Mag-log inお見合いのその日、内海唯花はまったく知らない人との結婚が決まった。 結婚後はお互いを尊重し合って平凡な生活を過ごすものだと思っていた。 しかし、秒で結婚した夫はべったりとくっついて離れないような人間だった。 一番彼女が驚いたのは、毎回困った状況になると彼が現れ、すべてをいとも簡単に処理してしまうことだった。 彼女が追及すると、彼はいつも運がよかったとしか言わなかった。 ある日、朝日野の億万長者が妻を溺愛しすぎで有名になりインタヴューを受けているのを目にすることに。しかも、その億万長者はなんと彼女の夫と瓜二つだったのだ。彼は狂ったように妻を溺愛していた。その妻とは彼女のことだったのだ!
view more麗華はリストの紙を隠した後、背筋を正して立ち、何事もなかったように出て行った。執事は栄達のほうを見ていたが、栄達のほうが先に執事に尋ねた。「陽君は一緒に来ているのかな?」「陽様はお見かけしておりません」栄達はひとこと「そうか」と返事し、新聞紙を取って開いて見始めると、こう言った。「陽君が来てないなら、年寄りの私は出迎えに行くのはやめておこう」執事は思わず笑った。陽は年配世代たちにとっては、とても可愛らしい存在だ。主に、琴ヶ丘邸には小さな子供がいないからだ。毎回陽が叔母と一緒に琴ヶ丘にやって来ると、みんなが陽を奪い合う。一人一人陽と一緒に遊びたいと、「陽争奪戦」が始まる。陽はその状況がよくわかっていて、みんなを喜ばせる話ばかりする。栄達のように孫の顔を早く見たいと思っている、ある程度年がいった人間は、もちろん陽のことが大好きだ。麗華は母屋から出てきたところで、息子と嫁が手を繋いで歩いてくるのが見えた。息子は片方の手にはいくつかの袋を提げている。聞くまでもなく、息子夫婦が両親に買ってきたお土産だ。唯花は手ぶらでここに来たことはない。もちろん、唯花も義父母のところには何か足りない物などないとはわかっている。しかし、嫁として、何か買って持って来るのは、義父母にとって意味があることなのだ。「母さん」「お義母さん、お久しぶりです」理仁夫妻は麗華を見ると挨拶をした。麗華はそれに笑顔で返し、二人の後ろに目線を向けた。理仁たちの後ろには、辰巳と咲がいた。咲は何度かここへ来たことがあるが、琴ヶ丘は非常に広大で、彼女はまだここの感覚が掴めていない。それで歩くときには慎重にゆっくりになる。辰巳と手を繋ぎ一緒にゆっくり歩く必要がある。そして咲に琴ヶ丘をさらに理解してもらうために、辰巳は歩きながらあそこには何があるだの、そこには何があるだの、教えていた。咲に覚えてもらうために周囲にあるものを細かく伝えてあげていた。咲のほうは歩数をしっかり数えて覚えていた。こうしておけば、次に同じルートを歩くときには誰にも付き添ってもらわずに済むからだ。「唯花さん、陽ちゃんは?今日は金曜日で明日は幼稚園はお休みよね。どうして一緒に来てないの?もう長いこと陽ちゃんに会っていないから、とても会いたいわ」麗華は陽の姿が見えなかったので
栄達は言った。「やっぱりこの件は理仁と唯花さんには言わないほうがいいだろう。家庭内で大騒ぎになるぞ。「母さんが不在だと、私も息子を管理する力はないぞ。理仁に言い聞かせられるなら、君から彼に言ってくれ。焦っちゃダメだと言っただろう。あの二人は結婚してまだ一年だ。十年も経ってる熟年夫婦じゃないんだから、何を焦る必要があるんだ」麗華は少し黙ってから言った。「実際、心の奥底では、唯花さんが早く妊娠したらいいのにって思ってるの。私たちに孫の顔を早く見せてくれないかなってね。子供を生んでも私たちに任せてくれれば、彼女がお世話する必要はないでしょ。安心して自分の仕事をやってくれていいから。一日でも早く妊娠して生まれないと、その分この事が心につっかかってしまうのよ。その事ばかり考えてしまうわ。でも、早く子供を作ってだなんて催促もできないし」麗華は、他の名家に嫁いだ女性のように、唯花には安心して家で夫を支え、子供の世話をしてほしいと実は望んでいる。若奥様という立場になった女性は、多くて家庭内の事や、結城家の小さな商売に目を向けて、家賃収入などで稼いでいればいいのだ。それに、これらの事も自ら行う必要はない。人を手配して仕事させておけばいいのだから。