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Todos os capítulos de BL小説短編集: Capítulo 101 - Capítulo 110

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不器用なふたり トリプルバトル5

頬に受けた切り傷の痛みと、頭突きからくるふらつきで顔を歪ませる橋本とは対照的な、余裕のありすぎる笹川の様子はムカつくものだった。その余裕から油断しないか、血まなこになって隙を探る。「さぁて、ふらつく足取りで橋本さんがどこまで逃げられるか、追いかけっこしようや」 笹川は握りしめていた両拳を緩めて、手のひらが見えるように開く。「何をするつもりなんだ?」 ノーガードを表す格好に、橋本の眉の間に自然と皺が刻まれた。「握力自慢をしようかと思ってなぁ。日々トレーニングするのにハンドグリッパーを使っているんだが、アメリカの製品ですげぇのがあるんだ。世界で5人しか使いこなすことのできないグリッパーを、最近閉じれるようになったんだぜ」「世界で5人……」 橋本の額から、つーっと汗が滴り落ちた。見えない恐怖で歯がガチガチ鳴りそうになり、奥歯をぐっと噛んでそれをやり過ごす。「何でも、握力が166キロないと使えないグリッパーらしい。ちなみにネット通販で売ってる。三千円もしない商品なんだけど、橋本さんも使ってみるか?」(確か成人男性の握力の平均って、45キロ前後だった記憶がある。コイツぁ化け物か――)「殴られるよりも、アンタに握られたほうが痛そうだ」「背筋と握力は、年を取っても筋力が落ちない部分だからなぁ。毎日鍛えて向上させて、落ちたところのフォローで使わないと」 笹川が瞳をすっと細めた瞬間に腰を落とし、低い体勢のまま突進してきた。まっすぐ自分に向かってくるのを想定して左に逃げたが、笹川の左手がその動きを塞ぐように伸びてくる。「チッ!」 舌打ちしながら素早く後退したのに硬いものが踵に当たる衝撃で、そこに柱があることを察知した。 動きを封じられる前にしゃがみ込み、笹川の脇を抜ける勢いで飛び出す。背後から手が伸びてくる気配を感じつつ、できるだけ距離を取ろうと駆け出した。(ああ、クソっ! 出口が反対側なんてツイてねぇ)「橋本さんってば、足元がふらつきながらも、見た目以上にすばしっこいのな。それだけ足腰を鍛えていたら、さぞかしアッチでもいい感じで使えるんだろ?」 捕まえられなかった両手を見つめて投げつけられる笹川の質問に煩わしさを感じ、眉間に皺を寄せてみせた。「そんなくだらないことを訊ねるくらいなら、さっさとそこを通してくれないか。ハイヤーに乗りっぱなしで疲れ
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不器用なふたり トリプルバトル6

笹川に太刀打ちできないことくらい嫌というほど分かっていたが、手を出さずにはいられなかった。 顔面に向かって、ジャブの連続を浴びせる。しかし打ち込んだすべての拳を易々と受け止められた挙句に、疎かになっていた足元を掬われ、前のめりの状態で派手にすっ転んだ。「陽さんっ!」 しかも土下座に似た形で転んだため、目の前の無様な姿をどんな気持ちで宮本が見ているだろうか。そのことを考えただけで、悔しくてならなかった。(ちくしょう、俺は好きな男すら守れないのか――) 下唇を噛みしめながら起き上がろうとした瞬間に、笹川の足が横っ面を踏みつけて、橋本を動けないように固定する。「やめてください。貴方の言うことを聞きますからこれ以上、陽さんに手を出さないでくださいっ」「やれやれ。相手が追い込まれた状況ゆえに、そろって冷静な判断ができなくなっているなぁ」 笹川は踏みつける足の力を緩めることなく、見下すような冷笑を唇に湛えながら胸の前で両腕を組む。 下から見上げた偉ぶるその態度を目の当たりにして、怒りが沸々と湧き上がってきた。「クソっ、足を退けやがれ」「狂犬の龍己の血を受け継ぐだけあって、威勢よく吠えまくるのなぁ。そういう男は嫌いじゃないぜ、潰し応えがあるから」「狂犬の龍己?」 笹川が告げたセリフに反応した宮本が、疑問に思った言葉を口にした。それにより自分の身の上を、この場で明かさなければならないことを悟り、目の前が真っ暗になる。「あれ? もしかして恋人に言ってないのか? 橋本さんチのこと」「…………」 踏みつける橋本の顔を笹川はわざわざ腰を曲げて覗き込み、いたずら好きの子供がするような、意地悪な笑みを浮かべる。「その顔は言ってないというよりも、言えなかったというべきか。なるほどな」 サッカーボールを軽く蹴飛ばす感じで橋本の頭を解放し、音をたてずに後方に下がる。そんな笹川をやっという感じで、うつ伏せのまま見上げた。 これまでのやり取りで、怒った橋本を牽制するために笹川は距離を取ったのかもしれない。しかしながらいろんなことがショックすぎて反論はおろか、すぐに立ち上がることすらできなかった。「この場で恋人が俺とヤるくらいに、自分チが嫌なことのひとつらしいなぁ。俺の口から言ってもいいけど、橋本さんからゲロするか?」「自分の口から言えたら、とっくの昔に言って
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不器用なふたり トリプルバトル7

