ただの面白さじゃない、まさにドラマチックだ。怒りに震えたり、悔しさに歯ぎしりしたり、憤然としたかと思えば不安に沈み、どうにも収まらない感情の渦に呑まれていた。清香は枕を床に叩きつけた。「番組がホテルを手配してくれてたんじゃないの?なんでそこに泊まらず、わざわざアーラン・プライムホテルなんかに!」アーラン・プライムホテルは南城市でも最高級のホテルだ。郁梨は金に困っているわけでもない、当然ながら自分を安宿に押し込めたりはしない。そのときの清香は髪を乱し、化粧もせず、怒りに顔をゆがめていて、不気味なほどだった。芳里は隅で首をすくめていた。清香の気性が荒いとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。優しい女神というイメージとはまるで正反対だ。もともと清香を好きでアシスタントに応募した芳里だったが、頭の中は混乱していた。やはり推しの生活には近づくなと言われるのも当然だ。俊明は芳里に目配せし、いったん外に出るよう合図した。芳里は赦されたように、すぐさま病室の外へ出て待機した。「清香さん、落ち着いてください。ご自分から取り乱してはいけません」「どうやって落ち着けっていうの?今のネットでは、あの二人こそ本当のカップルだって言われてるのよ。じゃあ私は何なの!」俊明は心の中で思った。もともと二人は夫婦だ。本当のカップルでないわけがない。清香こそ、他人の結婚を壊そうとする浮気相手ではないか。彼は清香に現実を直視してほしかった。そうすれば、次にどうすべきかもわかるはずだ。清香は高慢すぎた。自分こそが折原社長の本命で、妻である郁梨の方が浮気相手だと思い込んでいた。このままでは、いずれ自分で自分の首を絞めることになるだろう。「清香さん、ネットの風向きは一瞬で変わります。メリットがあれば必ずデメリットもあります。視点を変えれば、まったく違う局面が見えてくるはずです」清香は俊明の言葉に思わず引き込まれた。「俊明、つまりまだ逆転できるの?」「利用の仕方次第では、不可能ではありません」俊明は業界でも有名なやり手で、かつて清香が若くして女優賞を手にしたのも、彼の手腕によるところが大きかった。清香の激しい怒りはようやく鎮まり、「俊明、何かいい考えがあるの?」と尋ねた。俊明は自信に満ちた笑みを浮かべ、「いくつかのマーケティングアカウント
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