「バサームあがったよ」 暫くすると厨房からそんな声が聞こえて振り向く。 作業台には以前も食べた大きなサンドイッチ、バサームが三色のソースと一緒に置かれている。「はーいっ!提供行きまーす」 エルミラさんは元気よく更に駆け寄り、お盆にバサームを乗せるとテーブルへと向かっていった。「お待たせいたしました、定番のバサームです!」 少し離れていてもエルミラさんの声はよく届く。 遠目になっても丁寧にお皿を並べて会釈、澄ました装いと所作で戻ってきた。「今のお仕事が提供。出来上がったお料理をお客様に運ぶ仕事だよ。元気で明るく、たまに重たい料理を運ぶこともあるけど、注文した料理を出来立てのうちに最速でお届けするお仕事だね」 「今はお客さんが少ないから頑張れそうな気がするけど、多くなったら分からなくなりそう……」 「そうだね。だから今は言わなかったけど、行く時はテーブル名もちゃんと伝えて持っていくよ」 「なるほど……。お料理を持っていく時に声掛けはした方がいいんですか?」 「私が運ぶ仕事しますよーって仲間にアピールしてるからね。お仕事の取り合いになっちゃったら大変でしょ?或いはあっちの人が案内してて、そっちの人がお会計してたらこの仕事は私がやるよ!って伝えることで向こうは安心できるでしょ?案内しなきゃ!でも料理が!って焦らなくてよくなるの」 「連携がしやすくなるんですね」 そうそう、と笑顔で頷くエルミラさん。 指差した先では確かに髪を縦にやんわりと巻いたウェイトレスのお姉さんは入店したお客さんの案内を、短髪でシュッとした装いの男性は遠目ではレジのような箱の前に立っている。 言葉で聞く限り、皆その仕事固定って訳ではないのかな……。 その時、厨房から「カルスキュラあがったよ」と声が聞こえた。 私はエルミラさんに「おいで」と促されて料理の前に立つ。「わっ、美味しそう……!」 目の前に出されたのは一見カレーのようなお米に茶色の液体がかけられた料理。 甘くてスパイスの香りが立ち込める料理は上に白い粉のようなものが振りかけられている。「お料理は一つ一つあとで覚えていこうね。まずはこれを運んでくれる?」 「え、私ですか!?」 「何事も経験だよ♪」 「ふぁっ、はい……!」 仕事を任されてしまって、心臓がドキリと跳ねあがる。 お皿をお
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