承平は泥酔するほど酒をあおり、翌朝目を覚ますなり、真っ先に今日のニュースを確認した。文太郎が他人の家庭を壊し男の不倫相手に甘んじるという話題は、いまだネットの上位に居座っている。承平はコメント欄を一通り眺めたあと、郁梨に電話をかけた。最初の着信は出なかった。正確に言えば、彼女はわざと切ったのだ。聞こえなかったわけではない、出たくない。それがはっきり伝わる拒絶だった。承平は仕方なく彼女にLINEでメッセージを送り、文太郎のことで連絡したと伝えると、今度は電話に出た。ようやくつながったというのに、承平の胸は少しも軽くならなかった。胸の奥が、ひどく酸っぱくなる。いつから、郁梨と文太郎は、こんなにも近い関係になったのだろう。彼のためなら、郁梨は本当は出たくない電話にも、我慢して出るのか。「郁梨。ちゃんと眠れたか?」承平は、これまでになく慎重に、低姿勢で声をかけた。郁梨は雑談をする気などなかった。眉をひそめ、苛立ちを隠そうともせず言う。「用件があるなら、回りくどいことは言わないで」承平はスマートフォンを握る指をわずかに強めた。「ただお前がちゃんと過ごせているのか、知りたかっただけだ」郁梨は鼻で笑った。「私が大丈夫って言ったら、あなたは信じる?逆に、調子が悪いって言ったら、あなたに何ができるの?」承平は言葉を失った。しばらく沈黙したあと、ようやく低く謝る。「すまない……」「あなたの謝罪なんて要らないわ、承平。文さんの話があるって言ったのは、ただの口実だったのね。これ以上、話す必要はないと思う」郁梨はそのまま電話を切ろうとした。承平は慌てて声を張り上げる。「嘘じゃない!」その切迫した声に、郁梨の指が止まった。電話の向こうは無言のまま本題に入れと促しているようだった。承平は苦笑した。「本当に、もう俺とは一言も話したくないんだな」一度目を伏せてから、続ける。「ニュースを見た。吉沢文太郎の件は、簡単には収まらない。郁梨、離婚を公表してくれ」その言葉に、郁梨は固まった。彼が、そんなことを言い出すなんて。反応を待たず、承平は畳みかける。「文太郎は長年、芸能界の頂点に立ってきた。どれだけ多くの人間に妬まれてきたか、言わなくても分かるだろう。今になって不倫という材料を掴まれた。連中が、ここで手を緩めるはずがない。この火は、彼を
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