「それじゃ、先に姉さんに一杯お敬ししますね」
綾子は、恥ずかしそうに頬を赤らめながら、両手でグラスを持ち、真剣な表情で立ち上がった。「姉さん、早く昇進して、すべてがうまくいきますように。進む道がいつも順調でありますように」
「あら、すごく嬉しい言葉ね!ほら、姉さんにチュ〜させて〜!」
桜子はニコニコしながらグラスを一気に飲み干し、綾子の頬に軽く口ずけした。
綾子は照れくさそうに顔を下げ、頬がますます赤くなった。
「さあさあ、みんなで桜子に乾杯しよう!桜子が望むことすべてが叶いますように!乾杯!」
兄たちがグラスを高く上げ、みんなほろ酔い気分で、あたたかい空気が部屋に満ちた。
桜子はグラスが軽くぶつかる音を聞きながら、兄たちの真摯な眼差しを感じ、胸がじんわり温かくなり、涙がこぼれそうになった。
......
その後、食事会は温かな雰囲気の中で終わった。
桜子は彬としっかり抱き合い、楽しい時間があっという間に過ぎ、別れ際には二人とも目を赤くして別れを惜しんだ。
実は、彬が所属する軍隊は黎城にあり、そんなに遠くはない。
ただし、彼は重要な役職に就いているため、何ヶ月も帰れないことが多く、だからこそ家族との時間が減ってしまっているのだ。
「彬兄、愛子さんの誕生日には帰って来るの?」
桜子は優しく彬の軍服の肩を撫で、手で軍帽を整えて彼に渡しながら尋ねた。
「ごめん、桜子」
彬は申し訳なさそうにため息をつき、桜子の頬を優しくつまんでから、綾子に向かって言った。「ごめん、綾子、愛子さんによろしく伝えてくれ」
「大丈夫、大丈夫だよ彬兄!わかっているよ、忙しいのは知ってるから、仕事が一番大事だよ!」
綾子は慌てて手を振り、謝罪を受け入れる気配を見せなかった。
「でも、愛子さんにはちゃんとプレゼントを用意しているから、桜子、その時に渡してくれる?」
「分かった、彬兄」
ホテルの地下駐車場では、黎城からわざわざ来た彬の防弾車がすでに待機していた。
副官が慎重に車のドアを開け、彬は家族と別れた後、車に乗り込む。車窓を下げながら、心配そうに桜子に言った。
「もうあの隼人って奴のことは放っておけよ、わかったか?」
「うんうん!わかったよ彬兄!バイバイ〜」
桜子はきらきらとした瞳で、彬の前でおとなしく振舞った。綾子のように本当の優しさを持つわけで