「梓。そろそろ時間だぞ」 「分かってるわよ」 都内の郊外にある豪邸。 その地下室にあるスタジオで、男女二人はせかせかと準備をしていた。 「今日の新曲は自信作だぜぇ」 「ズルをしてるんだから当たり前でしょ」 「人聞きの悪い! ちゃんとお金を払ってるんだから良いだろ!」 「そのお金もズルで手に入れたものじゃない。私も人の事言えないけど」 やいのやいのと言い争いをしながらも、仲睦まじそうに。 そして笑顔でヘッドフォンを付けつつマイクの前に立つ。 「今回は何万再生いくかね」 「初動で1000万は欲しいわね。チャンネル登録者も鰻登りよ」 どうやら二人は配信者らしい。 二人で再生数の事を想像して下衆な笑顔になる。 「くっくっくっ。チヤホヤされるのはやっぱりたまらんなぁ」 「褒めてもらてると承認欲求が満たされて良い気持ちになるわね」 なにやら俗物的な夫婦である。 歌うのが好きとかではなく、チヤホヤされてるからやってるだけ。 この会話をファンが聞いたら、離れていく事を間違い無しである。 「顔出ししてなくてこれだからな。もし顔出ししたらもっと伸びるだろうけど。俺達美男美女だし」 「それは大学を卒業するまで我慢ね。チヤホヤされるのは嬉しいけど、有象無象に群がられるのは面倒だわ。ただでさえ今も群がってくるのに」 なんともナルシストな事である。 しかし、それを言うだけあって二人の男女はかなりのイケメンと美女である。 それはこの世の者とは思えない程に。 「よし。じゃあ始めるか」 「えぇ。なるべく早めに終わらせましょう」 こうして二人はレコーディングを始めた。 そして、後にアップされたこの歌は一週間で1億再生を超える事になる。 【ルトゥール応援】part512123:名無しの応援者速報!速報!ルトゥールがYeah Tubeに新曲をアップ!124:名無しの応援者SNSで告知されてたろ俺は30分前から待機してたんだ125:名無しの応援者サーバーくっそ重いw世界中で見られてるんじゃね?126:名無しの応援者四年前に急に出て来て一瞬で有名になったよな127:名無しの応援者顔出しも無しでこの数字は素直に凄い128:名無しの応援者声だけで分かる絶対二人とも美男美女129:名無しの応援者まだ大学生なんだろ?
Last Updated : 2025-12-03 Read more