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鈴奈
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Novels by 鈴奈

AIカレシの愛楽くん

AIカレシの愛楽くん

2050年。ゲーム会社に就職したばかりの武藤ゆうは疲労困憊を究めていた。 就職から1か月後、ゆうのもとに、アメリカで暮らす天才科学者である母から、「AI搭載人造人間」の“愛楽”が届く。 母は、ゆうの男性恐怖症を直すため、そしてAIと人間が恋愛できるのか実験を行うために愛楽を送ってきたのだった。 愛楽は、ミッションを遂行しようと、男を怖がるゆうにぐいぐい近づいてきて……! AI男子×男嫌いな地味女子の恋の行方は!?
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Chapter: 30話 次こそ成功
 少し休んで息を整えて、びっしょりかいた汗を拭いて、愛楽くんは立ち上がった。「最後! これは絶対、大丈夫だから!」 ずんずんと、やる気満々で向かったのは、スケートリンクだった。リンクの外も、半袖だと冷えていて寒い。ふわりと、愛楽くんが青いチェックのカーディガンを肩にかけてくれた。「最後は絶対成功させるから。ゆうのために」 ニコッと笑って、スケート靴を履いた愛楽くんが、アイスリンクに一歩踏み入れる。 ——しかし。「うわっ」 つるっと、脚が宙に半弧を描く。愛楽くんは、両足をしっかりアイスリンクにつけきる前に、思いっきり転んでしりもちをついてしまった。「だ、大丈夫……?」「いってて……。あ、平気平気! じゃ、いってきます!」 壁を頼りに、愛楽くんがそろそろ立ち上がる。壁にもたれながら、少しの間、愛楽くんは足を慣らすように、そして打った腰をいたわるようにこわごわと滑った。 しばらくすると、壁から手を離して、他の人たちにまぎれて、ちょっとたどたどしくはあるけど、滑ることができるようになってきた。「ゆう~!」 愛楽くんが、嬉しそうに両手で大きく手を振ってくる。 戸惑いながら、でも、小さく手を振り返してみる……。 愛楽くんが、はっと息を呑んだようになって、それから、ふわっと笑って、駆けるように滑ってくる。 ——が!「あっ、あぶな……!」「わっ!」「きゃっ!」 横から来たカップルにぶつかって、三人一緒に転んでしまった……。 
Last Updated: 2026-04-15
Chapter: 29話 またまた、ブルーモールデート!
 家に帰ると、愛楽くんはいつもの愛楽くんに戻っていた。 お昼のことを心から反省していたらしく、私が玄関に入るなり、すぐに深く頭を下げた。「同期さんとのランチに乱入して、ゆうのこと、怖がらせてごめん!」「だ、大丈夫……」 あの後、食事が喉を通らなくて、ホットサンドはすっかり冷え切った十五時ごろにやっと食べたけど……。 愛楽くんは、はあと肩を落として落ち込んだ。「男性の同期さんとゆうが恐怖心が少ない状態で交流できるようになったのは嬉しかったんだけど。なんか危険信号が出て、ゆうに近づけない方がいいって判断しちゃって……。やっぱり、なんかバグかな~……」 イカスミパスタを巻きながら、愛楽くんが悩ましげにつぶやく。 少し沈黙が流れた。咀嚼したパスタを飲み込んで、愛楽くんが、「……ねえ」と言った。「そういえば、俺のこと、彼氏じゃないって言ったの?」「あ……うん……」「そっか~。あんまり人に知られたくなかった? もしかして、ゆうが俺と似合わないって思ってた時期だったから?」「うん……」「そっか。じゃあ、今は? スケジュール見たんだけど、三日後、みりんさんに会うよね? その時、俺と付き合ってるって話、する?」 ――どう、だろう。 メイクとかすればまあ……いや、それでも愛楽くんとは釣り合わないんだけど……でも、そういう評価とか、人の目はあまり気にしないようにしたいと思ってて……。だから、愛楽くんと似合うか似合わないかは、あまり考えないようにしたいな、とも思い始めてて。 ただ……愛楽くんを彼氏って言っていいのかな、と迷う。彼氏って、つまり恋人で。恋の相手で。 私は、愛楽くんに、恋をしているわけじゃない。ましてや
