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Discover a collection of enchanting 恋愛 short stories that explore the depths of passion. Perfect for readers seeking one-hour short stories to inspire and ignite their imagination about 恋愛.
弟子との一線を越えた夫は、憎む価値もない
逆転
ドロドロ展開
ひいき/自己中
結菜
神谷柚希(かみや ゆずき)は、事故で腕を切断されてしまった息子の神谷健太(かみや けんた)を抱き、空港で救援を待っていた。すると突然、この便が誰かにチャーターされたという知らせが届いた。 「お願いします、どうにかなりませんか……」柚希は空港の係員の手にすがった。 「息子の腕は切断していて、一刻を争うんです。3時間以内に東都へ戻って手術を受けさせないといけないんです!」 切り落とされた腕が入った保冷バッグを、柚希は凍えそうになりながら必死に抱きしめ、絶対に離そうとはしなかった。 係員は困り果てた表情で答えた。 「申し訳ございませんが、神谷さんが通常の3倍の料金でこの機を貸し切られました。愛弟子の快気祝いを開かれるそうで、絶対に誰も乗せないよう指示を受けているんです」 神谷さんって? 「どちらの神谷さんですか?」柚希は問いただした。 係員は答えた。「有名なピアニストの、神谷雅臣(かみや まさおみ)さんです」 雅臣。それは、柚希の夫の名だった。
消えた温もり、戻らぬ日々
転生
逆転
ドロドロ展開
容奏
桜庭梨央(さくらば りお)は夫にとって高嶺の花である森本結衣(もりもと ゆい)の運転する車に轢かれた。 病室で目を覚ますと、夫の相良時哉(あいら ときや)が二人の子供を連れて病床のそばに立っていた。 梨央が目覚めたことに気づくと、三人は責めるような表情を浮かべた。 時哉は眉をひそめた。「大丈夫か?なぜあんなに不注意に歩いていたんだ?」 長男の相良悠樹(あいら ゆうき)は唇を尖らせて文句を言った。「ママ、どうして突然結衣さんの車の前に飛び出したの?結衣さんを怖がらせちゃったじゃないか」 次男の相良拓海(あいら たくみ)も頷いて同調した。「そうだよ。結衣さん、ずっと泣いてた。全部ママのせいだ!」 梨央は布団の中の手を固く握りしめた。目の前のまだ若い夫と幼い子供たちを見つめ、涙が溢れてきた。 神が梨央にもう一度やり直すチャンスを与えてくれて、彼女は50年前に生まれ変わった! この年、梨央は三十歳、夫の時哉は三十五歳。時哉は学士院の最年少会員になったばかりで、国の未来を担う逸材として、その前途は洋々たるものだった。 そして、二人には十歳になる双子の悠樹と拓海がいた。
身代わりの私?真実を知った彼は元カノを破滅へ
甘々シリアス
ひいき/自己中
偽善
マンゴー
18歳の時、母親の治療費のために、鹿野寧々(しかの ねね)は10歳年上の男・御堂雅臣(みどう まさおみ)に自分を売り渡した。 後になって知ったことだが、雅臣はあの御堂グループの社長だった。仕事では冷酷で誰もが恐れる存在なのに、寧々にだけは、信じられないほど優しかったのだ。 雅臣はどこまでも彼女を甘やかした。それは、自分は愛されているのだと寧々に錯覚させてしまうほどだった。 寧々が「南区にあるスイーツが好き」と何気なく言うと、翌日にはそのお店ごと雅臣に買い取られた。そして、寧々だけのためにスイーツを作らせるようになった。 寧々が夜中に熱を出した時、雅臣は大切な国際会議を抜け出し、一晩かけて飛行機で戻ってきた。そしてベッドサイドで付き添い、何度も冷たいタオルを取り替えてくれた。 寧々の20歳の誕生日に、雅臣は彼女をオーロラを見るために連れて行ってくれた。美しくきらめく光景の中で、寧々の指先に口づけを落とし、「寧々、これからは毎年の誕生日を一緒に過ごそう」と微笑みかけた。 寧々はその言葉を本気で信じていた。
