4「……律……!」 そこにいたのは恋焦がれる彼で、ドクンと大きく心臓が揺れ動く。 見たところ、今ここには律と私しかいない。ふたりきりだ。 バクバクと鳴る心臓の音が聞こえそうなくらいの静けさの中、私を見た彼も驚いたように目を開いた。しかし、すぐに柔らかな笑みを浮かべる。「あぁ、君はこの間の……小夜ちゃん、だっけ」 ぎゅ、と胸が締め付けられる。 やっぱり他人行儀であることの悲しさと、ふたりで話せることの嬉しさが混ざって変な感じだ。 複雑な顔をして固まったままでいると、「どうしたの?」と声をかけられた。一応、普通にしていなきゃ。平常心、平常心……。「あ、えっと……体育で足捻っちゃって。先生は?」「会議があるからって、さっき行っちゃったよ。でも、手当てくらいしていっていいんじゃない」「そ、そうだよね」 うわ、絶対私の笑顔ぎこちなくなってる……。無理だよ、何事もなかったように平然と接することなんてできっこない。 ……いや、ちょっと待って。何事もなかったようにする必要なんてないよね、よく考えてみれば。 律に合わせなきゃってなんとなく思っていたけれど、そんなことしなくていいじゃない。あの頃の想いはまだ生き続けているんだから。 私は私のままでいいんだ。律のことを好きな、私のまま。 そう思ったらなんだか肩の力が抜けて、自然と動き出せるし、言葉も出てくる。「……律はなにしてるの?」 湿布を探しながら、呼び方もあの頃のまま変えずに言うと、彼は特に気にした様子もなく笑みを向ける。「ちょっと用事あって、来たついでにのんびりしてただけ。俺、保健委員なんだよね」「そうなの!?」 委員会は強制とかいうわけじゃないし、まだ転入したばかりの律が入っているとは思わなかった。しかも保健委員を選ぶなんて、なんだか意外。 目を丸くする私に、彼は「真面目だろ」と言って口角を上げる。「先生俺に甘いから、こうやって好きなだけ居させてくれるし、ベッドも使いたい放題」 そう言っておもむろに腰を上げた律は、なぜか私に近づいてくる。 ドキッとして硬直すると、彼はどこか色っぽい表情で、とんでもないことを囁いた。「……一緒に寝てく?」 な、ななななに言ってんのっ!? ギョッとしつつ、一瞬で顔を真っ赤に染める私。冗談だとわかっているのに動揺してしまう。「っ……遠慮します!」 口をパクパクさせた後、なんとか声を出してバッと顔を背け
Terakhir Diperbarui : 2025-04-21 Baca selengkapnya