ここは一京コーポレーション秘書課。それなりのプロポーションと教養を持ち合わせている人物のみが入社の後に配属される。 私、白鳥清香はもう10年近くこの秘書課のホープと言われる瀬戸蒼にアタックをしているけど、暖簾に腕押し。糠に釘。なんかちっとも相手にされない。入社後10年も経てばすっかりアラサー。 はぁ、やっぱり私レベルじゃ瀬戸さんは相手にならないのかな?もっとこうナイスバディで仕事ができるような人が好みなのかなぁ?考えれば考える程凹むなぁ。「はははっ、白鳥は今日も課長にアタックして玉砕してるのか?」 ムッとして振り返ったけど、上司だった。顔をちゃんとしないと! 彼は九条征一。若くして課長補佐をしている。まぁ、瀬戸さんの方が凄いけど、この人も仕事ができる人だと思う。二人とも仕事ができるのよ。瀬戸さんと九条さんは同期入社だっていうし、所謂‘栄光の世代’みたいな二つ名がついているような感じだったように記憶している。他の課に配属の方でも課長クラスはザラみたいだし。「俺は白鳥ならいつでもウェルカムだけどなぁ」 そんな風に言われると、心が揺らいでしまう。この十年は本当に長かった。 入社して配属が決まって一目ですぐに恋に落ちて、それから猛アタックの日々。そんなのがもう10年近く続いたんだもん。アラサーだし。もう諦めろってことかなぁ?「九条さん、そんなこと女子社員みんなに言ってるんじゃないですか?」「俺は白鳥に本気だよ?ね、俺と付き合ってみない?」 そう言われて、10年アタックを続けたけどダメだったという心がぐらついたのがわかった。「考えさせてください!」 その日は自宅のソファベッドに倒れ込んだ。 疲れてたのもあるけど、九条さんの言葉が頭から離れない。 『俺と付き合ってみない?』 楽な方に流されたらいけないのはわかってるんだけど、…でもこの10年。 そして今の年齢。 同期入社の子が続々と寿退社してたり、同級生から結婚式に招待されることも増えた。「私はこのままでいいのかなぁ?」 その日は疲れていたのか、寝落ちしちゃったみたい。せめて化粧を落としたかった…。 翌日入社をすると、いきなり九条さんから「考えてくれた?」と話しかけられた。 そのとき、いちおうお付き合いをするという返事をした。 まさか、九条さんがあんなことをするとは……
Last Updated : 2025-08-01 Read more