翌日の土曜日、私は退院してから初めての受診予約をしていて、ほぼ二週間ぶりに病院を訪れた。会社の行き帰りと同様、夏芽さんは私を一人にしたがらない。休日でも、自分は本社に出向く用があるのに、わざわざ私を病院まで送り届けてくれた。だけど、診察の間は周りにたくさんの患者さんがいるし、私を一人にしても問題ないと判断したのだろう。『終わる頃、迎えに来る』と、オフィスに出向いていった。ここは、都内でも有数の大病院だ。受付後、いろいろな検査を受けて、診察はその結果が出るのを待ってからだし、予約してあっても待ち時間は長くなる。結局、精算を終えるまでで、トータル二時間かかった。でも、夏芽さんは『三時間くらいだろ』と、もっと長くかかると読んでいたから、きっとまだ来ない。相変わらずうちの会社でリモートワークを続けているから、本来のオフィスでやるべきこともたくさんあるだろう。『早く済んだら連絡しろ』と言われたけど、仕事の邪魔をしたくない。連絡はせず、彼が来るのを待つことにした。二月も終わりが近い。早春のこの季節、今日は少し暖かくて、春めいている。外来棟に面した中庭には、うららかな柔らかい陽が射していて、とても気持ちがよさそうだ。時間を持て余した私は、外に出てみた。緑溢れる中庭は、入院患者さんにとって憩いの場所だ。時折強く吹きつける風は、ちょっと冷たい。それでも、病衣の上から厚手のコートを羽織り、面会客と散歩したり、ベンチに腰かけてのんびりする患者さんも多い。私の入院は一週間だったし、精密検査が多かったから、のんびり中庭に出たことはなかったけど、なかなか心地いい。特に今は、夏芽さんがいない。彼と過ごす時間は、今となってはとても幸せ。でも一緒にいると終始ドキドキしてしまうし、一人になって開放感を覚えてしまう自分を否めない。「んーっ……」思いきり両腕を空に向かって突き上げ、胸を広げて深呼吸をした。東京都心の病院だけど、中庭に溢れる緑のおかげか、空気も清々しく感じる。考えてみれば、通勤で歩いたり電車に乗ったりしない分、ここ二週間さすがにちょっと運動不足だ。意識して身体を動かさないと、なまってしまう。私は腕時計に目を落とし、時間を確認した。ここから鏑木ホールディングスの本社ビルまでは、電車でほんの一駅区間。歩いても二十分ほどの距離だ。――もしかしたら、怒られるかもしれないけど。入院中の病院や、オフィ