全ての用事を済ませて帰宅したのは、深夜だった。銀色の月光がリビングに差し込み、より一層の孤独を感じさせた。私は、疲れ切った体で寝室に戻り、壁に貼られた結婚のために用意した飾りを見て、強い皮肉を感じた。ベッドの上には花びらが散らばっていたが、疲れていたので私はそれらをそのまま床に払いのけ、大きなベッドに倒れ込んだ。携帯を充電していたら、たまたま田中優斗(たなか ゆうと)のインスタの投稿が目に入った。【お前と出会えて良かった。最高の思い出をありがとう】写真には、鈴木紗弥(すずき さや)を抱き寄せ、見つめ合い、今にもキスしそうで、ペアブレスレットをしている二人の姿が写っていた。以前の自分なら、これを見てすぐに優斗を問い詰めていたはずだ。しかし、今はただ携帯の電源を切り、眠りについた。その後の数日間、優斗から連絡はなかったが、インスタには紗弥との写真が頻繁にあげられていた。それは、彼らが抱き合ったり、写真を撮ったり、遊んでいる様子の投稿だった。だけど、私はそれを気にも留めず、弁護士に連絡を取り、離婚の準備を進めた。私と優斗は、高校時代から6年間付き合っていた。最近結婚式を挙げたばかりだが、実は大学卒業後すぐに、勢いで結婚届を出していた。結婚式はしてなかったけど、結納金や結納品もきちんと用意してくれていた。何より、愛情は十分に感じられていた。しかし、今は愛は消え失せ、何も残っていない。半月後、私が家で弁護士が作成した離婚協議書の草案を読んでいた時、玄関からドアが開く音が聞こえた。顔を上げると、優斗が紗弥の手を引いて入ってきた。目が合うと、優斗は慌てた様子で紗弥の手を離し、少しぎこちなく言った。「紗弥は海外に行ったことがないから、連れて行ってやっただけだ。どうせお前も仕事で忙しいんだろうし、だから彼女を連れて......」彼の言葉を遮るように視線を外し、目の前の離婚協議書の草案に意識を集中させ、気のない返事を返した。「うん、わかった」「行っ......」彼の言葉は途中で途切れた。私がパソコンの前に座って無反応なのを見て、彼はさらに怒ったようだった。「なんだよ、紗弥は海外に行ったことがないって言っただろ?だから連れて行ってやったんだ。それに、新婚旅行はいつでも行けるだろ?何を怒
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