しかし、唯花は自立心の強い女性だ。それに、実の姉が結婚後仕事を辞めて、離婚してしまうという結末を見ていた。それで、唯花はかなり前から、他の名家の女性のように男の後ろに一歩さがって、家で専業主婦になるのは嫌だと態度をはっきりとさせていた。もし、結婚してから仕事をしてはいけないと理仁に言われるなら、唯花は離婚する気でもいる。しかし、唯花のことを深く愛している理仁が、離婚など絶対に認めるわけがない。当初理仁の正体が彼女にばれてしまった時、唯花は離婚すると言っていた。理仁は彼女をとどめておくために、屋敷に軟禁までしてしまったのだ。それを見ただけでも、彼がいかに狂っていたかがわかる。結城家も、唯花こそが彼の支えであり弱点になっているとわかっている。唯花がいないと、理仁は発狂してしまう。夫から支持され、自分のやりたいように生きていける唯花に対して、周りが余計な口を挟む必要があるだろうか?麗華は息子と嫁がとても愛し合っているのを知っているからこそ、唯花には家で若奥様として過ごしてもらいたいと強く思っていて
もちろん麗華は自分の息子に問題があると言われれば、それを全力で否定する。息子は逞しくいたって健康なのに、どうして問題があるだろうか?栄達は妻からそのサプリが書かれたリストを受け取った。彼はこのようなものには詳しくない。書かれているサプリが妊活中の女性にとってなぜ必要なのかもよくわからない。彼は言った。「ここに書かれてるのだって、ネットで調べたものだろう?葉酸なら妊娠前に飲んだほうがいいとよく聞くが、他は唯花さんにどんな栄養が欠けているかなんてわからないじゃないか。それに、私たちだって公に、子供たちの妊娠は焦っていないと言っているし、こんなリストを彼女に渡したら、早く妊娠しろと言われているのだと勘違いして逆にプレッシャーを感じるんじゃないのか。そもそも彼女のプレッシャーは相当なものなのに。これを理仁に渡したら、きっと目の前で破り捨てるぞ。母さんが連れてきた占い師だって言ってただろう。あの二人には秋くらいにおめでたの知らせがあるって。もう少し待ってみようよ。私はあの二人は大丈夫だと思うよ」栄達は続けていった。「あの二人は仕事が忙しいから、そのストレスが原因だろう。だから焦らないほうがいい。世間が何て言おうが、彼らの口を塞ぐことはできない。だけど、私たち家族は絶対に唯花さんの味方でいなくちゃ。彼女のことをもっと気にかけて、プレッシャーを感じさせないようにするんだ。彼女の前では子供の話は禁句だ」麗華はため息をついて言った。「あの占い師の方ね。過去に起きたことならまだしも、未来のことなんてわかりっこないでしょ。もう九月よ、もう秋が近いわ。ここはまだ真夏みたいに暑いから、秋って感じはないけれどね。私だって、子供の催促はしたくないわ。あの二人にプレッシャーを与えたくないもの。ただ、友達と出かけてお茶する時とか、いつも彼女たちに心配されるのよ。何回もこの件を聞いてくるんだから。また同じ質問されると思うと、彼女たちとお茶をするのもためらっちゃうのよね。それから、実家に帰った時も、兄弟とそのお嫁さんたちから聞かれるんだからね。お母さんですらそれを気にしているのよ。唯花さんの子供を見るまでは、お母さんも死んでも死にきれないなんて言い出して」みんな、理仁と唯花が一年経っても妊娠しないのは、主に理仁の性格のせいだと考えていた。彼は唯花への愛が深
理仁は言った。「俺とお前、それから蓮以外のみんなはよそにいるぞ」蓮は今、全寮制の高校に通っていて、一カ月に一回だけ家に帰ってくる。辰巳は一瞬声を詰まらせて、笑って言った。「すっかり忘れてたよ」辰巳より下の従弟たちは仕事の理由で出張していたり、結婚相手の女性を口説くのに忙しい。今は辰巳と理仁だけが星城にいる。二人とも結婚しているか、婚約してしまっているからだ。「ばあちゃんも家にはいないね」辰巳は少し懐かしそうな口ぶりで話した。「ばあちゃんが家にいる時は、何か気に入らないことしちゃって目をつけられて、怒られるんじゃないかっていつも緊張してた。でも、ばあちゃんが他の所に行って家にいないと思うと、なんだか寂しく感じるな」理仁はそれに対して何も言わなかったが、同感だった。兄弟や従兄弟たちの中で、結婚に関しておばあさんが最も頭を悩ませていたのが、ほかでもなく理仁だ。