報われぬ恋ほど、骨身に染みる
切ない恋
逆転
愛人
ヤスダエツコ
結婚して五年になるが、湯本行也(ゆもと ゆきや)は古井月乃(ふるい つきの)と婚姻届を出していない。 彼はいつも「会社が忙しくて時間が取れない」とか、「籍を入れても入れなくても同じだ」と言い、月乃はそれを信じてきた。 だが今日、その信頼は無残に打ち砕かれた。月乃は自分の目で、行也が、五年前に姿を消した姉と一緒に市役所から婚姻届受理証明書を手にして出てくるのを見てしまったのだ。 古井星花(ふるい せいか)は目を赤くしながら行也の胸に飛び込み、手には婚姻届受理証明書を固く握りしめている。 「行也、あの時逃げたのは私が悪かった……」と、星花は声を詰まらせて言った。「今回あなたが籍を入れてくれたのも、私が癌になったからだって分かってる。でも、それでも聞きたいの。こんなに長い年月を経て、本当に私のことを忘れて、月乃を愛するようになったの?」
愛憎の海を越えた先に、青空が待つ
切ない恋
ひいき/自己中
クズ男
ドウドウ
八度目に、藤崎直哉(ふじさき なおや)が女とベッドにいるところを押さえたとき、直哉は黙って濃度の高い消毒液をつかみ、自分の股間に浴びせた。 「これで満足か?」 真っ青な顔で、荒れ果てた部屋に立つ私を見た。その目は、まるで狂人を見るようだった。 たったそれだけの言葉だったが、直哉が私に屈したのは初めてだった。 陶器の破片を握り締めたまま、私・高梨紗月(たかなし さつき)はその場に立ち尽くし、しばらく何も考えられなかった。 何しろ、これまでで最も激しく争ったときには、私は自分と直哉の浮気相手に爆弾を巻きつけ、どちらか一人を選べと迫った。 すると直哉は、自分と私の両親を、大型トラックの後ろに引きずられるように縛りつけ、笑いながら聞いたのだ。 それでも俺に選ばせるのか、と。 それが、二人の狂人が互いを相手に駆け引きを続けてきた10年間だった。 選ばず、譲らず、手放さない。 今の私があまりにも惨めに見えたのか、直哉は憐れむような目を向けてきた。 「莉奈には手を出すな。あいつはまともな人間だ。お前とは違う。報復なら全部俺が受ける。今回は、好きなだけ俺にぶつければいい」 私は呆然とした。 「どういう意味?」 直哉は目だけは笑わないまま、疲れ切ったように口元をわずかにゆがめた。 「俺が折れたってことだ。うれしいだろ?お前が望んでいたのは、これじゃないのか?」 そうだ。 直哉は折れた。 だが、それが誰のためなのかは、考えるまでもなかった。 憎しみをたたえたその目が、私のこの10年間を、独り相撲の笑い話に変えていた。 その瞬間、どうしようもない虚しさがこみ上げてきた。 もう、お互いを解放してもいいのではないかと、ふと思った。
九十九通の離婚届
カウントダウン
ひいき/自己中
クズ成敗
局所宇宙
小山宥一(こやま ゆういち)の初恋相手が離婚した。 その夜、彼は私の目の前に九十九枚目の離婚届を叩きつけてきた。 「恵が傷ついて立ち直れない。俺が支えてやらなきゃいけない」 七歳の息子まで、私に向かって言った。 「早く出てってよ。恵さんに住んでもらうんだ。お前みたいなお手伝いなんて、もういらない」 父子そろって、私が泣いて「追い出さないで」とすがると思っていたのだろう。 けれど、私はただうなずいた。 そして、そっと離婚届に署名した。 十年後。 息子は大学受験でトップ合格を果たし、テレビに映っていた。 記者が尋ねる。 「この数年間、勉強を続けられた原動力は何ですか?」 息子はしばし黙り、人前で目を赤くして言った。 「母さんに伝えたい。僕はもう大人になったから、帰ってきて。僕を見捨てないでって」
身代わりの妻が消えてから、夫は狂った
切ない恋
高嶺の花
クズ男
ざざ
