「ゆみ、俺を恨んでるか?」
朔也は低い声で問いかけた。
「……きっと恨んでるんだろうな。俺は澈を傷つけたからな」
「確かに怒ってはいるけど、恨んでいないわ」
ゆみはきっぱりと言った。
「あいつは君を泣かせた」
朔也は顔を上げて言った。
「ゆみのことはずっと、自分の娘のように思ってきた。君が少しでも傷つくのを見るのは耐えられないんだ」
「人生には色んなことがあるわ。私が誰かと揉める度に、おじさんはこんな風に手を出すの?それは私のためにならないし、他人を傷つけるだけよ」
ゆみの笑顔が消えた。
「朔也おじさん、私が気の弱い子に見える?今まで口喧嘩で負けたのを見たことがある?今夜以外ね」
朔也は再び沈黙した。
その無言が、ゆみへの答えだった。
「朔也おじさん、自分の行為にどんな報いが待ってるか、分かってやってるの?」
「ああ」
朔也は答えた。
「十八の地獄を全部味わうことになるだろうな」
「今まで私を守ってくれた恩は、どう返せばいいの?でも、今のおじさんのやり方はただの束縛よ」
「すまない……だが、俺には抑えられなかったんだ」
朔也の声は次第に力強くなった。
「ゆみ、俺は、君を傷つけるやつは誰であろうと許さない!君が嫌いなやつ、君を怒らせたやつは、皆不幸にしてやる!」
ゆみは軽く眉をひそめた。
彼の執念の根源はよく分かっている。
だからこそ、簡単には説得できないのも分かっていた。
「お母さんがおじさんに会いたがってるわ」
ゆみは話題を変えて言った。
「会わない」
朔也は即答した。
「こんな姿を見せても、怖がられるだけだ」
「でも、おじさんが突然亡くなってお母さんは死ぬほど悲しんでた。何日も何日も、お母さんはおじさんのことで泣いてたよ」
「彼女の記憶の中の俺は、一番良い姿で留まっている。今の姿は見せられない」
「おじさんがおじさんでいる限り、お母さんはきっと何も思わないわ」
ゆみは、真剣な眼差しで朔也を見つめた。
言葉に込めた二つの意味は、朔也に伝わるだろうか。
一つは文字通りの意味。
もう一つは、以前の明るい性格に戻ってほしいという意味だ。
朔也は理解したようで、うつむいたまま沈黙した。
ゆみの眼差しには、複雑な想いが込められていた。
生前の彼は、悩みなんてなさそうに、毎日陽気で笑いの絶えない人だっ