Masukお見合いのその日、内海唯花はまったく知らない人との結婚が決まった。 結婚後はお互いを尊重し合って平凡な生活を過ごすものだと思っていた。 しかし、秒で結婚した夫はべったりとくっついて離れないような人間だった。 一番彼女が驚いたのは、毎回困った状況になると彼が現れ、すべてをいとも簡単に処理してしまうことだった。 彼女が追及すると、彼はいつも運がよかったとしか言わなかった。 ある日、朝日野の億万長者が妻を溺愛しすぎで有名になりインタヴューを受けているのを目にすることに。しかも、その億万長者はなんと彼女の夫と瓜二つだったのだ。彼は狂ったように妻を溺愛していた。その妻とは彼女のことだったのだ!
Lihat lebih banyak結婚式もまだ挙げていないのに、結城家は唯花に家業について把握させようとし始めたことで、つまり妹のことを信用してくれているのだと唯月は感じ取っていた。これで唯月も完全に安心できた。妹は自分よりもずっと幸運に恵まれていると思った。当初、妹は唯月を安心させるために騙してまで理仁とスピード結婚することを選んだ。そして愛のなかったその仮面夫婦は今互いに深く愛するようになり、幸せに暮らしている。最も重要なのは、あのトップの財閥家である結城家が、今まで一度も妹の出身を嫌ったことがないのが、唯月にとっては大切なことだった。これは非常に難しいことだ。それで唯月はまるで自分のことのように喜んでいた。唯花は義母に近づき、甘えるように言った。「お義母さん、さっき帰ってきたばかりだから、ちょっとだけ遊んでからじゃだめかしら?」麗華は軽く唯花の額をからかうように突っついた。「まだ遊び足りないのかしら?最近、そこまで忙しくなかったでしょ。お店と、あとは事業の畑の管理をすることでしょ。お店の仕事以外に、別に何もないじゃない。事業の畑はちゃんと管理する人に見てもらってるはずだし、たまに進捗状況を確認しに行けばいいのだから、そこまで忙しくはないはずよ」そして麗華は息子をちらりと見て、からかった。「忙しいと言うなら、理仁といちゃつくのに忙しいくらいかしらね」唯花は義母からからかわれて顔を真っ赤にさせた。「さあ、二階へ行くわよ」麗華は嫁から甘えられてもそれは一切構わず、唯花をさっさと二階へ連れていった。二階には書斎が二つある。大きめの書斎は理仁と父親たちが使用している部屋で、もう一つ小さいほうは麗華が一人で利用している書斎だ。その部屋の鍵は麗華とおばあさんだけが持っている。しかし、麗華が嫁に来てから、家の細かなことは全て麗華に任されている。それでこの小さな書斎には、おばあさんはたまにしか足を踏み入れない。それ以外の人が入りたいなら、必ず麗華かおばあさんの許可が必要だ。辰巳の母である薫子と、奏汰の母である麻実の分家の妻も家業については把握している。しかし、彼女たちは管理する必要はない。二人は分家が自身で行っているビジネスだけ気にしていればいい。本家の大きな家業については必要があれば彼女たちも手伝いに来る。麗華が頼まなければ、二人も勝
理仁は黙ってしまった。それは唯花が理仁と結婚したことで、必ず向き合い、果たさなければならない責任なのだ。唯花は理仁のほうを見て彼が何も言わないのでこう言った。「なら、この数日理仁が休みなのを利用して、しっかり勉強しなくっちゃ。わからないところはみんなに聞けるし」彼女は結城家長男の妻であるから、しっかりと自分の責任は果たさなければならない。ただ、彼女は結城家の家業についても把握して、管理までしないといけないとは今まで考えたこともなかった。それにまさかこの広大な琴ヶ丘までも管理する必要があるとは。唯花は初めて遥に会った時、彼女が音濱岳を管理しているのを見た。どうやら、唯花も遥同様、結城家の一部を管理する必要があるらしい。遥は今すでにそれに慣れてしまっているようだが、唯花はまだ手もつけていない。遥には元からある程度の力があった。彼女の育った雨宮家は決して大きな名家であるわけではないが、お金には困らないくらいの裕福な家庭である。それに、家族たちからとても大切にされて育ってきて、彼女に自信を与え、ポジティブな性格になったのだ。そして遥の実の両親がわかると、その父親は望鷹の篠崎家の主人であることが判明した。そして篠崎氏の家業を継ぐだけでなく、父親の個人財産だけでも遥には数千億相続される。そうすれば女性の中でトップの富豪となるのだ。お金も地位もあれば、自信は必ず生まれて来る。唯花にはまだその自信が足りない。しかし、理仁も結城家も唯花のことを信頼してくれているので、唯花も自信が湧いてきた。彼女がまだ始めたばかりの時に、何か失敗しても結城家が彼女を責めることはないだろう。失敗から教訓を得て、それをもとに良い方向へと進んでいけばいいのだから。「理仁もあなたも家業には責任を負うのよ。あなたが担うのは細かいところよ。つまり店舗の貸し出しや、チェーン店の運営といった感じなの。そんなにたくさんではないわ。唯花ちゃん、すぐに慣れると信じてるわ」おばあさんは微笑んで唯花にはあまりプレッシャーをかけすぎないように言った。大きなビジネスに関しては理仁に任されている。しかし、唯花も結城家が関わっている各業界やビジネスを把握しておく必要がある。夫婦は運命共同体であり、理仁が知っていることなら、唯花も知っておかなければならない。今後、理仁と