20歳のとき、水瀬朱莉(みなせ あかり)は父の年の離れた友人、久我佐久都(くが さくと)と結婚した。 8歳年上の佐久都は、仕事では冷酷な手腕で知られ、女にも一切興味を示さない男だった。ところが朱莉にだけは、別人のように優しかった。 朱莉が何気なく「あのネックレス、きれい」と言えば、翌日には数億円もの宝飾品を届けさせた。 生理痛で寝込んだときは、20億円を超える案件まで後回しにして駆けつけ、温かい飲み物やカイロを用意して、ずっとそばについていてくれた。 情が高まると腰を強くつかみ、掠れた声で「朱莉ちゃん」と呼んだ。「いい子だ」「離れなくなる」と言うこともあった。 彼が使うSNSアカウントの名前は、どれも「elise_note」だった。 朱莉はずっと、二人が初めて会った日に、自分がピアノで弾いていた曲にちなんだものだと思っていた。 あの日、佐久都の書斎で古いアルバムを見つけるまでは。 収められていたのは、朱莉によく似た一人の少女が、ピアノの前で微笑む写真ばかりだった。 写真の裏には、こう記されていた。 【『エリーゼのために』――最愛の絵里へ】
愛しすぎたから、永遠は望まない
カウントダウン
ドロドロ展開
後悔
静かなる水の舟
誰もが知ってる――長宏グループの社長、一ノ瀬智也は筋金入りの「妻バカ」だ。 最初に出した音声AIの名前は「チイちゃん」 最新スマホの名前は「トシネ」 どうやら、彼の頭ん中には「千歳を全力で愛する」ってプログラムでも入ってるらしい。 ……千歳も、そう思ってた。 でも、現実はちがった。 だって、智也は――ずっと前から、秘書とベッドを共にしてたのだから。 その瞬間、すべてが崩れた。 「……子どもは、降ろす。いらない。 十日後、私は彼の前から、完全に消える」
そんな身内なら捨てちゃえば
転生
家族修羅場
偽装死
とじ
妊娠7ヶ月のとき、私・林美雨(はやし みう)は死んだ。 私を殺したのは、夫の進藤臨也(しんとう りんや)だった。 早産児の血が私の妹・林優衣(はやし ゆい)を救えると知った彼は、ヤミ医者と結託して私を無理やり帝王切開して、お腹の赤ちゃんを取り出したのだ。 赤ちゃんから血を抜いたあと、彼はさっさと立ち去った。早産で生まれた我が子は、そのまま弱り果てて命を落とした。 その後、父・林健三(はやし けんぞう)と母・林由紀子(はやし ゆきこ)は言った。 「自業自得だ。償う時が来ただけだろう」 臨也は言い放った。「子どもなんてまた作ればいいじゃないか。優衣の方が大切だ」 私は激しい怒りと絶望でパニックに陥って、大量出血を起こしてそのまま息絶えた。 誰もが優衣の手術の準備に追われて、私にきちんとした死装束を着せる時間さえ惜しんでいた。宙に浮いた私の魂は、その光景をただ見下ろしている。 私のために泣いてくれる人も、取り乱してくれる人も、誰一人としていない。 家族は気にも留めずに私を霊安室へ押し込んで、そして家族総出で優衣の回復を祝った。 再び目を開けると、私は3ヶ月前、家族全員から離婚を迫られた、あの日に戻っていた。
叶わなかった願い、待ち人は来なかった
ひいき/自己中
愛人
切ない恋
ベリーラディッシュ
母は末期がんだった。最後の願いは、一度でいいから、私がウェディングドレスを着た姿を見ること。 私は恋人の賀川清人(かがわ きよと)と親友の佐倉遥(さくら はるか)に何度も何度も頭を下げた。しつこいくらい頼み込んで、ようやく二人は、母の最期の願いを叶えるための「偽の結婚式」に付き合ってくれることになった。 結婚式当日、母は最後の力を振り絞って待ち続けた。目が虚ろになるまでずっと。 それなのに清人は来なかった。付き添いを頼んでいた遥も来なかった。 そんな中、遥がSNSに写真を投稿した。 新郎衣装を着た清人と、ドレスアップした遥。二人はケーキを前にして、まぶしいほど楽しそうに笑っていた。 【親友の結婚式、緊張しすぎて無理!新郎さんがわざわざ街の反対側までケーキを買いに付き合ってくれた!こんな優しい彼氏がいるなんて、寧々は幸せ者だね】 位置情報には、人気のケーキ店の名前が表示されていた。 