でも、そんなのは単なる綺麗ごとに過ぎない。 各国でコンクールは開催されているし、入賞すれば有名になれる門戸が開かれる。 入学試験ですら同じだ。優秀な者が合格する。 常に比較と競争の下に成り立っている。 自己満足で夢を実現させれる程、甘い世界ではない。 そんな世界でずっと頂点に君臨し続けている雲の上の存在。御神 貴志に教えて貰えるチャンスを手に入れた。 どれだけそれが貴重な経験か。 世界中の音楽を目指す者が羨望する環境。 気を抜いたり、喜んで浮かれている場合ではないわ…… 私は改めて自分がどれだけ今、恵まれているかを痛感した。 御神 貴志の名前で完売した公演に入れ、特待生で学園に入学でき、私の為に特別メニューをわざわざ作り、学内最高の先生が個別レッスンをしてくれる。 浮かれていた自分に反省した。 先生が言った、私にどれだけのお金を掛けているか? その言葉が全てだ。 先が見えないド素人に、最高ブレインが集まる意味を私は考えていなかった。 ◇「お、鬼が三人に増えた……天野先生怖い。一番優しそうに見えたけど、一番怖いかも」 花音はフラフラになりながら、初等部の渡り廊下を歩いていた。 初等部とは言え、プロを目指す者が多く受験
Ler mais

7話 威風堂々

──イギリス人作曲家エドワード・エルガーの「威風堂々」その中の『希望と栄光の国』は「イギリスの第二の国家」と言われる程、本国イギリスでは長年愛され続け、歌詞も付けられている。 イギリス国内以外でも一度は耳にしたことがある有名フレーズだ。 そんな世界に愛される曲が「天才 御神の手」によってどんな風に味付けされるか、皆が固唾を飲んで瞬間を心待ちにしていた。 ◇ 先生が出てきた瞬間、ホールの空気が一瞬にして変わる。 全観客が「御神音楽」の世界に引きずり込まれ、行進のファンファーレと共に私達を連れて行った。 ──圧巻 その二文字しか出てこなかった。「ブラボー」「ブラボー!」「パチパチパチ…」 割れんばかりの拍手と、観客総立ちのスタンディングオベーション。 王道の演目の中に、鮮烈な威厳と威圧感。力強さと気品。 エルガーの最大限が引き出されていた。 鳴り止まない拍手の中、再度、御神 貴志が登場し、会場のボルテージは最高潮となる。 観客の拍手に応え、優雅にお辞儀をし指揮台に再度登壇した。 エルガーのもう一つの名曲。「愛の挨拶」がはじまった。「まさか、これ持ってくるとはね。あの貴志が」 小さな声でポツリと高科先生が呟いた。 エルガーが恋人にプロポーズする際に贈ったと言われる名曲。「ぇ? ピチカート?」 第一バイオリン以下、弦楽器全員が弓を置き、指先だけで旋律を優しく奏で始めた。 フルオーケストラでのピチカート。音程が一切狂うことなく完璧なユニゾン。 甘く耳元で囁くように優しく包まれるような空気に、自然と涙が溢れる。「おいおい二千人の観客の前で堂々と愛の告白かよ。やってくれたな」「え?」 私はその言葉の意味が分からず、学長の顔を思わず見た。 由紀様は、微笑むだけで特に何も言わなかった。「これでまた日本で行動し難くなるね」 アンコールの「愛の挨拶」が終わった後、神は優雅に手を広げたかと思うと、胸の前にそっと手を置き、腰を落とし本来なら女性が行うカーテシーに似た挨拶を、ゆっくり優雅に行い、にっこり微笑んだ。 嘘! 御神 貴志が 舞台上で笑った? 初めて見たかも! 公演後の挨拶は毎回見るけれど、こんなにはっきり優しく微笑んだ姿って!「おいおい……あいつ分かってるのかよ。自分が何したか。明日の新聞のトップは決まりだな」「行
Ler mais

8話 嫉妬

──その時だった。「由紀様もご一緒に。高科先生でいらっしゃいますよねえ? どうぞご一緒に」 関係者の一人が、学長と高科先生に声を掛け、半ば強引に連れ去った。 集合写真の撮影だ。 真ん中に御神姉弟が座り、花束を抱えた世界の御神がとても凛として見えた。 その横に、彼のフィルメンバーが数名並ぶ。第一バイオリンを担当した綺麗な女性の姿に、何となくモヤモヤした気持ちになる。 その煌びやかで晴れやかな皆の姿に、私は思わず視線を伏せていた。 御神 由紀。御神 貴志の姉だから有名になったのではない。寧ろ御神 貴志より先にプロとして活躍していた。高科 和樹、現在は音楽学校の先生をしているが、先生同様、海外の大きなフィルで第一線として活躍経験ある有名バイオリニストの一人だ。 そんな人達と一緒のわけがない。 頭では分かっていたつもりだった。 心の何処かで期待していた? 御神先生の弟子として? 淡い期待をしていた。 呼ばれるかもと…… 帝王に視線を移す。 ──とても美しい笑顔は、私ではないところを見ていた。 愚かな自分の足元を見る。上品で素敵なワンピースには不釣り合いな黒い通学用革靴。 それが現実だった。 溢れてくる涙を拭い、会場の出口付近に移動した。 居場所を失くし、言い表せないこの気持ちに、会場を出ようとしたその時だった。『十分後、裏口駐車場出口に来い』 え? どういう意味? これって? 画面の送信者の名前を再確認する。「神様」 高科先生に言われ本名での登録は避けた。が、これ以外の名前は思いつかなかった。 神からの連絡。まさにそれしかないからだ。 私は、急いで走って会場を出る。フロントに行き場所を確認し「指定場所」へ向かった。 ◇ 低いエンジン音と共に真っ白なオープンカーが目の前に突然停車したかと思うと、サングラスをした帝王がいきなり放った。「乗れ」「え?」「早くしろよ」「あ、はい……」「シートベルト」「あ! すいません……え? 何方へ??」 ええええ? 祝賀会は? 主役ですよねえ?   って今私、神の車に乗ってる? しかも助手席に?  二つしか席ないですけども、この車。「あ、あの? せんせい? 祝賀会は?」「由紀に任せてきた」「ええ?? で? 何方へ?」「腹減った。飯食いに行く」「は?」「来年、
Ler mais

9話 デート?