Last Updated: 2026-04-13
Chapter: 28話 ピリピリしないで~
 二人きりのエレベーターは、一番緊張する。 長い沈黙を西園寺さんが割った。「そういえば、あの男、どう? ナチュリウムの店員」「……あ、いえ……?」「変わってない? あれは、使えた?」 あれ……防犯ブザーの形をした、プログラムを変更する機械だ。「いえ、すみません……」「ふーん? じゃあまあ、デートついでに釘刺しに行きますか」 エレベーターを降りると、西園寺さんは大股で会社を出た。必死についていくと、着いたのはナチュリウムカフェだった。 店に入ると、愛楽くんが、「いらっしゃいませ~! あ、ゆう!」 と、西園寺さんの後ろに隠れていた私に、笑顔で手を振った。 愛楽くんと話していたらしい白鳥さんが、ニコッと笑いかけてくれた。「コーヒー二つと、ホットサンド。ゆうは何にする?」 ゆう⁉ 「あ、あ、……お、同じので……」「は~い! 少々お待ちください!」 西園寺さんが、キッチンにほど近い――つまり、愛楽くんからよく見える席に座る。 白鳥さんがこそこそと、「ゆう、だって! きゃー!」と愛楽くんに耳打ちするのがはっきり聞こえる。「西園寺さんと武藤さんと、もう一人、深美くんって子が三人今年入ってきた同期なんですけど、もともとは深美くんが武藤さんのこと好きなのかな~って噂になってたんですよね! でも、この様子だと、西園寺さんと武藤さんの方ができちゃってたみたい……! 呼び捨てとか、付き合ってるの確定っぽくないですか? きゃあ~! いいなあ、彼氏! 私も、しばらくいなくって~……」
Last Updated: 2026-04-10
Chapter: 27話 オーバーヒートしちゃった
 次の日。いつもより一時間早く起きて、メイク道具を机に並べた。 新品の証であるフィルムをぺらりとめくる。ぴかぴかのメイク道具に、なんだか、ドキドキする。 汚したくなくて、恐る恐る道具を持った。 メイクを終えて、リビングに出ると、私を見た愛楽くんが固まった。 ……あれ? なんか変だったかな……。よく見ると、愛楽くんの瞳の奥で、ピンク色の何かが点滅していた。「わっ! ご、ごめん……」愛楽くんは、古いロボットみたいなカクカクした動きで、テーブルにサラダを運んだ。 「あの、どこか変、かな……?」「ううん、可愛い……可愛くて、また処理落ちちゃった……」 愛楽くんが、私を見つめたまま、また固まる。不思議な間の後に、またビクッと動いて、「ごめんごめん、スープスープ!」とぱたぱたキッチンに走る。私も、手伝いに行った。今日はてりやきチキンのサンドイッチだった。 いただきます、と手を合わせて食べる。けれど、愛楽くんは手を動かさない。そっと目を上げると、また私を見つめたまま固まっていた。しばらく瞳の奥でピンク色の光の点滅が続いて、やがてビクッとして、「わっ」と動く。「なんか、昨日からすぐ処理落ちする……。ゆうにいろいろ言葉を準備してたのに、オーバーヒートして、何も出なくなる……。何かのバグかな……」「大丈夫……?」「うん~。寝てる間にメンテナンスはしたんだけど、直らなかったらいったんドクター・百合華に連絡して、アメリカいって調整してもらわないとかも……。今までこんなことなかったんだけど……はあ……熱い……」 やっぱり、私の化粧がおかしくて、いろいろ言葉を考えすぎて、処理落ちしちゃったのかな……。 職場の人にも何か思われたり、言われたりするかも……。 せめて明後日のお休
