食事が終わったのはちょうど6時だった。美智子はソファでお茶を飲んでいて、父娘二人はキッチンで後片付けをしていた。
健一はカウンターの油汚れを拭きながら、ちらりと娘のほうを見て、少し迷った末に口を開いた。
「明美、森川おじさんがお前に聞いてほしいって言ってたんだけど……森川くんのこと、どう思う?」
皿を洗っていた明美の手が一瞬止まり、目を細めて考え込んだ。
森川悠真か……
4日前に初めて会った時のぎこちなく丁寧なやりとりを思い出し、この2日間で昔話までできるほど打ち解けたことを考えると、かなり進展が早いのかもしれない。
彼女はゆっくりうなずき、少し自信なさげな口調で答えた。
「いい人だと思うよ。でもおじさん、なんでそんなこと聞くの?」
「なんでって、お前が気に入ったからさ。お嫁さんにしたいってことだよ。
お前がまだ京阪市にいる頃から帰ってくるのを楽しみにしてたし、俺たちがお見合いを考えてるって聞いたら、すぐ森川くんを連れてきて『まずうちの息子を見てくれ』ってね。
俺とお母さんも会ってみたら、見た目もいいし、話し上手で礼儀正しいし、年齢もちょうどいいから、悪くないと思ったんだ。
別に今年中に結婚しろってわけじゃない。ただまずは知り合ってもらって、話が合うかどうか見てみたいだけだ」
両親が自分のために気を遣ってくれているのは分かるし、心配をかけたくなかったので、明美は素直に気持ちを伝えた。
「うん、分かってる。彼は本当に素敵な人だし、一緒にいて楽で落ち着くよ。
でも恋愛感情って急にどうにかなるものじゃないから……
私も彼ももう少し時間をかけて、お互い合うかどうか確認したいと思ってる。
だからお父さんたちはそんなに心配しないで、お茶飲んだり将棋したり、お母さんと散歩でも楽しんでてよ」
言いたいことは言った。健一も娘が昔からしっかり自分の考えを持っていると知っているので、それ以上は言わず、肩を軽く叩いて美智子と一緒に散歩に出かけた。
皿を食器棚に片付けた後、明美は寝室に戻り、スマホを手に取ると、新しい友達申請が届いているのに気づいた。
悠斗からだった。
彼女は無視して窓を閉めようと外を見ると、マンションの下にまだ二人が立っているのが目に入った。
遠すぎて表情までは分からない。
でも、帰宅時の出来事を思い出すと、せっかくのいい気分が少し曇ってしまった。
そして、彼女はカーテンを