「内海さん、理仁がどうして正体を隠していたのかは置いておいて、彼のあなたに対する気持ちは嘘偽りのない本物です。あなたのことを本気で愛しています。これだけは彼を疑わないでください」
唯花は、ハハハと声をあげて笑った。笑いながら目に涙を浮かべていた。
彼女は手で目をこすると立ち上がり、悟に言った。「九条さん、質問に答えてくださってどうもありがとうございます。お邪魔しました。それでは私はこれで失礼します」
もう確認は済んだ。彼女がここに留まる理由などない。
悟は彼女をここに引き留めることはなく、立ち上がって彼女と一緒に歩いていった。歩きながらこう言った。「内海さん、今大変驚かれて、お怒りのことでしょう。理仁がやったことは到底許されることではありませんが、彼にはこんなことをすることになってしまった理由があるんです。気持ちが落ち着いてから、彼に説明する機会を与えてやってください。なんといっても、あなた達は夫婦なんですから」
唯花はただ黙っているだけで、見る人を驚かせるほど、その表情を重苦しいほど暗くさせていた。
悟自ら唯花を下まで送り、彼女と一緒にオフィスビルから出て車を取りに行った。
「義姉さん」
この時、辰巳が会社前で待っていた。
彼は理仁から助けを求める電話を受け、理仁が会社に戻ってくるまで彼女を引き留めているよう頼まれたのだ。
辰巳は唯花のあの般若のように恐ろしい顔を見て、ものすごいプレッシャーを感じた。しかし、彼は今会社にいるのだから、この運命から逃れようもない。理仁は今会社に戻る途中で、彼では間に合わない。理仁の家族である彼が引き留める大役を買って出るほかないのだ。
理仁は唯花が会社を出てしまうと、彼の元から永遠に去ってしまうのではないか心配していたのだ。
唯花は現在、結城家の人間を見ると非常に腹が立ってしまい、辰巳とも話したくなかった。
彼女は辰巳を無視してそのまま通り過ぎた。
辰巳は手を伸ばし彼女を掴んで引き留めたかったが、彼はただ彼女の親戚であるだけで、失礼をするわけにはいかず、その手を引っ込めた。急ぎ足で唯花の前に回り込み、両手を広げて彼女の行く手を阻み、口を開いた。「義姉さん、待ってください。兄さんは今ここへ来る途中です。もうすぐ到着しますから」
唯花は氷のような瞳で彼を鋭く睨みつけた。
この瞬間、辰巳はその冷たい目つきは