以前、理仁と唯花が喧嘩して、冷戦状態になった時、おばあさんはかなり気苦労があった。それでわざわざ彼らの家に引っ越して暫くの間暮らしていたのだ。そう言えば、かなりの間、トキワ・フラワーガーデンのほうに帰って住んでいない。また日を改めてあの家に行き、少しの間暮らすと良いだろう。「他に何もなかったら、今から出発しよう」理仁は低い声でそう言った。辰巳はそれに頷いた。理仁は立ち上がると、妻の手を繋いで引いた。「明凛と九条さんも行くのよ」唯花はそう言うと、時間を確認した。「そろそろ高校生の下校時間だわ。明凛はもう少しかかるわね」理仁は穏やかに言った。「俺から悟に彼女を迎えにいくよう伝えるよ。本屋は九条家のボディガードに任せればいい。彼らは毎日あそこに滞在しているから、よくわかっているはずだ。あの二人が本屋一つ店番できないわけがない」「じゃ、九条さんに伝えてね」理仁はすぐ悟に電話をかけた。それから少しして、理仁と辰巳はそれぞれパートナーを連れて、琴ヶ丘に向かった。その知らせを受けた麗華は、サプリが書かれた紙を取り出して夫に言った。「あなた、お母さんから頼まれたものよ。唯花さんが妊娠する前に必要な栄養素を調べて、どのサプリを飲んだらいいかお母さんがリストアップしたの。唯花さんは普段とても忙しくて、なかなかこっちに来る時間がとれないわ。さっき理
唯月は息子の無事な姿と、妹も一緒にいるのを見たが、まだ口を開いてしゃべることができなかった。唇を動かして妹を安心させようと笑みを作ろうとしたが、目からこぼれ落ちる涙をどうしても止めることができなかった。彼女はまた選択をしたのだ。今は両親の元へ行くのを諦め、妹の傍に戻り、息子の世話をするという選択を。「先生、義姉さんの状態は?」理仁が医者に尋ねた。「患者さんが目を覚まされたので、危険な状態からは抜け出しました。もう重症患者さん用の病室にいる必要はありませんよ」この時、みんなはようやくホッと一安心することができた。唯月は普通の病室に移ることになった。理仁は義姉に一人用の
スカイロイヤルホテルに到着すると、辰巳は車を駐車し、先に降りて外からぐるりと回って素早く助手席まで来た。そして咲が車を降りた後、彼は彼女の前に立ちふさがった。「結城さん?」咲は辰巳のほうへ目線を上に向けた。この時、彼はかなり近い距離にいて、すぐにあの慣れ親しんだ香りが漂ってきた。辰巳は突然彼女の手を取った。するとすぐにその手を高く引き上げ、彼の顔に当てた。「咲さん、俺の顔を触ってみてください。今は俺がどんな顔をしているのか見えなくてわからなくても、こうやって触ってみると想像ができるでしょう。あなたならきっとできますよ、とても頭の良い女性ですからね」咲は静かに彼を「見
唯花はあきれた様子だった。辰巳は恐る恐る尋ねた。「もしかして、ばあちゃんが決めた嫁候補だっていう本当の事は言わずにずっと隠しておいたほうがよかったですか?」唯花が何か言う前に辰巳が続けた。「理仁兄さんみたいに、ずっと隠し続けてうっかりバレてしまったら、もっと怒るんじゃないかと思って。だから、嘘はつかずに正直に言ってしまおうと思ったんですよ」理仁を反面教師として、辰巳はできるだけ咲を騙さないようにしたかったのだ。まさか、本当の事を言ったのかまずかったのだろうか。唯花「……そうじゃなくて、そんな伝え方しちゃったら、あなたが本気で彼女のことを好きだからじゃなく、ただおばあちゃんの
唯月は未だ弱っていて、すぐにまた眠ってしまった。陽でさえも唯花の懐の中で眠った。唯花は甥を病室にある簡易ベッドに寝かせ、薄いブランケットをかけてやった。そして姉の点滴剤がもうすぐなくなるのを見て、ベッドにあるナースコールを押し、看護師に換えに来てもらった。点滴剤を新しいものに換えてもらった後、唯花はまた数分間見つめていてから、振り返ってそっと音を立てないように離れていった。この時、理仁が部屋に入ってきた。するとソファの上で唯花がぼうっとしていた。彼は彼女に近づいてきて、唯花の隣に座り、肩に手を回して優しく尋ねた。「どうしたの?義姉さんは寝てしまった?」「お姉ちゃんも
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