私は震える手で電話をかけた。問い詰めると、清人は悪びれもせず、軽い口調で言った。 「お前のお母さんの願いを叶えるためなんだろ?遥が緊張してたから、ちょっと気分転換させてただけ。そっちのほうが本番もうまく演じられるだろ」 すると遥まで電話口に割り込んできて、笑いながら言った。 「そうだよ寧々。ちょっとからかっただけ。すぐ戻るって。先生にももう少し待っててもらってよ」 その瞬間ようやくわかった。私が必死になって何度も頭を下げたことも、母の最期の願いも。 母の教え子であるこの二人にとってはどうでもいい、ただの冗談だったのだ。 私は一直線になった心電図を見つめた。涙で何も見えなくなった。 こんな馬鹿げたことは終わりにしよう。今後はもう私は一人でいい。 これからは二人とは関わらない。そして私自身もようやく解放してあげることにした。
雨の中、もう君とは歩けない
切ない恋
スカッと
逆転
桐谷
別れてから三年目、元嫁の篠宮栞(しのみや しおり)が子どもの手を引いて、俺の働いてる店に服を買いにやってきた。 俺は一瞬固まったが、いつもと変わらず丁寧に接客した。 距離感も言葉遣いもマニュアル通り。昔のことにはひと言も触れなかった。 栞はしばらく黙っていたが、ふと変形した俺の指をそっと握った。 「ここ、まだ痛む?」 俺は静かに袖口を引き、指先を隠して、もうなんともないと答えた。 その会話は俺たちの間には何ひとつ変わったことなどないみたいだった。 ただもう愛し合っていない、それだけだ。
もしも、出会った日のままでいられたなら
切ない恋
愛人
ひいき/自己中
バナナさんのちび宝
私との結婚を氷見寒成(ひみ かんせい)は三十八回も先延ばしにした。 五度目の事故では、車に激突されて肋骨を八本も折り、私は七度も危篤通知に署名した。 十度目、入籍へ向かう途中では、車ごと海へと弾き飛ばされ、着ていたスーツは鮫に食い破られた。 そして三十八度目。 寒成は心臓の病が悪化し、命の瀬戸際に立たされていた。 私は妊娠八か月の大きなお腹を抱えながら三度も乗り継ぎをし、二十三時間かけて地球の半分を横断し、彼のもとへと辿り着いた。 扉を開けると、そこには彼と瓜二つの少年が顔を上げて言った。 「ママが帰ってきたと思った」 その瞬間、寒成が裸足のまま駆け出してきて、愕然とした表情で私を見つめた。 私は振り返る。 そこに立っていたのは、十二年付き合いの親友だった。 手には鍵。 少年は駆け寄り、その胸に飛び込んで無邪気に呼ぶ。 「ママ!」 ――ようやく、理解した。 七年も待ち続けた婚約者は親友が長年ひそかに結婚していた――その夫だったのだ。 私は静かに口を開いた。 「三十八回も死にかけてまで待ったけど――もう、待たない」 そして、まっすぐに彼を見据える。 「氷見寒成。あなたも――いらない」
夜空に輝く星
スカッと
逆転
スカッと
リリア
恋愛5周年記念日、彼氏の陸川強(りくかわ つよし)は私に千円も満たない安物のブレスレットしかくれなかった。 その夜、彼は初恋の神原深雪(かんばら みゆき)に20億を惜しみなく使い、ヨットを贈った。 私はそれを同意しなかった。 しかし彼は私を理不尽だと非難した。 「深雪に贈り物をしたのは会社の株価のためだ。まだ彼女が好きというわけではない。 お前はただの貧乏人だ。お前と結婚する約束をしたのは十分じゃないか? これは本来お前への最後の試練だったんだ。夜宵(やよい)、お前は不合格だ」 私は別れを告げた。 彼はすぐに深雪にプロポーズした。 5年後、私たちはビジネスサミットが開催される高級ホテルで再会した。 彼の会社は業界の巨頭になろうとしており、彼の腕には深雪が抱かれていた。 彼が私を見ると、私は噴水の中で、全身ずぶ濡れで立っていた。 「夜宵」彼は嘲笑した。 「あの時、俺を拒んだお前は、俺から離れたら、乞食以下の生活になるなんて思わなかっただろ? 今さら偶然会ったふりして同情引いたって、俺は情に流されて、お前を連れて帰るなんてしない」 私は彼を無視した。 息子が大切にしているブルーダイヤは、夫からの誕生日プレゼントだ。 それがうっかり噴水に落ちてしまった。 息子は泣きそうになっていたのだ。私は急いで探さなければならない。
