LOGIN意外な出来事で貞操を失った日向桃は妊娠した。重病に苦しむ母親を救うために、彼女は植物人間となった菊池雅彦と結婚することを余儀なくされた。 意外にも新婚初日、植物状態の夫が奇跡的に目覚めた。 周りの人は日向桃が追い出され、面目を失うのを待っていたが、今まで冷酷だった菊池雅彦が彼女を守り、愛した。 意地悪な者が「雅彦さん、父親になったこと、おめでとうございます」と揶揄した。 しかし、菊池雅彦は妻が抱える、自分にそっくりな小さな子を見つめて、眉を顰めた。「ごめんな。妻も子供も僕のものだ」
View More莉子は、雅彦が事故に遭ったという情報を、菊池家に潜り込ませていた自分の手の者からすでに聞いていた。その知らせを受けた瞬間、誰よりも落ち着かなくなったが、同時に、今の菊池家が混乱していることも理解していた。つまり、今こそ自分が現れるべきチャンスでもある。けれど、無闇に姿を見せれば「なぜそんなことを知っているのか」と怪しまれるだけだ。だから莉子はただじっと、助けを求められるその時を待つしかなかった。どう動くのが最も自然かと思案していた矢先、永名から電話がかかってきた。「莉子、雅彦がちょっとした事故に遭ってね。今、病院で治療を受けているんだ。私はどうしても抜けられない用事があるから、代わりに数日、そばで看てやってくれないか。無理をさせるとまた何が起こるかわからんからな」「えっ、雅彦が……事故に?」莉子は驚いたふりをして声を上げた。「すぐに向かいます。どうかご安心を、命に代えてもお守りしますから」莉子が見張ってくれるなら安心だ、と永名はそう思った。一方で桃のことが頭をよぎる。前に一度会いに行ったとき、散々言い負かされた記憶がまだ新しい。あの時のことを思い出すと、どうにも面目が立たない。まあいい、彼女は今海外にいる。遠いし、莉子が雅彦の世話をしていることなど、そう簡単に知られるはずもない。……電話を切るとすぐ、永名は病院の住所を送ってきた。莉子はすぐさまタクシーを拾い、急いで病院へと向かった。雅彦のケガはそれほど重くなかった。額を打って少し血が出たが、頭をぶつけたため軽い脳震盪を起こしているとのことだった。すでに病室に運ばれ、まだ意識は戻っていない。医者からは、退院後に何か起きないよう、数日間入院して観察する必要があると言われた。「わかりました」莉子はすぐに了承し、足早に病室へ戻った。ベッドに横たわる雅彦を見つめるその瞳には、愛おしさと恋しさが溢れていた。どれほど彼に会いたかったことか。しかし、あの最後のぎくしゃくした別れ以来、彼は一度も会う機会を与えてくれなかったのだ。そのうえ桃が倒れてからは、仕事と彼女の看病で一杯一杯になり、莉子の入り込む余地などまったくなかった。ようやく菊池グループに戻ることはできたけれど、彼と二人きりで話す時間など一度もない。ただ毎日、彼の背中を遠くから眺めては、胸が痛み、そして憎しみが募っ
雅彦は我に返った瞬間、すぐにブレーキを踏み込んで速度を落とそうとした。だがあまりにもスピードが出すぎていて、反応が早くてももうどうにも制御がきかない。車は勢いのままガードレールに激しくぶつかり、衝撃で雅彦の身体は前へと投げ出された。額がハンドルにぶつかる鈍い音が響く。気分が沈んでいたせいでシートベルトも締めていなかった。ぶつかった瞬間、身を守る術などまるでなかった。雅彦の額から鮮やかな血がつっと流れ落ちる。視界がぐらりと揺らぎ、ぼやける。そんな中、またスマホの着信音が鳴り響いた。――桃からだ。何か用でも?電話を取ろうとしたが、意識が急速に遠のいていく。目の前は真っ赤に染まり、何も見えない。最後に伸ばした手は空を切り、そのまま力なく落ちた。雅彦は完全に意識を失った。……桃はベッドの上でスマホを握りしめ、無機質な発信音を聞いていた。「おかけになった電話は応答がありません。しばらくしてからおかけ直しください」桃は眉を寄せた。会社の用事で帰国したと言っていたけれど、そんなに忙しいの?今日は二人の子どもを連れて出かけた。景色はきれいだったし、子どもたちも楽しそうにしていたけれど、やっぱり少し母が恋しくなってしまう。美乃梨がそばにいてくれるから大丈夫だとは思うけれど、それでもやっぱり、少しでも一緒に過ごしたい。だからこの電話も、雅彦に確認するつもりだった。こっちの医者がまだ何か検査を必要としているのかどうかを。もう必要がないなら、数日中に帰国してもいい。これ以上ここで時間を無駄にしたくはなかった。もう一度かけ直してみたが、やはり応答はなかった。きっと会議中か、大事な話でもしているんだろう――そう思って、桃はそれ以上はかけなかった。けれど、どうにも胸騒ぎが収まらない。心臓の鼓動が落ち着かず、まぶたがひくひくと震える。嫌な予感がしてならなかった。……雅彦の車は、長いあいだそのままの場所に止まっていた。もともと人通りも少ない道で、通りかかる車もめったにない。どれほど時間が経っただろうか。ようやく通りかかった車の運転手が、ガードレールにぶつかっている車を見つけ、すぐに警察と救急に連絡した。救急隊が到着すると、雅彦はすぐに病院へ運ばれた。そして同時に、永名にも連絡が入った。雅彦が事故を起こしたと聞いて、永名は
