Meeting Mr. Cuddles

Meeting Mr. Cuddles

last updateDernière mise à jour : 2021-09-14
Par:  tamachan33En cours
Langue: English
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Synopsis

On the evening of May 17, 20XX, I died. I decided to tell you this story because I thought it was a thing of beauty, albeit filled with agony and grief. No, this is not my story. This is the story of the husband of my best friend, Mary, and how he tried to play God by inventing a time machine to try and save her from death. Listen carefully for this will be the last one I will tell.

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Chapitre 1

Prologue

「佐藤先生、海外での手術日程を手配していただけますか?」

水島結衣(みずしま ゆい)はひとり暗がりに座り、窓の外を見やりながら静かに言った。

「わかりました。二週間後ならちょうど時間が取れます。もし急ぎでなければ一か月後でも……」

結衣はそこで彼の言葉を遮る。

「いいえ、二週間後でお願いします」

電話の向こうで、医師の佐藤直樹(さとう なおき)は一瞬、言葉を失った。彼には腑に落ちない。結衣が乳がんと診断されて以来、彼は幾度となく海外での専門治療を勧めてきたのに、結衣は、篠原晃(しのはら あきら)のそばにいたい一心で手術を拒み、薬で抑えるだけにしてきたのだ。

「佐藤先生、このことは晃には言わないでください」

直樹はすぐに応じた。

「わかっています。篠原さんに心配をかけたくないんですよね。手術が終われば、すぐ帰国して静養できますよ」

結衣はそれ以上何も言わず、手術の細かな日程を確認すると電話を切った。

月明かりに目を慣らし、部屋をぐるりと見渡す。ここに自分の物はほとんどない。二週間あれば、この家に刻んだ五年分の痕跡だって消せる。

もうすぐ去るのだと思うと、結衣の胸は大きな手で締めつけられたように痛み、息が詰まった。

――カチッ、と音を立てて、酔いの覚めた晃がリビングの灯りをつけた。

晃はくらむこめかみを押さえながら結衣に気づき、わずかに眉をひそめて、何気ない調子で問いかけた。

「どうして灯りもつけずにここにいるんだ?」

結衣は、五年間の夜ごとに何度も指先でなぞってきたその顔を見つめ、胸の奥がふと揺らいだ。もしかしたら、今度こそ彼は気にかけてくれるのかもしれない。

唇がかすかに動いた。胸いっぱいの期待を込めて結衣は声を発した。

「晃、この前、私は病院で検査を受けて……」

その言葉は、唐突な着信音にかき消された。晃がスマホの画面をのぞき込んだ途端、さっきまでの険しい表情が一気にやわらぐ。

「莉子、どうした?」

「お兄ちゃん、家の電気が急に消えちゃって……どうしたらいいの、こわいよ、うう……」

甘ったるい声が受話口から流れてくる。その声が月本莉子(つきもと りこ)のものだと気づいた瞬間、結衣の鼓動は激しく跳ね上がった。彼女は晃の表情を食い入るように見つめる。そこに浮かんだ緊張の色を目にしたとたん、さきほど揺らいだ心は再び固く定まった。

晃は養子で、莉子は彼の養父母の実の娘。箱入りで育ち、のちに留学したが、半年前にその両親が亡くなり、弔いのために帰国していた。

「莉子、落ち着いて。すぐ行くから」

晃は二、三言なだめると電話を切り、コートをつかんで玄関へ飛び出そうとした。

結衣が淡々と声をかける。

「待ってるから……戻ってくるよね?」

出ることに気を取られた晃は、いつもと違う声音に気づかなかった。

彼は気のない返事だけを残した。

「うん」

扉が閉まり、部屋はまた静けさに沈む。

結衣は動かず、夜明けまでそのまま座り続けた。空が白み、陽の光が肩に落ちても、彼は戻らなかった。

スマホの画面がふっと明るむ。通知は、優先通知に設定している莉子からだ。

彼女のSNSには、晃が彼女の膝に頭を預けて眠る横顔の写真が上がっていた。添えられた言葉は【神さまのめぐみに感謝。世界には、私を愛してくれる人がまだいる】

間を置かず、今度は晃の返信の通知が届く。

【いつだってそばにいるよ】

結衣は無表情のまま視線を落とし、胸の奥に残っていた最後の未練が音もなく消えていくのを感じた。

彼女は冷静に二人をブロックし、こわばった体を引きずりながら壁際のカレンダーに向かった。出ていく日に、静かに丸をつける。

結衣は心の中で思いめぐらせた。残された二週間で、せめてすべてにけじめをつけてから、この場所を去ろうと。

晃のことは、もう二度と追いかけない。結衣はそう心に決めた。本当に、もう疲れ果ててしまったのだ。
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