7年の愛、死んだ君はもう振り向いてくれない
逆転
ドロドロ展開
ひいき/自己中
キャットフード
会社の飲み会で、同僚たちは「彼氏に電話してお金を振り込んでもらえるかチャレンジ」を始めた。 誰の彼氏が一番気前よく送金してくれるか、誰が一番早く電話に出るかを競うのだ。 案の定、私・一ノ瀬夕奈(いちのせ ゆうな)は今回も最下位だった。 「一ノ瀬さん、そんなの気にしなくていいですよ。社長はぶっきらぼうだけど、お金はあるんですから!」 みんながそう言って取りなしてくれて、暗黙の了解で昔話は伏せられた。 例えば、諏訪涼介(すわ りょうすけ)と創業して7年経つのに、彼が一度も結婚の話をしないこと。 会社の株を役員に分けた際、私が最後の一人だったこと。 私が胃がんだと診断された日だって、親友だけが付き添ってくれた。 私は小さく笑うだけで、特に反応しなかった。 視線の先では、新人の小林夏希(こばやし なつき)がスマホをきつく握りしめて困った顔をしている。 「私はやめておきます。相手が出張中で、とても忙しいんです」 気まずい雰囲気の中、夏希を助けようと、私は手を伸ばして代わりに電話をかけ、スピーカーに切り替えた。 誰も出ないと思ったその電話は、すぐにつながった。 広い個室に、しんとした静寂が広がる。 電話から流れてきたのは、他でもない。ぶっきらぼうな私の恋人、涼介の優しい声だった。 「ミモザの日のプレゼント、もう届いたかい?」
彼は想い人のために、死んだ私の心臓を奪う?
幽霊目線
切ない恋
ひいき/自己中
白雪遠江
白石美咲(しらいし みさき)――それが、私の名前だった。 死んでから、5年。 そして今日、私がずっと想い続けた人、神崎悠真(かんざき ゆうま)が、ようやく私の眠る墓を訪れた。 理由は、ただ1つ。 彼の最愛の女性が、心臓移植を必要としていたからだった。 悠真は、私が生前に署名した臓器提供の同意書の写しを手に、風雨にさらされ、名前さえ読めなくなった私の墓石の前に立っていた。 霊園の管理人は、その様子を見かねて声をかけた。 「兄ちゃんよ、この子はもう5年前に亡くなったんだ。交通事故で、その場で即死だったんだ。遺体もひどい状態でな……いったい何の用なんだ?」 しかし、悠真には管理人の声など届いていなかった。 「……美咲はどこだ。今すぐ俺の前に連れてこい」 低く押し殺した声だった。 管理人は目を丸くし、困ったようにため息をついた。 「何を言ってるんだ。もう火葬も終わってる。ここにいるはずがないだろう。 葬式のときだって、ご両親は来なかった。この墓も、大学の友達が金を出し合って建ててくれたんだ」 その言葉を聞いた瞬間、悠真は勢いよく顔を上げた。 瞳には、凍てつくような怒りが宿っていた。 「……嘘だ。あいつが俺を置いて勝手に死ぬはずがない」 悠真は管理人を鋭く睨みつけた。 「あいつに伝えろ。3日以内に俺の前へ現れなければ、あいつのヤバい写真を全部ネットに晒す。後で泣いても知らないからな」 「……写真だって?」 管理人は困ったように眉をひそめた。 「あの子は、生きてる頃、新しい服1着買うのさえ我慢してた子なんだ。派手な遊びなんてするような子じゃなかった。 そんな子が、人に知られたくないような写真を撮るとは思えないな……」
6年待った聖夜に、恋を終わらせた
切ない恋
ドロドロ展開
クズ男
子豚狐
