「!?」
今度は大介が驚いた顔をした。
「今回の件に関して、悠治の考えが浅はかだったの。あなたに嫌がらせをするのが一心で、危うく大きなミスを犯したところだった」
「大きいなミスって?」
「もう大体想像がついたのでしょ?」
「……」
大介は沈黙した。
悠子はそっと体を傾けて、前の座席の間から頭を出して、大介の横顔をじっと見つめた。
「大介はやさしいね」
「そんな目で見つめないでくれ、気持ち悪い」
「もったいないわ。今の横顔、ちょっとかっこよかったのに!」
「何処かのインチキ引きこもりと違って、オレは何時だってかっこいい」
いきなりほめられて、大介は逆に対応に困った。
「でも女子が苦手だよね、せっかくの男前なのになかなか彼女ができないでしょ。雪枝に頼んでおしゃれな子を紹介してもらおう」
「余計なお世話だ。それよりあのエロ小説、何時削除してもらえる?」
「はっくしょん!ああ、寒い、暖房をもっと上げて。ちょっと寝るわ……うちについたら起こして」
「とぼけるな!真面目に返事しろ!」
悠子はまたとぼけて逃げたけど、いつものことだし、大介はそれ以上追い詰めなかった。言われた通りに暖房の温度をあげて、悠治を家まで送った。
03
翌日、悠治から修正されたシナリオが届いた。
誤魔化す程度の修正ではなく、全体的に伏線や、違和感のあるところも一緒に直されたしっかりしたものだった。
憎ませるために、給料ゼロとか言い放ったが、こんなできのいいものをもらった以上、何も返さないと、大介の人間としての良心が許さない。
「お兄ちゃんが好きなもの?」
返すものに悩んでいたので、雪枝に電話をした。
「パジャマかな……一番よく着るものですから、20着も持ってるらしい」
(それは、単に洗濯が面倒くさがっているじゃない?)<