「理由なんてそんなの、わざわざヤクザとお知り合いになんて、普通はなりたくないだろ」 笹川の問いかけに宮本は傾げていた首を元に戻し、抱きしめている橋本を見つめる。「たまたま、陽さんのお父さんがヤクザだった。ご兄弟もその道の人だということですよね。俺は別にかまわないです」「雅輝、怖くないのか? 俺が笹川さんと逢うだけで、すげぇ怖がっていただろ」(顔を青くして、思いっきり怯えていたというのに――)「ハッキリ言って怖いです。でも陽さんは陽さんだから。もし何かあったら、一緒に逃げればいいかなって」 逃げると言った宮本を、笹川は眉間に深いしわを作って声をかける。「逃げるだと?」 その顔は何を言ってるんだという疑問と軽蔑が入り混じったものに、橋本の目に映った。「はい。危ないなって思ったら、陽さんを連れて車で逃げます。どんなオンボロ車でも、絶対に逃げきれる自信はありますので」「ぷぷっ、アハハハ!」 宮本としては恋人を守るために、格好よく宣言したのかもしれない。だが詳しい事情を知らない笹川の態度と、熱くなっている宮本の温度差が両極端すぎて、どうしても笑わずにはいられなかった。「雅輝、車がなかったらどうするんだよ?」「むぅ。とにかく車がある場所まで逃げる」 無茶ぶりな提案に、笑いが込みあげてきた。自分の考えを躊躇いなく言ってのけるところが宮本らしくて、愛おしさに拍車がかかる。「それって俺が単独で戦ってる間に、お前が何とかして車を確保したのちに現場に乗りつけて、一緒に逃げるとでも言いたいのか?」「そんな感じになるかもです」「橋本さん、何を寝ぼけたことを言ってるんだ」「俺が好きになった男は、言ったことを必ずやってのけるヤツなんです。だからこそ、全力で頑張らなきゃいけない」 涙が溜まるくらいに笑いすぎた橋本を見ながら、今度は笹川が首を傾げた。「ドラマや映画じゃあるまいし、都合よく段取りができるとは思えないけどなぁ」 他にも何か文句を言い続ける言葉を無視して、意を決したような面持ちの宮本と見つめ合った。「陽さんが俺を守ると言うなら、俺も陽さんを絶対に守ります」「雅輝……」「はいはい、美しい愛情を確かめ合ってるところ悪いが、この状況をどうやって引っくり返すんだぁ?」 口調に合わせて二度手拍子した笹川の声で、躰に絡んでいた両腕を互いに離し、その場
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不器用なふたり トリプルバトルAfter the Love