私、桜井瑞希(さくらい みずき)の恋人・相川慎一(あいかわ しんいち)は、今年もクリスマスイブを私と過ごさない。 私の親友・宮本沙耶(みやもと さや)と2人で出張することになったからだ。これで6度目になる。 沙耶はわざと責めるような目で慎一を見た。 「もう、慎一ってば。クリスマスイブまで出張だなんて、ほんと仕事ばっかりなんだから。瑞希、ごめんね。せっかくのイブなのに、慎一と一緒に過ごせなくなっちゃって」 慎一は表情を変えないまま言った。 「仕事が最優先だ」 昔から、慎一は何より仕事を優先してきた。私が高熱で意識を失ったときも、私たちを育ててくれた児童養護施設の施設長が亡くなったときも、「自分で何とかしろ」と言うだけだった。 それでも、慎一がそう考える理由はわかっていた。 私たちは2人とも孤児で、食べるものにさえ困るような生活をしてきた。安定した仕事があって初めて、安心して暮らせる。身をもってそれを知っていたからだ。 だから、私が立ち上げから携わってきたプロジェクトが、慎一のまとめた提携案件とちょうど噛み合うとわかったとき、私はすぐに上司へ掛け合った。 クリスマスの特別休暇を返上する代わりに、慎一の出張に同行させてほしいと申し出たのだ。 同行が認められたその夜は、うれしくてたまらず、ベッドの上を何度も転げ回った。 ところが今朝になって、突然プロジェクトから外され、別部署への異動を告げられた。 目を赤くした私に、慎一は淡々と言った。 「瑞希、仕事なんだから公私混同はするな。 ……それに、クリスマスイブに女性と2人で出張なんて、周りの目もあるだろ」 そう言ったくせに、私の代わりにプロジェクトを引き継ぎ、クリスマスイブに慎一と出張することになったのは沙耶だった。 女性と2人で行くのはまずいはずなのに、沙耶なら構わないらしい。 沙耶の笑い声で、私は我に返った。 「瑞希って、慎一とは子どもの頃からずっと一緒なんでしょ?こんな仕事人間とずっと一緒で、飽きないの? いっそ私に譲ってよ。うち、会社やってるし、倒れるまで働かせてあげる!」 顔を上げると、沙耶は慎一に身体を預けるように寄りかかっていた。 その表情は、半分冗談で、半分本気にも見えた。 それでも慎一は、彼女を振りほどこうともしなかった。 ……言われてみれば、そうかも。 私も、少し慎一に飽きてきたのかもしれない。
恋人の潔癖症、俺にだけ発症するらしい
切ない恋
ひいき/自己中
愛人
こそゆ風
俺の名前は大野慎一(おおの しんいち)。 恋人の石井彩香(いしい あやか)は、自分が重度の潔癖症だと言っていた。自分の物に触られたり、プライベートの空間に踏み込まれたりするのをひどく嫌がっていた。 一緒に暮らしたいと何度頼んでも断られていたが、付き合って5年目に、彩香はやっと同棲を受け入れてくれた。 俺はスーツケースを引いて彩香のマンションへ向かい、建物の前で5時間も待った。だが、何度電話をかけても電源が切れていて、まったくつながらなかった。 冷たい風にさらされ、手足の感覚もなくなりかけた頃、ふと見上げると、彩香の部屋に明かりがついていた。 いつの間にか帰っていたのかと思い、エントランスにいた管理人に事情を話してオートロックを開けてもらい、彩香の部屋へ向かった。 インターホンを3回押すと、ようやくドアが開いた。 そこには、彩香の大学時代の後輩で、この春卒業したばかりの相沢郁人(あいざわ いくと)が、上半身裸で立っていた。 「あれ、慎一さん。どうしてここに?」 郁人は濡れた髪をタオルで拭きながら、不思議そうに俺を見た。 「これから数日、台風で天気が荒れるらしくて。僕の部屋が雨漏りしたら困るだろうって、彩香さんが鍵を渡してくれたんです。半月くらいなら、ここに泊まっていいって」 開いたドアの隙間から見えた靴箱には、郁人の限定スニーカーがぎっしり詰め込まれていた。 無言で立ち尽くしていると、ちょうど彩香からLINEが届いた。 【会社で急に出張が入ったから、同棲は来月からにしよう】 一方、郁人のSNSには、10分前にこんな投稿が公開された。 【優しい先輩がいるって最高。シーツまで、僕のいちばん好きなディープブルーに替えてくれた!】 投稿には、彩香が腰をかがめてベッドのシーツを替えている後ろ姿が写っていた。 結局、彩香のいわゆる重度の潔癖症は、俺が相手のときだけだったのだ。
