LOGIN桜井花音、ごく普通の何処にでもいる女子高生。だが彼女には崇拝する推しがいた。5歳の時に出会ったクラッシック会の貴公子に一目惚れしてしまい、それ以来彼女の推しは彼一人。 ある日偶然にも、推しのいる音楽学校の入学試験を受ける機会を得る。 そんな彼女を中心に、音楽学校を舞台にした先生と生徒の禁断の愛。 互いの想いが溢れていく時、師弟の関係が崩れていく。 彼の音だけを純粋に愛していたはずなのに、いつの間にか、「彼の音」ではなく、彼を愛してしまった時「音楽」を離れる決意を── あの日誓った「世界を二人で取りに行く!」約束に。 彼が彼女に向けた最後のメッセージとは。 再びクラッシック界至宝の天才と花音の挑戦が始まる。
View More──追試になんとかギリギリ合格出来たことで、完全に気が抜けてしまってたわ…… 次は高科先生の授業だ~~楽しみ!「失礼します~~桜井入ります」「天野先生もいるう! って? どうされたんですか? 何かお疲れのようで?」 天野先生にも会えたことは嬉しかったのだが、何だか凄く疲れた様子で、何かあったんだろうか? 心配になり近寄った。「君の鬼に言って下さい。御神先生、頭おかしいわ。やっぱり」「ぇ?」「朝っぱらからハノン1時間のあとソナチネだよ? なんで今更基礎教本を」 天野先生もだったんですね。 うん。私は悪くない。関係ない。 そして私を睨まないでください……「天野先生も一緒に練習見てくれるんですか?」 久々に二人に練習見て貰えるなんて!「違います! 一緒に練習するんです! これから!」「ぇ?」 ──ガチャッ「ごめんごめん遅くなって前のが伸びて」「よろしくお願いします。高科先生」「何言ってるの? 一緒にこれから練習だけど?」「え? あの、つかのことを伺いますが私の実技の授業では?」「黙れ」「黙らっしゃい!」「……あの、それで」「あ?」「何?」 こ、怖い。私悪くないですよねえ?「これで私、追試になるとかはないですよねえ?」「アンタの実技教科担当は悪魔先生です!」 アンタって……天野先生。 しかも悪魔先生って酷すぎる……「で、どっちからやれって?」「ホルストでお願いします」「ジュピター?」「はい」「じゃぁ始めるよ」「はい、あ! 待って! 録音させて下さい!」「さ、桜井? もしかして?」「先生が送って来いって」「……最悪」「ピアノ無しの送って下さい」「いつでもどうぞ」 桜井? こいつ腕あげた? こんなにパッセージ的確に揃えれたか? おいおい高科先生。桜井に音持って行かれてるじゃん。基礎サボってたな。 高科先生とこうしてバイオリンを一緒に弾ける日が来るだなんて。思っても見なかった! 楽しいぃいいいいい! 何これ、こんなに楽しいなんて。 ここは確かもっと豊かに先生が奏でていたような。 そして次は、そうそう高音部を伸び伸びと。 静かな眠りから壮大な宇宙へ。「ありがとうございました!」 楽しかったぁああ。もっとやりたい!! あれ? 高科先生? 無言で高科先生が部屋を出て行った。 今日は
東の空が紺紫から段々と薄紅色に染まっていき、辺り一帯の空気がツンと頬を突き刺すような寒さの中、鳥たちの動きも何だか遅く感じた。 季節の流れは早いもので、一年で一番忙しいとされる師走を迎えていた。 そんな中、一際賑やかな集団が一つあった。 朝のランニングに行こうと思って寮を出たら、門の外が騒がしかったのでよく見てみたら、見慣れた顔がチラホラと。「何ですか? 高科先生まで。それに白井さんや、皆さんまで?」「君の鬼に聞いてくれよ。さっさと行くよ。俺この後、授業あるんだから」 高科先生が私を睨む。そして幾分皆さんも、何となく私に言いたげな雰囲気である。「ぇ? 何かしました?」 昨夜、奴から届いたメール内容。『オケメン全員、花音と同じメニューこなすこと。天野以外教師含む。1年通せる自信ある奴のみ免除。日本公演分全曲を、全員3月中に入れること。帰国日決まったら連絡する』『追伸─花音に食われるなよ』「あの野郎…⋯」「ぇ??」 「もしかして、皆さん同じメニューをこれから毎日?」「これ朝、何分?」 高科先生が私の顔を睨みながら言う。 いや、私のせいじゃないですからね? 先生の指示ですよねえ? 私、悪くないですからね?