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第4話

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勳ははっとして振り向き、その視線も同じようにこわばった。

「菫、どうしたんだ?」

菫はどきりとした。さっきまでバタバタしていたせいで、スーツケースがまだリビングに置いてあることをすっかり忘れていた。

彼女は袖の中でそっと拳を握りしめ、すぐに平然とした顔を作って微笑んだ。「みんなが旅行に行くのを見て、私もどこかへ気晴らしに行きたくなったの。だから先に荷物をまとめておいて、行き先さえ決めればすぐ出発できるように準備してたんだよ」

拓海と椿は、途端に顔を曇らせた。「気晴らしだなんて!静香のそばを離れるなと、あれほど言っただろう!」

「そうよ。もし静香に輸血が必要になった時、あなたがいないと困るでしょう。何のためにあなたを産んだのか、忘れたわけじゃないわよね。早く荷物を片付けなさい。私たちに黙って、どこにも行くんじゃないよ!」

菫の表情に変わった様子がないのを見て、勳はほっと息をついた。「今度どこかへ行きたくなったら、俺たちと一緒に行けばいい。一人じゃ危ないから、わかったか?」

菫は心の中で乾いた笑いを浮かべた。でも、彼女が行こうとしている場所に、彼らには決して手が届かない。

数日後、静香と菫の誕生日がやってきた。

二人は3歳差だが、偶然にも誕生日が同じ日だった。

ただ、これまでの誕生日はいつも、ケーキは一つしか用意されず、ろうそくを立てるのも一回だけだった。

以前の自分は、二人が同じ誕生日だからケーキを二つ買う必要はない、という両親の言葉を信じていた。

でも、後藤家は裕福なのだから、ケーキ一つを惜しむはずがない。

要するに、自分の気持ちなんてどうでもよかったのだ。それに、自分も誕生日だからといって、主役である静香の輝きを少しでも損ないたくなかったのだろう。

誕生パーティーの飾りつけは、いつも通り静香が一番好きなピンク色だった。

ピンクのバラ、ピンクの風船、ピンクのケーキ。

用意されたプレゼントも、すべて静香ただ一人のためのもの。

静香は注目の的となり、一番輝ける場所でみんなからの誕生日祝いを受けていた。

「静香、お誕生日おめでとう!」

静香は笑いながらプレゼントを開けていく。その瞳はきらきらと輝いていて、まぶしいほどだった。

一方、菫は隅っこに立っていて、まるで部外者のようだった。

「あれ、勳さん。プレゼントが二つあるけど、どうして?」

静香は不思議そうにプレゼントの箱を手に取り、勳の目の前で振ってみせた。

みんなが興味津々な視線を向ける中、勳はその箱を菫の前に差し出した。

「これはお前に」

静香の表情は一瞬で変わった。でも、二人のプレゼントを開けると、彼女の顔にはまた笑顔が戻った。

なぜなら、勳が静香に贈ったのは、有名デザイナーが手掛けた世界に一つだけのネックレスで、とてつもない価値があるものだったからだ。

そして、菫へのプレゼントは、そのネックレスのおまけだった。

周りからくすくすと笑い声が漏れた。

「へえ、おまけか。菫にはお似合いじゃない」

そうだ。菫も静香のおまけみたいなもの。だから、このプレゼントは、まさに菫にぴったりだった。

菫は何も言わず、ただみんなが見ていないところで、黙ってプレゼントをゴミ箱に捨てた。

パーティーが終わり、静香は突然思いついたように言った。最近、運転免許を取ったから、今日は自分が運転してみんなを家に送ると。

そう言うと、静香は嬉々として車庫へ向かった。

拓海と椿、それに仁はもちろん彼女の願いを叶えるつもりだ。三人は玄関先で、静香が車を回してくるのを待っていた。

菫は一人、一番後ろに立っていた。彼女はつま先を見つめながら、ここから逃げ出す計画を練っていた。だから、背後から車がだんだん近づいてきていることに、全く気づかなかった。

耳をつんざくようなブレーキ音と共に、菫は一瞬にしてはね飛ばされ、地面に叩きつけられた。

意識が遠のいていく中、彼女の耳には静香のわざとらしい泣き声だけが聞こえ、そして完全に気を失った。

次に目を覚ました時、菫は病院にいた。

アドレナリンが引いた後、痛みがどっと押し寄せてきた。菫はなんとか目を開けると、自分が手術台の上に横たわっていることに気づいた。

体がふわふわと軽くなっていく。まるで自分の体から抜け出して、宙に浮かんでいくかのようだった。

もしかして、もうすぐ死ぬから、こんな感覚になるのだろうか?

すごく痛い。菫は力なく目を閉じ、暗闇が視界を少しずつ覆っていくのに身を任せた。

壁一枚を隔てたドアの外では、医師が後藤家の人たちと話していた。

「ご家族の方、早く決めてください。患者さんは大量に出血しており、輸血しないと命に関わります。現在、病院の血液バンクの在庫が逼迫しています。もう一人の娘さんも血液型が同じなのに、なぜ献血させてあげないのですか?」

後藤家の人たちは、ほとんど声をそろえて断った。

「だめです!静香にはさせられません!」

意識がますます薄れていき、菫の耳に聞こえる声もどんどん小さくなっていった。

完全に意識を失う瞬間に、彼女は勳の声を聞いた。それは、冷たく、そしてきっぱりとした響きで、彼女の鼓膜を突き刺した。

「その通りです。静香にはさせられません」
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