博人は苦しげに眉をひそめて、真剣な様子で言った。「だけど、俺の心の中には君しかいない」
その言葉を聞いて、未央は突然笑い声をあげた。
部屋の中に響くその笑い声はだんだん大きくなっていった。博人は顔を少し歪めて、目の前にいるこの女性を心配そうに見つめていた。
そして暫く経ってから。
未央は目尻に溜まった涙を拭い、赤い唇を少し動かして、一字一句はっきりと述べていった。
「その心の中とやらにいるのはただ私だけ？それとも単なる独占欲なの？」
結婚して7年、博人は雪乃のために彼女を何度も無視してきたじゃないか？
それが今、何を世迷いごとを言っているのだ？
未央は口をニヤリとさせ、彼のほうを一度も振り返らず出ていった。
博人は彼女が去るほうへ手を伸ばした。その瞳は後悔で満ちていた。
視界から細いあの姿が消えていくのを見つめていた。彼の両足はまるで接着剤でくっついてしまったかのように、その場から離れることができなかった。
一方あちらでは。
朝の光りが窓から部屋の中に差し込んでいた。
未央が悠奈のいる病室に戻ると、その時すでに悠奈は目を覚ましていた。
彼女はぼうっと窓の外の風景を眺めていた。その瞳には光りがなく、何を考えているのか分からない。
未央は心配になり、無意識にそっと彼女のほうへと近づいた。
「悠奈ちゃん？」
自分の名前を呼ばれて、悠奈は未央のほうへ顔を向け、無理に笑顔を見せた。
「すみません、未央さん、また心配させちゃって」
彼女が元に戻った後、未央はゆっくりと息を吐き出し、彼女の頭を優しく撫でてこう言った。「あなたは悪くないでしょう。本気でそうしたいわけではないでしょ？」
精神的な心の病を抱えている患者の中には、早い段階で自分をコントロールできなくなってしまう人もいる。そんな彼らも絶望の中にいて、無力感に襲われているから、そんな時は絶対に彼らを責めるような言葉をかけてはならない。
「一緒に深呼吸して、リラックスさせるの」
優しい女性の声が耳元に響いた。
悠奈の表情はだんだん和らいでいき、未央に優しくなだめられて、だいぶ心が軽くなってきた。
そして暫く経ってから。
未央は懐から懐中時計を取り出し、その場で催眠を試みた。するとすぐに悠奈は催眠状態に入った。
「あなたの名前は？」
「藤崎悠奈」
「普段、何をすることが好き