過去に戻ってあなたと縁を切る
切ない恋
ひいき/自己中
クズ男
ことづて
御影槙人(みかげ まきと)の浮気現場を押さえたあの日、彼とベッドにいた女は、自らの顔を傷つけた。 槙人はその女を腕の中へきつく抱き寄せた。私が取り乱して叫んでも、槙人は決して女の顔を見せようとはしなかった。 私を見据える彼の目は、何かをこらえるように赤く血走っていた。 「全部、俺が悪い。残りの人生すべてをかけて、必ず償う。 依織(いおり)、頼むから……彼女を追い詰めないでくれ」 その日から、槙人は私にすべてをさらし、何ひとつ隠さなくなった。 毎日スマートフォンを差し出し、自分から車内の至るところに小型カメラを取りつけた。 女性患者からメッセージが届いただけでも、私に何度も説明を求められた。 槙人は文句ひとつ言わず、私の要求にすべて応じた。もう一度、自分を受け入れてもらうためだけに…… すべてが崩れたのは、挙式を3日後に控え、私がウェディングドレスを受け取りに行った日のことだった。 店員は戸惑いを隠せない顔をした。 「神代(かみしろ)様、ドレスなら今朝もうお受け取りになりましたよ。ついさっきも、SNSで神代様のお式の動画をお見かけしたばかりです」 彼女が開いた動画に映っていたのは―― 昨日まで私を槙人の婚約者として扱っていた新郎側の友人たちが、新郎新婦に指輪を差し出していた。その傍らには、私たち共通の友人までいた。 槙人は笑みを浮かべて身をかがめ、花嫁にだけ届くような優しい声で、「夏菜」と呼んだ。 花嫁の名は、白石夏菜(しらいし かな)。しかも、その顔は私と瓜二つだった。 私は、その場に凍りついた。
後悔しても戻れない
切ない恋
ひいき/自己中
クズ男
ななちゃん
真夜中、氷を部屋まで持ってこいと義兄の小山智樹(こやま ともき)が言った。 乱れた髪を見た彼の喉仏がわずかに動き、目の奥が暗く沈んだ。 「家の中でそんな格好をして……誰を誘惑するつもりだ?」 私は暗がりに座る智樹にアイスバッグを差し出した。「氷、持ってきたよ」 彼はそれを受け取ると同時に、私の手をぐっと掴み、自分の熱い胸元へ押し当てた。目が真っ赤に染まっていた。 「氷なんかじゃ足りない……菜々美、助けてくれる?」 私は恐怖で後ずさる。彼は自嘲するように手を離し、いつもの冷淡な表情に戻った。 「ふん、根性なしだな。 留学の手続きは済ませた。来週にはここを立つ。俺みたいな狂人からは、離れておけ。 二度と戻ってくるな、いいな」
愛の終止符、それぞれの明日へ
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逆転
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「中絶手術を受けろ」 つい先ほどまで妊娠の喜びに浸っていた森美陽(もり みはる)が、夫のその言葉を聞いた瞬間、心は底知れぬ絶望の淵へと沈んだ。 「……今、なんて言ったの?あなた、この子は私たちの子供なのよ……」 「幸人がお前の妊娠を知って、さっき飛び降りようとしたんだ。あの子はまだ新しい母親としてお前を受け入れていない。それなのに、その腹の子を認められるわけがないだろう」 幸人。また、葛西幸人(かさい ゆきと)のこと…… 葛西圭(かさい けい)と結婚して以来、美陽は彼の息子――幸人に精一杯の愛情を注いできた。だが、幸人は執拗に美陽を嫌い続けた。 そして今、その悪意は美陽の子供にまで及ぼうとしている。 「圭、幸人があなたの子供なら、この子だってそうじゃないの?」 美陽の目から涙が溢れ出し、喉の奥にこみ上げる酸っぱい苦みとともに、声は途切れ途切れになった。 圭は沈黙した。 長い沈黙の後、ただ一言だけ告げた。 「子供ならまた作ればいい。聞き分けよくしてくれ。今は幸人を最優先にすべきなんだ」
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