 無事に帰ることができたお祝いをするために、次の日の仕事終わりに走り屋のリーダーをしている友人が経営している焼き鳥屋へ、橋本と飲みに行った。 残念ながら翌日も仕事がある宮本は、安定のソフトドリンクで乾杯。橋本はわざわざ有給をとったとのことで、中ジョッキの生ビールで乾杯した。 よく食べよく飲みよく喋り――互いの無事を確かめ合うように、楽しいひとときを過ごした。あまりに楽しかったのか、橋本の飲みっぷりがいつも以上だったこともあり、べろんべろんに酔っぱらっていた。 泥酔状態で歩けなくなった橋本を、仕方なく(いや、むしろ喜んで)宮本が背負って自宅に連れ帰ったのだった。「陽さん大丈夫ですか? 気分は悪くないですか?」 前にも似たようなことがあったのを思い出しながら、ベッドに横たえさせて話しかけると、目が覚めたらしい橋本はニッコリ微笑む。「らいじょうぶら。ましゃきが優しくしてくれたかりゃ、全然平気」 呂律が回らない橋本の様子に、嫌な予感のクラクションが宮本の脳内で鳴った。良い予感は大抵外れるのに、悪い予感というものは不思議と当たる確率が高い。「陽さんってば相当酔ってるみたいですから、お水を飲んだほうがいいかもしれませんね……」 それを踏まえて、橋本に注意を促してみた。冷たい水を飲んで、少しでもいいから酔いを覚ましてほしかったのに――。「飲むならお前の(自主規制)が飲みたい」「そっ、それは俺の躰の準備というか、この場の状況がそんな雰囲気じゃないのでごめんなさい!」(ひーっ! 酔っ払った陽さんのエロモードが全開すぎて、対処に困っちゃうよ)「なんで無理なんら。俺のことが嫌いなのか?」「嫌いじゃないです。むしろ大好きですよ」「俺もましゃきが好き、愛してりゅ」 ベッドの上に横たわる橋本が、自分の中に溢れ出る愛情を示すような笑みを浮かべて、嬉しそうに告げた。目尻に浮かぶ笑い皺が、橋本の持つ愛らしさを一層引き立てているように見えるせいで、胸が無償にドキドキする。 そこはかとなく淫靡な雰囲気になりつつあるのを、交わし合った告白でひしひしと感じ、どうにも身の置き場がなくて、宮本は視線を右往左往させるしかなかった。「雅輝、なぁまだ?」「はい?」 落ち着きのない宮本になされた疑問に、彷徨わせていた視線を橋本に注いだ。「俺の股間は、準備OKなんだぞ」「やっ
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不器用なふたり トリプルバトルAfter the Love2

「陽さん?」 自分を突き通して見えない何かを見つめる橋本の面持ちは、得も言われぬ儚さが漂っていて、抱きしめたい衝動に駆られた。「自分の不甲斐なさとか、ましゃきを守ってやれなかったこととか、江藤ちんと何回ヤったのかなんてさ!」「はあ?」 語尾にいくに従い、目力を強めながらきっぱりと言いきった橋本の言葉を聞いて、腑に落ちないという感じに首をかしげた。「陽さんすみません。逃げきったあとに車まで辿り着いて、現場から連れ去ると俺は豪語したのに、それができなかった無念があるので、冒頭と真ん中の意味については理解したのですが、最後のモノだけ、どうしても意味が分かりません」 疑問に感じたことを、自分なりに分かりやすいようにまとめて告げた途端に、橋本は勢いよく起き上がり、ベッドの上にあぐらをかいた。「何で分かんないんら、ましゃき」 地の底から響くような低くて挑みかかる声に、ひゅっと躰が竦んでしまった。まるで、地獄の番人に声をかけられた気分に陥った。「何で分からないんだと聞かれても……」「ノンケだったお前を江藤ちんはたぶらかし、こっちの道に引きずり込んだんだよな?」「へっ!? 俺って、たぶらかされたの?」「ましゃきのフェラがうまいのも、江藤ちんのピーを何度もしゃぶったからなんだろ!」「陽さん?」 橋本の言葉に反論したいのに、今は何を言っても無駄な気がした。泥酔状態の思考に、まともな判断力があるとは思えない。もしかして、わけの分からない今だから――。(――酔っぱらっているからこそ、陽さんは普段は言えないことを、こうして俺にぶつけているのかもしれない) 内なる腹立たしさを表すような荒っぽい口調なのに、表情はどことなく悲しげな感じに宮本の目に映った。「……ましゃきに、早く出逢いたかった」 ベッドの脇にしゃがみ、膝の上に置いてる両手を固く握りしめた橋本に近づいて、無言のまま左手を掴んで、優しく両手で包み込む。 いろんな感情がない混ぜになってるせいか、橋本の左手はとても冷たかった。それをあたためるように撫でさすり、視線を合わせた。 それが合図になったように、掠れた声で橋本が口火を切る。「江藤ちんよりも先にましゃきと出逢って、恋に落ちたかった」「はい……」(陽さん、こんなふうに思っていたなんて。江藤ちんにヤキモチ妬きすぎだって言ったら、贅沢を言うなっ
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不器用なふたり トリプルバトルAfter the Love3