「45分か5キロです」「……あのクソが」 高科せんせ?「行くぞ」 ◇「ぜぇ。はぁ。ぜぇ」「ゲホェッ。ゴホッ」「ハァハァハァッ、ハァ」「あ、あし、足ツタ、つったあ」 えっと……皆さん大丈夫ですか?「高科先生? お水持って来ます?」「お、お前平気なのか?」「あ、帰ってきて直ぐは流石に三日ぐらいはしんどかったですよ? あ、夕方は何時集合にします? 夕方軽いですよ? 30分か4キロでいいから」「………」「あ! 早く行かないと朝ご飯の時間! いっぱいになっちゃう! 8時にパッセージ1時間一緒にしましょうね? では皆さんお先に~~」 45分全力で走った直ぐ後、元気に走り去って行った少女の背が、既に小さくなっている姿に高科は驚愕した。「……悪魔の子は悪魔に育つのか?」 膝がプルプルし、未だ息が上がっている自分の姿に、学園一厳しく、そしてイケメンと言われた男は、敗北感が否めなかった。 ◇『誰にも見せるなよ。ホルストのレッスン送ってこい毎日。指示出すから。ものまねじゃなく、お前の音を待っている』 昨夜届いた宝物を
──目移りしそうなぐらい、お洒落な服が視界を占領していた。まるで私は、何処かのお姫様になったような気分になる。 そんな私に先生は笑いながらも、ほんの少しだけ時折呆れた顔を見せる。「どっちが良いですか?」「欲しいなら両方買えばいいだろ」「えぇえ〜〜勿体ないですし」「良いよ身体で払ってくれたら」「ぇ?」「阿呆そっちじゃない。ちゃんと4月までに間に合わせろよ?」「……ですよね」「あ、板に乗せられない状態と判断した場合は即刻切るから、覚えておくように」「ぇ?」 え?? 聞いていませんが? オーデション受かってもクビになるってことですか?「こっちも慈善事業じゃないんで」「う、嘘ですよねぇ?」「俺、今まで嘘ついたことないが?」「ぇ? まさかとは思いますが、もし駄目だったら先生ともお別れ?」「そういうことになるな。ハハハッ頑張りたまえ」 うそおおおぉおお! そんなあああ!! やっぱり悪魔だ…… 音楽に関して先生は一切絶対妥協しない。 一見、冗談で言っているように見えるが、先生が「音楽」で情けを掛けることは絶対にないことは分かっていた。 ◇ み、御、神 た、貴志に荷物持ちをさせている私って…… 結局あれから他にも何着か買って頂き、その荷物を全て持ってくれる神。「せ、せんせい。これ見たい……」 沢山の化粧品が並んでいる店が飛び込んで来て、思わず言葉にしていた。「如何ですか? 良ければ試してみられますか?」 ぇ? 先生の顔を見る。 何も言わないけれど、その顔は肯定と取って良いと。 最近は何となくわかるようになった。 先生は「駄目」な時だけは言葉でちゃんと「駄目」と拒否するが、それ以外は本意ではなくても結局は許してくれる。 はじめて見る大人の世界に入り込んだような感覚。 キラキラ輝く鏡の中に映る自分の姿が、魔法の粉が降り注ぐことによって、全く違う私が出来上がる。「如何ですか?」 魔法を掛けてくれたお姉さんがにっこり微笑む。「あ、有り難う御座います……」 パウダールームを後にして、サロンで待っていた先生のもとにゆっくり歩み寄る。「先生? どうですか?」 頭の先からゆっくり視線が下りて行く。「如何ですか? 少し大人な感じに仕上げてみました」 店員さんが先生に微笑むのを見て、私は少しだけ恥ずかしくなる。
──これ制服で行かないほうがいいわよねえ? 寮に急いで戻った私は、数少ない外出着の中から一番マシなのを手に取り、着替える。 うん。冬服買おう。 ヤバッ! 時間! 急いで靴に履き替え、指定場所に向かう。 こんな昼間に、しかも今日は平日。 皆はまだ授業を受けているのに。 オーデションを受ける人は、今日は公休日となっていた。 午後からオリエンテーションがある予定が…… 先生の説明が3分で終わってしまったからだ。 高科先生がちょっと気の毒にも…… 先生、早っ!「お邪魔します?」「おめでとう」 助手席に座った途端。 え? ちょ、せ、せん、せい。 それは、いきなりの出来事だった。 こ、こんなところで…… もし誰かに見られたら。 ん─ 塞がれた唇に割って入るように奥まで先生が激しくなる。 頭の中が真っ白になりかけた時、優しく耳元で囁いた。