けれど、どう動けばいい?莉子は目を細めた。仕掛けがあまりに露骨なら、すぐ人に気づかれてしまう。その時点で計画は水の泡だ。しばらく考えた末、莉子の脳裏に浮かんだのは──麗子の存在だった。この女の腹の底は真っ黒だが、桃への憎しみもまた本物だ。もし桃がまだ雅彦と縁を切っていないと知れば、絶対に黙ってはいないだろう。これまで何度も利用されてきたのだ。今度くらいは、こちらが彼女を利用してやってもいい。そう決めると、莉子は深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせ、すぐには連絡せず、海が出て行き自分ひとりになったところでようやくメッセージを送った。――「うちの人間が調べたらしいの。雅彦がまた桃を海外から連れ戻したって。それに今は一緒に住んでるみたいよ」信じさせるために、莉子は嫌悪を押し殺して、削除した写真をわざわざ探し出して、添付して送信した。麗子はちょうど海外での用事を終え、寝たきりの正成を放っておくのも体裁が悪いと帰国していた。桃が子どもを奪われ、母親まで植物状態になっていると聞くたび、胸のすくような思いを抱いていたのだ。雅彦の庇護がなければ、桃なんてただのアリ同然。いつでも踏み潰せる存在で、どう痛めつけようと自由自在だった。その頃、麗子は正成のベッドのそばに腰かけ、佐俊の惨めな現状を聞かせていた。正成という男に対して、もはや情など微塵も残っていない。佐和が死んでまだ日も浅いのに、この人間は自分の私生児を正妻の子に格上げしようとし、佐俊という「隠し子」を家に迎え入れようとしたのだ。憎悪以外に抱く感情など残るはずもなかった。だからこそ、表向きは献身的な妻を装いながらも、実際には世話など一切せず、たまに耳にしたくない話を突きつけて精神的に痛めつけているだけだった。「お前のような妬ましい女を妻に迎えるなんて……俺は目が曇っていた。だがな、必ず報いを受けるぞ!」唯一の息子が異国で惨めな生活を送っていると聞かされ、正成は怒りに震えた。だが今は立つことすらできず、口先だけで強がるしかない。「ふん、佐和が死んだ今となっては、私に怖いものなんてないわ」麗子はさらに、佐俊の母親が今自分の手中にあり、死ぬより辛い地獄を味わわせていることを告げてやろうとした――その時、スマホが鳴った。画面を覗き込んだ麗子は、次の瞬間、目を見開く。
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