そこから話題は、自然と咲月という人物へ移っていった。 琴乃は一度呼吸を整えるように目を伏せ、それから二人を見回した。 「アタシの見解を共有するわね。美琴と悠斗君の話にあった、悠斗君の血に咲月様の血筋が流れているって説――アタシは、かなり的を射てると思う」 悠斗は黙ってその先を待った。琴乃の声には、思いつきを口にする軽さではなく、いくつかの断片を自分の中で並べ終えた者の重みがあった。 「理由としては、悠斗君も美琴から聞いてると思うけど、アタシたちの故郷――蛇琴村に、咲月様の情報がまるごと残っていないのよ」 「まるごと……」 思わず悠斗が呟くと、琴乃は小さく頷いた。 「そう。残っているのは名前だけ。彼女が何をして、何を成し遂げたのか、それが一切わからないの。琴音様の妹という立場にありながら、ここまで綺麗に空白になってるのは……さすがに、何か意図を感じるわ」 「蛇琴村にはね、『年代記』が残ってるのよ。大まかな歴史はちゃんと辿れる。飢饉も、祭事も、巫女が何をして村を守ったかも――琴音様のことなんて、驚くほど細かいくらいよ」 部屋の空気が少しずつ沈んでいく。 歴史は辿れる上で、名前だけが残っている。 その不自然さは、むしろ何かを隠していると語っているようなものだった。存在しなかったのではない。存在していたはずなのに、そこへ至る道筋だけが、誰かの手で丁寧に削り取られている。 「彼女は何者だったのか。どうして彼女だけ、空白の中に埋もれてるのか……」 琴乃の声は静かだったが、その問いには長く引っかかり続けてきた重さが滲んでいた。 「以前、美琴とも話していたんです」 悠斗は記憶を辿るように言った。 「なんだか、意図的に消したんじゃないかって」 「そう。それなのよ」 琴乃はすぐに言葉を継いだ。 「仮に咲月様が蛇琴村を出たんだとしたら、それだけでも本来は文献に残るはずなの。あの人の立場は、それくらい重い。にもかかわらず、何も残っていない」 その言い方には、村の記録のあり方を知っている者らしい確信があった。偶然抜け落ちた、では済まされない。そう断じるだけの実感があるのだろう。 美琴が、膝の上で指先をそっと重ねた。 「私、考えていたんだけど……」 少しためらうような間が落ちる。 「仮に村がそこまでするとしたら、咲
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