*** 寝返りをした瞬間に、引き攣るような腰痛でぱっと目が覚めた。痛みはそれだけじゃなく、二日酔いによるものと思われる頭痛までついている有様に、飲みすぎたことを心底後悔する。 橋本が目を開けると室内はすでに明るくて、カーテンの隙間から光が差し込んできていた。眉根を寄せて、眼球に飛び込んできた眩しさをやり過ごしてみる。「い、ま、何時だ?」 痛む腰に手を当てながら起き上がり、壁にかかってる時計を見やる。時刻は午前10時23分だった。 今日が仕事の宮本の姿は当然なく、主のいない部屋の中にいる橋本を、本棚に置かれた美少女フィギュア数人が微笑みながら見下ろしていた。 自分に向かって媚びる感じで笑顔を見せる彼女たちに、宮本なら喜んで笑いかけることが想像できたが、橋本の心情としてはそれすらも嫉妬の材料になった。 その何とも言えない何かが原因で、どこかいたたまれない気持ちに自然と陥った。マイナス思考に引きずられるように、昨夜のことをまざまざと思い出してしまう。(飲みすぎた勢いとはいえ、何であんなに爆弾発言を連呼してしまったんだぁあぁ俺ぇ……) 痛む頭を両手で抱えつつ、嫌々するみたいに首を振ったからこそ、その存在に気がついた。「ぁれ……?」 橋本の仕事着がハンガーにかけられ、壁に吊るされていた。綺麗に整えられている上着の中に、ワイシャツが一緒にかけられていたのだが――。 頭を抱えていた両手を使い、目をしっかり擦ってから、ふたたびハンガーにかけられた衣類を確認してみる。 けして上手とはいえない、歪な形で縫い付けられたワイシャツのボタンに、橋本の目が釘付けになった。(雅輝のヤツ、いつの間にあれを直したんだ? 行為のあとに腰が砕けた俺を背負って風呂に入れたり、シーツの交換をしたりとあれこれしていたはずだから、寝るのが遅くなっているというのに) しかしながら橋本の両腕を縛りつけたえんじ色のネクタイは、使い古した感を表すように、上着の肩の辺りに無造作にかけられていた。 くたびれたネクタイの様子で昨日の痕がどんなことになっているか、パジャマの袖をめくった。 見える位置にキスマークをつけるなと強く言いつけてから、同じミスをしなかった宮本。行為に熱が入ったり、昨夜のように頭のネジが飛んだ状態になっても、衣服から見えないような位置に痕をつけるようになった。「だから
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不気味なふたり トリプルバトルどういうことだよ!?

それは笹川とのトリプルバトルを終えた、数日後のことだった。 お得意様を指定の場所に降ろして、隙間時間におこなうハイヤーの洗車について考えながら環状線を流していたとき、対向車線の歩道にいるサラリーマン二人組が目に留まった。 自分がゲイだからこそ真昼間の人目のつきそうな往来という場所で、仲良さそうにしているふたりに過剰反応した。(営業に出かけるリーマンに見えないのは、恋人同士のように肩をくっつけて歩いてるせいだ。これからデートなのか?) どんな奴が堂々とデートしているのかを確認するために、慌ててハザードを出して、ハイヤーを路肩に寄せる。振り返りつつ目を凝らしてその二人組をよぉく見ると、ひとりは見覚えのあるイケメンだった。 そのイケメンとやりあった経緯があるからこそ、話しかけなければと瞬時に思いついた。 ハザードを消すなり、ルームミラーとサイドミラーで後方確認後、走っていた車道に戻ってから車線変更すべく右ウインカーを出して、タイヤを鳴らしながらUターンし反対車線に進入した。 そして二人組に向かって、派手にクラクションを鳴らす。 黒塗りのハイヤーを見て立ち止り、ぎょっとした見知らぬ顔の男と、目を大きく見開いた江藤。それぞれのリアクションに橋本は苦笑しつつ、ギアをドライブに入れてシートベルトを外し、急いで車から降り立った。「こんにちは、江藤さん。その節はどうも」 頭を下げながら丁寧に挨拶する橋本に対し、江藤もつられるように頭を下げた。「いえ。大したことが言えなくて、逆に申し訳なかったです」「江藤さん、この人だれ?」 隣にいるひょろっとした背高のっぽが訊ねると、江藤は鋭い視線を投げかけながら、その男の躰を肘で突いた。「橋本さんといって、雅輝の恋人だ。とっとと挨拶くらいしろよ」「ええっ!? 兄貴の恋人ぉ! こんなイケメンが相手だったの!?」 驚きの眼で橋本をまじまじと見つめる、見知らぬ男もとい宮本弟の態度に、江藤はあからさまなため息をついた。「お前さぁ俺様の顔どころか、雅輝の顔まで潰すことをしているんだぞ。とっとと挨拶しろって!」 叱責と同時に江藤の拳が、宮本弟の頭に炸裂した。かなり痛そうな音がしたというのに少し顔を歪ませたまま、目の前にいる橋本に小さく頭を下げる。「こんにちはです……」「こんにちは。いつもお兄さんにはお世話になってま
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トリプルバトル裏