正成は昌代の言葉に打ちのめされるように、顔を伏せた。確かにあの件は自分のせいだった。彼女を傷つけ、佐俊をも巻き込んだ。たとえ麗子がもう死んでしまったとしても、残された傷は消えないし、償うことなどできはしない。「俺がクズなのはわかってる。でももうこうなった以上、自業自得だ。せめてお前だけでも助かってほしい。あいつに虐待されて反抗した結果だって言えば、罪は軽くなる。刑務所に入っても、俺が必ず何とかして出してやる」正成はそう言って、心からの思いを伝えた。こんなふうに落ちぶれたのは自分の因果だ。だが、かつて愛した女には死んでほしくない。それだけが唯一の願いだった。けれど、昌代はまったく動じなかった。たとえ出所できたとしても、何になる?両親はすでに亡くなり、たったひとりの子も悲惨な死を遂げた。生きる意味なんて、もうどこにもない。「いいの。こうなることは覚悟してた。出たところで苦しみが続くだけ……これでいいのよ」そう言い終えると、彼女は口を閉ざした。正成がどんなに説得しても、もう心を動かすことはなかった。やがて正成は喉が焼けるほど言葉を重ねても成果がなく、肩を落として外へ出てきた。その様子を見た雅彦は、結果が駄目だったとすぐに察して、苛立ちを隠せない。胸の奥で、あの女を無理やり引きずり出して、拷問してでも黒幕を吐かせたい衝動が湧き上がった。永名はそんな雅彦の顔色の変化を見て、すぐに悟った。軽く咳払いをして言う。「極端なことを考えるな。見ている人間が多いんだ。もし暴走すれば、お前でも代償は払えんぞ」雅彦は拳を握りしめた。――まさか、ただ待つしかないのか?桃はまだ事の深刻さを知らず、海外で期待を胸に結果を待っていた。けれど、届いた答えは、あまりにも絶望的だった。唯一の手がかりが途絶えたと知ったら、桃や二人の子どもはどんな顔をするだろう。また自分を、何もできない無能だと失望するんじゃないか。そう思うと、胸が締めつけられた。――いや、確かにそうだ。大切な女一人も守れない男なんて、無能以外の何者でもない。雅彦の表情は次々に変わり、やがて無言のまま立ち去った。永名はその背中を見送りながら、深いため息をついた。息子の気持ちは痛いほどわかる。だが、このまま暴走させれば、取り返しのつかないことになる。警察を出た雅彦は、車
永名が正成の訴えを聞いて、初めて気づいた。自分が長男に目を向けていなかった間に、麗子がこれほどまでの悪事を働いていたのだと。麗子は病床にある正成を日常的に罵り、暴力を振るっていただけでなく、彼の周囲に腹心をつけて監視させ、永名のもとに助けを求めることもできないようにしていた。正成は身体が不自由のため、抵抗する力もなかった。ただ、黙って耐えるしかなかったのだ。彼は袖をまくり、永名に見せた。殴られてできた傷跡が痛々しく並んでいる。それを見た永名の中で、麗子に対するわずかな同情の気持ちは薄れ、代わりに正成を長年放っておいたことへの罪悪感が込み上げてきた。長男はすでに身体を壊しているというのに、自分はろくに気にもかけず、むしろ彼を苦しませる結果になっていた――父親として、あまりに失格だった。もしかすると、自分は初めからずっと、父親としての責任を果たせていなかったのかもしれない。二人の息子が互いに争ってきたことも、自分に責任がないとは言えないのだ。「それで……お前はどうしたいと思っている?」永名は少し間を置いて、正成の意見を聞こうとした。なにしろ、捕まった相手はかつて正成の愛人でもあった。もしかすると、まだ情が残っているかもしれない。「……一度、彼女に会わせてほしい」正成は深く息を吐いた。彼と佐俊の母との関係は、もともと報われないものだった。家では麗子に「無能だ」と罵られ続け、居場所を失っていた彼は、家そのものから逃げ出したい気持ちを抱えていた。そんなとき、佐俊の母と出会った。彼女は麗子とは正反対で、こぢんまりとした美しさと優しい物腰を持ち、彼に「男としての誇り」を思い出させてくれた。正成は既婚者であることを隠し、彼女を追いかけた。やがて彼女は妊娠し、正成は一度は麗子と離婚するつもりだった。だが、麗子はそれを知ると彼を脅した――離婚などしたら、永名にすべてをばらすと。菊池家の後継争いのために正成が過去に犯した「汚れ仕事」まで。弱みを握られた正成は身動きが取れず、事実を佐俊の母にも隠したまま関係を続けていた。だが結局、麗子が人を使ってこのことを言いふらし、すべてが世間に知られてしまった。逃げるように、佐俊の母は海外へ発った。それきり二度と戻ることはなかった。――結局、すべては自分のせいだ。彼女を裏切り、傷つけた。やっと
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