悠斗は医者の指示に従わず、すぐに病院を出て自宅へ戻った。
かつては温もりに満ちていたマンションが、今ではがらんとした寂しい場所に変わっている。
その光景を目にすると、心の奥に渦巻いていた不安がじわじわと全身に広がっていった。
リビング、寝室、書斎……明美に関わるものは何1つ残っていなかった。
彼女はまるで最初から存在しなかったかのように、悠斗の生活から完全に消え去っていた。
悠斗は完全に途方に暮れ、どうしていいかわからなくなっていた。
彼は友人たちに頼んで明美の行方を探してもらおうとしたが、彼女は悠斗とつながりのある人々をすべて連絡先から削除しており、一人も残していなかった。
彼女は完全に縁を切るつもりだったのだ。その決然とした態度に、悠斗は完全に取り乱してしまった。
もはや理性を保てなくなった彼は、まだ完治していない手を引きずりながら、京阪市中を駆けずり回った。
二人で訪れたことのある公園、彼女が「素敵だね」と褒めた細い路地、彼女が通い詰めていたヨガスタジオ……
どこにも明美の姿はなかった。
丸一日、悠斗は一瞬たりとも休まずに探し続けた。そしてまた朝を迎えたとき、最後の望みを胸に、彼女がかつて勤めていた会社へ向かった。
ようやく元同僚の口から、彼女の行き先を聞き出すことができた。
「佐藤さん、たぶん実家に帰ったみたいですよ」
実家……江城市か?
悠斗は考える間もなく、すぐさま江城市行きの最も早い便のチケットを手配した。
春樹はそんな彼の慌てぶりを見て、思わず諫めた。
「兄貴、怪我がまだ治ってないじゃないか。
今すぐ追いかける必要はないだろ?行き先がわかったんだから、傷が癒えてから行っても同じじゃないか」
悠斗には春樹が自分を心配していることがわかっていた。
でも、彼には一刻の猶予もなかった。
人が完全に心を閉ざし、過去を捨て去る前には、数えきれないほどの失望が積み重なるものだ。そのことを、悠斗は誰よりもよく理解していた。
すでに5日も経ってしまっていた。これ以上遅れれば、やり直せる可能性はほぼゼロになってしまうだろう。
だから皆の制止を振り切り、飛行機に乗り込んだ。
江城市に到着すると、秘書から調べた住所が送られてきた。
悠斗は春樹とその場所へ急ぎ、