結城おばあさんは陽の手を繋いで東屋を出ると、理仁に柴尾家の状況について尋ねた。理仁はそれに答えた。「今外で薫子おばさんに会おうと待っている二人は、柴尾さんのことを恩知らずやら何やら罵倒して、さらに柴尾家の財産全てを横取りしようとしている。もっと詳しいことは俺も把握していないよ。それは辰巳のやることだからな」咲は将来、理仁の親戚になる予定だ。咲のほうから助けを求めてこない限り、彼も柴尾家の事情を把握するつもりはなかった。「辰巳も別に何か手助けをしてはいないでしょう。咲さん自身が処理できるはずよ。あの子はただ咲さんの味方になり、後ろ盾になってあげていればいいのよ」おばあさんは自分が選んできた孫の嫁候補にはかなりの信頼を寄せていた。咲が自分の手で柴尾家のビジネスを継ぎ、やっていけると信じている。理仁は返事をしなかった。そしておばあさんもすぐに話題を変えた。辰巳と奏汰のことは、おばあさんも心配する必要はない。ただ相手を選んであげれば、あとは自分たちでどうにかするからだ。四番目の拓真と五番目の朔久の嫁候補に関しては、まだ確定していない。六番目の律以下数名の孫は、もう少し年を取ってからでいいので、焦る必要はなかった。男は女の子よりも精神的に大人になるのが遅い。若くして結婚してしまうと、家庭を持つ重責を担えない。少なくとも仕事で成果を上げてからじゃないと結婚を催促できない。その時には、結城家からの支えがなくとも、自分自身で家庭を支えていける実力をつけているからだ。「最近の天気は寒くも暑くもないから、理仁、みんなを連れてうちの島で数日過ごしたら、いいんじゃないかしら」おばあさんは若者たちにアドバイスした。理仁は「ばあちゃんにまずは会いに帰ってきたんだが、ばあちゃんも行きたいか?」と尋ねた。「私はもう年だもの、行かないわ。あなた達若い人たちで行ってらっしゃいよ。弟たちにも声をかけて、島で数日羽根を伸ばしてきたらいいと思うわ」おばあさんは、拓真と朔久に選んだ嫁候補の相手がどのような人物かをまだ見極める必要がある。もし、問題なければ、彼女たちに決めるつもりだった。拓真と朔久はこの件で戦々恐々としている。理仁はひとこと「うん」と返した。おばあさんは後ろを振り向いて唯花に言った。「唯花ちゃん、理仁がせっかく休みな
「唯月さんと陽君も来ていますよ。俺は本当におばあ様に会いに来たんです」隼翔は東屋へと進み、座っておばあさんがラジオ体操を続けるのを見ていた。そして言った。「以前、祖母がまだ生きていた頃、あなたと一緒に体操をしろって言っていたのに、全然聞かなかったんです」彼の祖母は結城おばあさんと同年代だが、健康面ではかなり劣っていた。結城おばあさんのほうは今でも健康的で、誰かに付き添ってもらう必要もなく、飛行機に乗って世界中を飛び回れるくらいだ。それに孫に罠をしかける時には、頭の回転もかなり早い。それと違い隼翔の祖母はもう天国に旅立ってから長年経つ。「あなたのおばあ様こそ正真正銘良家の品格のあるお方よ。私のような落ちぶれた家とは全然違うわ」「なにが落ちぶれた家ですか、結城おばあ様だって良家出身で品格のある方ですよ」おばあさんは笑って言った。「私の曾祖父が生きていた頃は、うちの実家もまあ名家と言えたんだけど、私が生まれた後は衰退していったわ。お宅のおばあ様は死ぬまで優雅だったわ。私みたいな荒くれもののばあさんとは比べられないわよ」彼女は体操を終わらせると、動きを止めた。そして隼翔はサッと駆け寄って彼女の体を支えようとした。おばあさんはそれを断った。そして興味津々な様子で彼に言った。「隼翔君、ちょっと稽古しない?私はかなり長いこと体を動かしてないのよ」隼翔はすぐに勘弁してくれという顔で笑った。「おばあ様、それだけは許してください。そんな、あなたと稽古をつけるだなんてできませんよ」「別に負けたって責めないわよ」「それでも、おばあ様はお年ですから、もし俺が力加減を間違えて怪我させたらどうするんですか。そんなことになれば、俺は結城家にとって大罪人ですよ。今後、結城家には一歩も入れてもらえなくなります。俺にはデメリットしかありません。理仁に稽古つけてやってください」その時、理仁の声が聞こえてきた。「隼翔、俺まで巻き込む気か」彼は陽を抱っこしたまま東屋へとやって来た。「ばあちゃん」おばあさんは理仁に返事した。陽はお利口に挨拶して、おばあさんが笑顔で彼を抱き上げた。「陽ちゃん、会いたかったわ」唯花と唯月の二人は後からやって来た。「おばあちゃん」「おばあ様」おばあさんはとても嬉しそうに笑っ
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