 ──トントン「お待たせ。ごゆっくり~」 御神 貴志が、ポテトサラダ食べた! 嘘だ…… 神が空気以外を口にしている。「あ?」「あ、空気以外をお口にされるのですね。神が」「はあ? お前阿呆か?」「すいません……」 ヤバイ、絶対危ない子だと思われた。「今日、昼飯食いそびれたんだって。それどころか朝から何も食ってなかったし。三楽章の時、腹減ってキレそうになったわ」 やめてください。神がそのような俗世界のようなことを言わないでください。 神は食事をされるのですね。驚きました。「それ、聞きたくなかったです……」「お前、神格化しすぎだろ」「神ですから!!」「怖いから……いいから食え」 無理です。神の御前で、愚民が食事をすることだなんて。出来るわけが御座いません。「あ? 何?」「動いている……本物だと思うと。お腹いっぱいです。この世に思い残すことはもう御座いません」「……怖い」「あ、ご心配なく。健全なストーカーですので、害は一切与えませんので」「あのさぁ俺を崇拝するのは良いけれど、自分見失うなよ。俺のコピーじゃない。お前の音を見出すんだ。それが出来ないなら一ヶ月後に切るからな」「……はい」「御神 貴志を超えて来い」 先程までの緩やかな雰囲気が一瞬にして消え去った。 先生のリラックスした顔が一変する。 鋭く突き刺すような目で私を直視して言ったその言葉の重さに、私は受け止めることができる自信がなかった。 思わず、その目線から逃げるように俯いてしまう。「やる気がないなら、この場で去れ」 低く冷たい声で放った神の顔に笑顔は一切なく、氷のような冷たい表情だった。 高科先生に言われた言葉がこだまする。 ──気を抜けば他の者に奪われる。そういう世界に足を踏み入れた。 何年も夢に見た世界へ、やっと触れるチャンスをくれた人が目の前に居る。 逃げることなんかできるわけがない!「いえ。世界を取りに行きます!」 何故だか、自然と言葉にしていた。 先生の顔を見ていたら、出来るような気がしたからだ。「出世払いにしといてやるよ。有名になったら食わせてくれ俺を」 そう言って笑った先生に、私は胸張って言った。「任せてください! 養ってみせますから!」「食え」「はい……」 神が、唐揚げ食べた! 写真撮ったら怒るかなあ? 黙って
Ler mais

10話 洗礼

──少しまだ肌寒さを感じる朝焼けの中、布団からモゾモゾと起きる少女がいた。 先生が日本を経って今日で4日目。この生活に何とか慣れる為にも頑張らないと! 先生の残したスケジュールを守る為、一番目のストレッチを何とか終え、ランニングに出る為に靴を履く。 ◇「はぁ、はぁ。ま、まだ20分しか経ってないの? し、死ねる」「な、なんとか、二番目までが、お、おわ、ったぁ。こ、これって先生小学生の時にこなしてたって。やっぱり化物だわ。はぁ、はぁあぁ……」 ◇「お、おはよ、う。ございまぁあずぅ……」「遅いねぇ桜井、ギリギリだよ? はい。始めるよ?」「お、鬼だ……」 だ、駄目だ。は、吐きそう。朝食べたものが。や、やヴァいぃ。「ぜ、ぜんぜい、ちょ、ちょっと。うぅっぇ」「はあ?」 死ねる……朝食べるのやめようかなぁ。でも絶対守れって書かれてたし……… 手洗い場の水で濯ぎながら、胸元のペンダントを握り締めた。 先生に貰ったピアスをお守りにと鍵つぎのロケットペンダントに収納したのだ。挫けそうになった時、自分を奮い立たせる為に。 髪を結び、顔を洗う。 鏡に映る自分の情けない顔に、頬を両手で叩く。「こんなところで立ち止まっている場合じゃない!」 ──ガチャリ「すいません。お待たせしました!」「8小節目から」「はい」「あーーストップ。ダメダメ。まだ前のめりになってる。頭からやり直し」「はい!」 5分途中休憩挟んで2時間。進んだのはたったの二段だけ……「桜井さぁ、耳で覚えようとしたら駄目だよ。作者が愛を込めて書いた作品の全てを受け止めて我々音楽家は形にしないと。休符ですら大事な音の一部だ。全てが作者が描いたメッセージなんだから、それを先ず正しく表現出来てこそ次のステップだよ?」「はい……」 おっしゃる通りです。まともに楽譜通り表現できない者が、先生のモノマネなんて出来るわけがない。 そんなの作品への冒涜だわ。「午前の貴志に送る?」「い、いえ。最後の授業終わってからのでお願いします」 こんなのを先生に送れるはずがない。「では15時にまたね」「はい! 有難うございました!」 ◇「桜井さん。起きなさい!」「は、はい先生! ぁ、……すいません……」 ヤバイ…… この学校の高等部は、音楽だけでなく一般科目もある。当然ながら一般科目の単
Ler mais
ANTERIOR
1234
ESCANEIE O CÓDIGO PARA LER NO APP
DMCA.com Protection Status