ロックの歴史を掘り下げた本なら『鍵と錠前の文化史』がおすすめだ。錠前職人の技術革新から中世の城門、現代の電子ロックまで、人類が安全を求めた軌跡を豊富な図版とともに解説している。特にヴィクトリア朝時代のイギリスで起きた鍵職人同士の技術競争のエピソードは、まるで産業スパイ小説を読んでいるようで興味深い。
もう一冊挙げるとすれば『Doors: History and Mechanisms』は建築史の視点からアプローチした珍しい作品。古代エジプトの木製閂から銀行金庫の複合ロックまで、各時代の鍵がどのように社会制度と連動していたかを分析している。17世紀フランスの牢獄で使われた三重ロックの仕組みなど、歴史的事件と結びついた具体例が記憶に残る。
日本の読者向けには『鍵と社会』が分かりやすい。和錠の美しい意匠から江戸時代の合鍵騒動、現代のスマートロックまでを網羅していて、写真資料が特に充実している。著者が実際に古い鍵を収集しながら執筆したため、職人へのインタビューや実物の感触描写が臨場感たっぷりだ。