妊娠してから四ヶ月が経ったが、医師である夫が十六回も婚姻届を出しに行く約束をすっぽかした。一回目は、彼がかわいがる看護師が手術中に貧血で倒れたから、私は区役所の前で一日中待ち続けていても来なかった。二回目は、その看護師からの一本の電話で、彼は私を高速道路上に置き去りにして、彼女に生理用品を買いに行った。その後、毎回婚姻届を出しに行こうとするたびに、その看護師には必ず何らかのトラブルが発生する。そして今回は……激しい雨が降りしきっていて、私は全身ずぶ濡れになっている。惨めな姿の私が、病室の中の温かく幸せそうな光景と対照的になっている。高梨奈々(たかなし なな)が病床に横たわり、北条圭(ほうじょう けい)がその傍らに座っている。圭は彼女に「ゆっくり休んで」と安心させる言葉をかけながら、リンゴの皮をむいている。皮は完璧に剥かされている。見事な皮むきの手つきだ。私はふっと、圭と過ごした五年間の日々を思い出す。リンゴが大好きだった私は、皮むきがいつも下手で、何度も指を切ったことがあった。圭に手伝ってほしいと頼んだこともあったが、彼はいつも眉をひそめていた。「面倒なら食べなきゃいいじゃないか。俺の手はメスを握るためのもので、果物ナイフを握るためではない」それ以来、私はリンゴを食べなくなった。圭のその高貴なる手が今、奈々のために果物ナイフを握っている。「先生、ごめんなさい。また先生と奥様の婚姻届の予定を邪魔しちゃって……」奈々は目を赤くして謝った。まるで傷ついた子ウサギのようである。圭の手が一瞬止まり、厳しい口調で言った。「君の体よりも彼女と婚姻届を出すことが大事だと思うか?これからはそんなこと言うな」それを聞いた私はもう立っていられそうにないので、壁に手をついた。過去に十五回も婚姻届の約束をすっぽかされたが、私は一度も圭を責めなかった。しかし、十六回目である今回、圭の言葉がまるでナイフのように私の心臓に刺さった。震えるほど痛かった。話をつけようと病室に入る前に、さらに二人の対話にがっかりした。「あの日は私の誕生日に付き合ってくれなかったら、先生もあんなに飲まなかったのに……奥様がそんな卑劣なことをするとは思わなかった……」「俺が悪い。調子に乗って何杯も飲んで酔っていなかったら、彼
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