自分がオーナーを務めるメンズキャバクラ シャングリラの二階の事務所にて、ソファを背に目の前の空虚な空間をじっと眺めていた。 電話中だからこそ、自分の顔が相手に見えないのをいいことに、思いっきり眉を顰める。耳に聞こえてくるのは、下でおこなわれる営業中の店の音ではなく、喜びを隠しきれない友人の声だった。『聞いてくれよ、昇さん』からはじまり、怒涛の勢いで喋る笹川に気圧されて、藤田が合いの手を打つ暇すらなかった。 しょうがないのでしばらくの間、呆れた顔をキープしたまま、笹川の語りを黙って聞いていた。『でさ、危ない橋本さんを助けに来たのが宮本っていう、どこからどうみても普通の男だったんだ。あの橋本さんを相手にする男だから、強面系のゴツい男が登場すると思ったのにさぁ。俺としては、すげぇ残念な展開だったわけ』(俺個人の意見としては、小柄で童顔の男が橋本さんを組み敷いてる絵面のほうが、見栄えがいいけどね。しかし、やっぱりというか――) 橋本に黒い手帳を預けたことが失敗だったのを、会話の内容で把握したと同時に、笹川が橋本に喧嘩を吹っかけた事実に頭を抱える。あとで謝らなければと、心の中にメモった。『宮本が現れた瞬間に、橋本さんの殺気がぶわっと上がったもんだから、これは面白いコトになるって分かったんだ。当然、宮本ってヤツを潰しに行くんだけどさ』「昴さんってば、本当に喧嘩っ早いんだから。一般人を相手に、ヤクザの本気を見せて怖がらせたいなんて、趣味が悪すぎる……」『橋本さんは一般人じゃないだろ。相当な手練れだったぜ、間違いなくこっち側の人間だ』「はいはい。相当な手練れの橋本さんを相手にして、昴さんは嬉しかったんだね」『確かに橋本さんとのボクシングはそれなりに楽しかったが、嬉しかったのは宮本とやり合ったときさ』 楽しげな笹川のセリフに疑問を感じ、藤田は視線を落としながら顎に手を当てた。 橋本の喧嘩の強さは、自分のアタッシェケースを奪った犯人をやりこめたことで知っていた。それ以上の強さを、どこからどうみても普通の男が持ち合わせているなんて、できすぎた話だと考えつく。「昴さんの話を聞いてると、作り話80%のときがあるんだよね」『何を言ってるんだ。昇さんに喋ることは100パー真実だぜ。なんせ金が絡むからなぁ』「その話が真実なら、橋本さんの相手だっていう恋人の宮本の
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トリプルバトル裏2