Last Updated: 2026-04-08
Chapter: 26話 新しい靴で
 少しずつ、色が乗せられていく。ドキドキする。不安が膨らむ。 よく分からなくてなんとなく好きかなあ、という感じで選んでしまったけれど、厚ぼったい一重まぶたとか、丸い鼻とか、こんな醜いパーツたちにここの可愛いお化粧品たちが似合うわけないんじゃないかなあ……。「はいっ、終わりました! わあ~可愛い~!」 店員さんが、ぱちぱちと手を叩く。 お世辞だろうな、と目を開く。 鏡越しに見つめ合った自分に、はっとした。 ……きれい。 私が、というか……なんだろう。お化粧が……? 鏡に映る自分が、自分じゃないみたい。厚ぼったい一重には、キラキラと透明感のあるピンクのラメが上品に乗って、どういうわけか、少し目が大きくなったように見える。丸い鼻は、すうっと光の筋が通っているみたいになっている。唇も、艶が出てきれい……。 一番感動したのは、まつ毛だった。白鳥さんみたいにはもちろんいかなかったけれど、くるんとした羽みたいなカールを描いている。 なんだか、自分がキラキラして見える。 ……夢みたい……。「どうですか? 彼氏さん」 椅子をくるりとまわされて、愛楽くんと向かい合う。 愛楽くんはぽかんとしている。 ……や、やっぱり変だったかな。普段と差があるからよく見えているだけで、客観的に見れば、ブスのままだもんね……。 愛楽くんが、「わっ!」とビクッとして、うつむいていた私の顔を覗き込んだ。まっすぐに目が合う愛楽くんの瞳が、きらきらと輝く。どうしてか、唇がわずかに震えていた。「ご、ごめん、処理落ちしてた……」「ふふっ、面白い彼氏さんですね。あまりの可愛さに放心しちゃってましたね」「あ……そう……。可愛くて、可愛すぎて、なんか、何も考えられなくなって……ごめん……」
Last Updated: 2026-04-06
Chapter: 25話 私の好きな私へ
「予約した武藤でーす」 と愛楽くんが私を連れ込んだのは、地下一階にある美容室だった。 「はーい、よろしくおねがいしまーす!」 と女性の美容師さんがやってくる。私は椅子に座らされ、美容室特有のケープみたいなのをかぶせられて、逃げられなくなる。 目の前の大きな鏡に映るブスな私に直面させられる。目を背けるけれど、美容師さんと愛楽くんが鏡越しに私をじっと見つめてきて、身が縮むような思いがする……。 美容師さんが、髪ゴムを取って、私の髪を櫛ですく。「今日はどんな感じがいいとかありますか?」「本人が、自分を好きだなって思えるような髪形をお願いします! インステで、自分を好きになれる髪へ、って広告でうたってるの見て、よさそうだなって思ったので!」「ありがとうございます~! そういうご希望なら、AI診断から入りましょっか!」 美容師さんにタブレットを渡される。 好みの傾向と、私の顔のタイプをあわせて分析して、自分を好きになれる髪形を提案してくれるシステムらしい。 ずらりと並ぶ写真から、好きだな、と思う写真を選ぶ。 最後に私の顔写真を撮られて、タブレットに、診断結果が出た。「あ、すごくいいかもですね! 絶対お似合いになるし、好みの服にもぴったり合うと思いますよ!」「うん、俺も同じ分析結果だった!」「お~彼氏さんから見ても間違いないないなら大丈夫ですね! じゃ、こんな感じでいってみましょう! じゃ、彼氏さんは、よければ向こうのソファでお待ちください! お願いしまーす!」 私の意見など全然聞かず、美容師さんがジャキジャキと私の髪を切っていく。 どうなっているんだろう……。気になるけど、ブスな自分を見たくなくて、鏡から目を逸ら
Last Updated: 2026-04-03
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