理仁は表情を暗くした。
「悟、励ましたり、応援したりちょっとくらいできんのか。俺は自信がないんだよ。唯花さんが本当のことを知ったら一体どんな反応をしてくるだろうか」
「もちろん応援するさ、全身全霊で応援しまくるって。心の支えにもなってやるよ。君が何をしたって、俺は永遠に君の味方さ。理仁、俺は昔からずーっと君の忠実なる僕だぜ。理仁、頑張れ!たとえ天が降ってきても君は背が高いからきっとそれを持ちこたえられるだろう。大丈夫だ、最悪玉砕でもしろよ」
理仁「……」
「だけどさ、これ以上隠し続けて、万が一ある日奥さんに真実がバレたらさ、彼女はきっともっと怒りを爆発させると思うぞ。もしかしたら、君のことを捨てて離婚してやるとか言い出すかも。
だから、その嵐を全身でしっかり受け止めろよ。突然の嵐が来たら、太刀打ちできないぞ。もし、奥さんが怒って君を無視するようなら、俺らは仲間同士だな、はははは。俺も毎日毎日君ののろけ話を聞かずに済むってもんだ」
そして二人仲良く愛する者を追い求めようじゃないか。
理仁「……なんだかこんな電話などに出ないほうが良かった気がするな。お前はまるで人の不幸を楽しんでいるようだ。椅子にポップコーンでも用意して、俺の近くでどうなるのか見るつもりだろう」
「さすが俺をよく知る男、結城理仁だな!」
悟は堂々とそれを認めた。彼は面白いものを見る気満々なのだ。
「理仁、どうであれ、君はもうこの道を歩き始めたんだ。奥さんがどんな反応を示しても、君はそれに向き合わないとな。そうだ、今日はバレンタインだろ、君にはこういうイベント事の感覚もわからなければ、ロマンチックの欠片もない人間だ。だから、良かれと思って教えてやるよ、奥さんに花束を買ってあげるんだ」
理仁は言った。「俺は唯花さんに一万円札百枚で作った花束を用意しているぞ。後で店まで持って行くんだ。
それから、アクセサリー三十セットだ。どのセットもデザインは全く違う。そして、別荘に新車まで用意してある。なあ、これだけあれば足りると思うか?他に何か準備する必要があるだろうか。あ、あとブランドバッグを三十個買うべきだろうか、一カ月毎日違うのを持って出かけられるぞ。
それから、服に、スキンケア、化粧品に、ああ、お前が教えてくれないから、準備が足りないことに今まで気づかなかったぞ」
悟「……この、男の敵