幼い頃の紗雪は、成績がとても優秀で、そのことは皆が目にして知っていた。しかも、彼女は美月に気に入られようと努めていたが、美月は何の反応も示さなかった。そのことを思い返すと、外側で見ている紗雪も心が疲れてしまう。画面の中に飛び込み、「無理に美月に取り入る必要はない、自分の人生をちゃんと生きることが一番大事なんだよ」と伝えたくなるほどだ。しかし、そんなことはすべて無駄だった。空腹で放置されず、あるいは狂人扱いされて捕らえられないだけでも、紗雪はもう十分に満たされ、感謝していた。その後の出来事についても、紗雪は少しずつ気持ちを整理していった。ゆっくりと歩を進めながらも、やはり何かがおかしいと気づく。美月はいつも彼女たちのそばにいたが、それでも緒莉への態度は相変わらず優しく、変わることがなかった。緒莉も美しく成長していた。この頃になると、美月のあからさまな差別は目立たなくなっていた。父親の庇護を失った幼い紗雪は、この家で自分の存在感を極力消そうと努めるようになる。なぜなら、無事に暮らしていくためには二川家の庇護が必要だと分かっていた。そして今、二川家で最も発言力を持つのは美月だった。彼女を怒らせず、問題を起こさないこと――それを有佑の死後、紗雪は痛いほど理解していた。だからこそ、今のように人の顔色を読むことができるようになったのだ。一方の緒莉については、多くの場面を見て、紗雪は「緒莉は二人の関係について知らなかったのではないか」と思うようになった。この時点では、有佑が亡くなったばかりで、彼女はまだ何も知らない状態だったのだ。紗雪はどうしても気になった。では、緒莉はいつ真実を知ったのだろう?それ以前、なぜ全く気づかなかったのか?疑問は尽きないが、時の流れは止まらない。立ち止まってはいられない。たとえ気づいたとしても、それが分かるのはもっと先のことだ。紗雪は一つ一つの出来事を丹念に見ていった。そうして初めて、自分が多くのことを見落としていたこと、そして外からの声を聞き逃していたことに気づいた。美月も決して楽をしていたわけではない。かつてはずっと会社のオフィスに寝泊まりしていたし、初期には株主たちの家に品を届けて回った。そうでなければ、あの会議もあれほど順調には進ま
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