「もう逃げるなよ」「……はい」 いきなりに驚いた私は俯きながら小さな声で答えた。 何も無かったような顔をして、顔色一つ変えずにサングラスを手にし、綺麗な長い指で髪を掻上げながら瞳を覆い掛ける姿は、ズルいぐらい格好良く見えた。「好き?」「……それ今更いるか?」「言って欲しいもん」「今度ベッドの中でな?」「ぇ?」「籍入れるまで待てってか?」「⋯⋯」「待ってやるよ、なら」「ぇ?」 それって⋯⋯ 今、籍いれるって言った? え? え? 本当に? え? その後のって…… 驚き過ぎて、良く聞き取れなかったけれど…… それって……「まあ、取り敢えずは卒業しなさい。今は襲わないって誓います。だから安心しろ」「襲うって……」「だから、しないって」「いや、そうじゃなくてですねぇ……」「何だよ? ちゃんと待つって言ったろ」「いや、そうじゃなくて。待たなくても良いといいますか……何と申し上げたら良いのでしょうか……」「ハハハハッ。阿呆かお前。自分から安売りする女が何処にいるんだよ。卒業するまでは抱きません」「……ごめんなさい。じゃあ卒業したら良いんですか?」 先生の顔を見る。 笑っていた先生の顔が少しだけ真面目な顔に変わる。「そこは重視してないから。焦る必要ないよ。まぁ俺が我慢出来なくなれば、分からんけどな?」 先生が? 我慢出来なくなることなんてあるの?「
──イギリス人作曲家エドワード・エルガーの「威風堂々」その中の『希望と栄光の国』は「イギリスの第二の国家」と言われる程、本国イギリスでは長年愛され続け、歌詞も付けられている。 イギリス国内以外でも一度は耳にしたことがある有名フレーズだ。 そんな世界に愛される曲が「天才 御神の手」によってどんな風に味付けされるか、皆が固唾を飲んで瞬間を心待ちにしていた。 ◇ 先生が出てきた瞬間、ホールの空気が一瞬にして変わる。 全観客が「御神音楽」の世界に引きずり込まれ、行進のファンファーレと共に私達を連れて行った。 ──圧巻 その二文字しか出てこなかった。「ブラボー」「ブラボー!」「パチパ
──神が大きく溜息を吐いた後、御神様が私の顔を見て笑った。 神が笑った姿を生で見れた! ヤバイ倒れそうです!「天野。ピアノ科初等部に一人追加。譜読み中心に基礎を一から教えてやってくれ」「え? バイオリン科でなくてですか? 御神先生?」「そっちは俺がやる」 審査委員席に座っていた天野を含め、そこにいた全員が驚きの表情を隠せなかった。 世界中を飛び回っている超売れっ子指揮者が、一介の音楽学校の生徒を教える? しかもド素人を。 確かに先程の演奏には驚かされたが、弓使いは無茶苦茶。姿勢も酷い。逆によくアレでパガニーニを再現出来たこと自体が不思議なぐらいだ。 有り得ないだろ。そんなの。
夢にまで見た日がついに目の前に建っている。門に掛けられている看板に頬ずりしながら撫でる。「御神様~~あ~~ん素敵!」 周りの人に変な目で見られようが関係ない。そんなことはもう慣れっこである。『御神音楽学校─Mアカデミー学園』「夢かも~~~あ! 急がないと!」 ──『御神音楽学校』三年間で普通高等学校同等の卒業資格が与えられる。留年制度はなく単位不備の者は即退学となる。「声楽コース、弦楽器または管楽器コース」の二種のうち選択受験。 音楽学校を卒業した者で成績優秀者はMアカデミーへの進学を許可される。 アカデミーの生徒は、プロデビューを目標とする者を対象に、御神財団より海外留学の斡旋
朝ご飯を食べ終え学校に行く用意をしていたら、テレビから流れるニュースの音に立ち止まる。『Takashi Mikami──世界を圧巻したあの御神の凱旋帰国決定!』「御神さん、一言お願いします!」「久しぶりの緊急帰国になりますが、暫く日本で活動されるのですか?」「今回、御神堂での凱旋公演とのことですが、お父様の御神 幸造氏はいらっしゃる予定ですか?」 空港ロビーに集まる報道陣のフラッシュの中、明るめの茶色い長髪が光りを浴び金色に輝く中、サングラスを外すことなく無言で人混みを掻き分けるように足早に去っていたが、記者の最後の質問に、サングラス越しにも分かるぐらい一瞬怪訝な顔を浮かべた。
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