恋人の宮本にまで喧嘩を吹っかけていた展開を聞き、橋本に逢ったときに菓子折りつけて謝罪しなければと、テーブルに置いてるスケジュール帳に手を伸ばした。 橋本に逢う週のページを開き、※高級菓子折りつきでハイヤーに乗り込む。という注意書きをしておく。もちろん黒い手帳の預かり料も、自動的に込みになる。「それって昴さんが、いろんなヤツと喧嘩がしたいだけでしょ。気に食わない相手なら、立てなくなるくらいに打ちのめすくせに」『さすがは昇さん、俺のことをよく分かっていらっしゃる』「つまり、橋本さんと宮本のことが気に入ったんだね」 これまでの会話から察することができた、笹川の心情を言い当ててやる。『やっぱり分かっちまうか』「たとえるなら、そうだなぁ。恋人が仮出所してきたんじゃないかと思わせるような、妙なテンションだったからね。簡単すぎるでしょ」『俺さ、宮本が欲しくてたまんねぇ』「なんだかなぁ。昴さんの言い方が、どうにも卑猥なものにしか聞こえない。橋本さんが今のを聞いたら、速攻でブチのめしに来るよ」 注意する感じの強い口調で言ってみたのに、電話のむこう側の笹川がクスクス笑いだした。『確かに宮本のブツは昇さんの義弟といい勝負だし、ヤられてみたいって願望は、ほんのちょびっとあるけど』「アハハ! 絶対にちょびっとじゃ終わらせないくせに! というか、穂高といい勝負と言いきれるところが怖いよ」『橋本さん、エロい顔して何度も昇天してるんだろうなぁ。羨ましいぜ』(昴さんってば、言葉の端々に寂しさを漂わせていること、知ってるのかな――)「羨ましいとか言っちゃって。本当は仲のいいふたりに、嫉妬してるんでしょ」『俺に勝てないことが分かっているのに、それでも抗おうとする姿に胸を打たれちまったのかもな』 藤田の言葉を認めない発言を堂々とした、笹川に対しての返答に困った。大切な友人だからこそ地雷を踏んで、これ以上傷つけたくなかった。 息を飲んで黙りこくった藤田の様子を慮ったのか、笹川が静かに語りかける。『あのときの俺に抗う勇気さえあれば、アイツがムショに行く運命を、もしかしたら変えることができたのかもしれない。一緒に出かけても並ぶことなく、俺の背中を守るみたいに、後ろばっかついてきてなぁ。なんだかんだいつも、大事なところを守られていた』「昴さん……」『橋本さんを守ろうと
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ラヴ・メッセージ

※これは橋本が江藤と宮本弟に逢った日の夜におこなった、出張先にいる雅輝と熱いメッセージを交わした内容です 『雅輝、ただいま。今、大丈夫か?』「陽さんおかえりなさい。あとは寝るだけなんで大丈夫です。今日もお仕事お疲れさまでした」『お疲れ!さっきシャワー浴びて、ノンアルコールビールを飲んでるとこ。お前こそ、長距離の運転疲れていないか?』「そこまで長距離じゃないから平気。俺はオレンジジュースで乾杯」『カンパイ!あのさ今日の午前中、ハイヤーを走らせていたら、江藤ちんと雅輝の弟に偶然会った』「マジで!よく見つけられたね」『スーツ着てるし、平日の午前中なんて絶対に仕事中だろ。それなのにデートに行くみたいに肩寄せて歩いてたから、目立ってしょうがなかった』「あー、それは見つけやすい」『だろ。この間のこともあったから声かけた』「江藤ちんと佑輝、お似合いだったでしょ?」『お似合いだったけど、俺たちには負ける』「陽さん言うなぁ。確かに負ける気はしないけどwww 二人とも元気だった?」『元気元気。目の前でイチャイチャするみたいに喧嘩された』「相変わらずなんだね。呆れたでしょ?」『呆れるも何も、雅輝に会いたくなった』「俺に?」『この場に雅輝がいたら、もっと盛り上がっただろうなぁってさ』「何それ。俺がいたら喧嘩がもっと盛り上がるかもよ」『ツッコミどころが多すぎて、俺一人じゃ手が回らないかさ。ぜひとも雅輝に応戦してほしくて』「そんなことをしたら、江藤ちんの太い血管がブチッて切れちゃう。兄弟そろって無神経なところがあるから、神経質な江藤ちんが苦労するわけなんだよ」『弟くんに「兄貴のことをよろしくお願いします」って頼まれた』「頼まれたって、何をよろしくするんだか」『そんなの、言わなくても分るだろ』「陽さんってば、もう!」『よろしくしてくれるんだろ、雅輝?』「そりゃあ、ね。するに決まってる。恋人なんだし」『何を?』「わざわざそれを聞いてくるあたり、意地悪だよね」『嫌じゃないだろ?だって雅輝なんだから』「ねぇ俺以外に、意地悪してない?」『教育上、恭介にはちょっとしてるかも。何かあったらオデコを叩いてる』「そういうの、俺だけにしてほしいな」『俺に叩かれたいのか』「叩かれたくないけど、意地悪なことは俺だけにしてほしいって話」『雅輝はワガ
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