LOGIN幼稚園の頃から幼馴染でそのまま大学卒業後に結婚。 夫は働きたくないので、たまたま競馬で当たった金を使って投資家兼ギャンブル配信者へ。 妻はその活動を手助けしていた。 しかし気付けば二人もまもなく四十代。 若い頃はチヤホヤされていても、この歳になると中々きつい。 貯金はあるので生活は出来るが、二人は何処かやるせなさを感じていた。 そんなある日、夫婦で買い物の為に車で移動してると対向車が突っ込んで来た。 二人はあっさりその命を散らす事になったのだが…。 これは高校入試前に回帰転生した夫婦が、やっぱり働きたくないので、未来の知識を使ってチヤホヤされる為に奮闘する物語。
View More緊張しながら学校に通う。 そして放課後はどちらかの家で猛勉強。 で、家に帰ってきたら競馬の本を読む。 「圭太。これ持って行って。多い方が良いでしょ?」 「助かる。交通費もあるからそんなに勝負出来ないと思ってたんだ」 「その代わりしっかり稼いでくるのよ?」 「負けはないから大丈夫」 そんな日々を過ごしているとあっさり週末。 競馬へ行く前日の土曜日も俺の家で勉強してたんだけど、梓がなけなしのお小遣いを俺に持たせてくれた。これで交通費を除いても諭吉一人分はある。 しっかり稼いできますぜ。 「行ってきまーす」 静かに挨拶をしてから家を出る。 母さんは日曜日しか仕事の休みがなく、まだ寝ているのだ。1Rのパドックから見たいから俺が出る時間が早いのもあるけど。 自転車に乗って最寄駅へ。 電車で1時間もしないうちに東京競馬場だ。 「バレませんように。バレませんように」 一応持ってる服で大人っぽいのを選んだつもりだ。それでも少し芋っぽさは抜けない。 今日勝ったらそれなりの服を買うべきだな。どこに保管しておくか迷うけど。 いきなり高い服を買ってきたら母さんに疑われるし。 「第一関門突破だぜ」 東京競馬場の最寄り駅に着くとまず向かったのはコンビニ。 そこで念願の煙草を買う事に成功した。 これまでも母さんが寝静まってから何本かパクっていたのだが、銘柄が違う事もあって爽快感は得られなかった。 俺氏。立派なヤニカスである。 「でも俺が未来で吸ってた銘柄はまだ発売されてないんだよなぁ。これでも母さんのよりはマシなんだけど」 確か俺が高校一年の頃にマルボ○のアイスブラス○が発売された筈。 後一年はこのマル○ロメンソールで我慢しなければ。それよりも煙草の値段が安すぎて驚いた。この頃は300円台だったんだよなぁ。 未来ではまもなくお札が必要な値段になりそうだったのにさ。 俺はコンビニ前の喫煙所ですぱすぱと煙草を吸う。他にもおっさん連中が新聞を凄い目で睨みながらも御一緒に。 この人達も競馬場に行くんだろうなぁ。 因みに俺もしっかり新聞を購入済みである。 煙草で英気を養ってからいざ入場。 内心ドキドキしてるのを悟られないように堂々と歩く。幸い、俺の事を気にしてる人間なんておらず、バレる心配はなさそうだ。 平均以上身長があって良かった
なんとか金稼ぎについての目処が立った。 バレなきゃだけど。犯罪だし。 「き、緊張する」 翌朝である。母さんは既に仕事に行っている。 出る前に今日はしっかり行くように釘を刺されたのでおサボりは許されない。 しかしだ。40歳間近だった俺が、今更中学生に溶け込めるのだろうか。かなり不安である。 「だ、ダメだ。煙草吸いてぇ…」 未来では中々のベビースモーカーだった俺。 昨日はなんとか我慢してたが、そろそろ限界である。 大っぴらに吸う事も出来ない。なにせ中学生なので。 「うぅ。不便ばっかりだ…。母さんが寝てる間に何本かくすねておけば良かった…」 後でどうにか買う手段を考えよう。 幸い母さんも喫煙者なので匂いはなんとか誤魔化せるだろう。多分。きっと。めいびー。 「よし。行くぞ」 意を決して外へ出る。 なんだか制服がコスプレに見えてないか不安である。挙動不審になりながら歩いてるので不審者みたいに見えるかも。 「圭太!!」 「あ、梓!」 そこに救いの女神が。 途中から梓が合流してくれたお陰でかなり気が楽になった。 「制服って恥ずかしくない?」 「気にしすぎよ。堂々としてなさい」 梓さんはもう割り切ってる様子。 とてもじゃないけど、俺はその領域までいけないよ。 「おはよー!」 「おっはー!」 学校が近付くにつれて生徒が増えていく。 知り合いっぽい人達が挨拶してくるので、なんとか不自然にならないように返していく。 「やべぇな。マジで誰が誰だか分からん」 「そうね。困ったわ」 顔は分かる。あぁ。こんな奴居たなって思うんだけど、いかんせん名前が出てこない。 これは当分苦労しそうだ。 「俺って何組だったっけ?」 「私と一緒で三組よ」 靴箱の場所すら分からんってやばいよな。 名札が貼ってあったから良かったけど、無かったらここでもあたふたしていた筈だ。 「せ、席は?」 「覚えてる訳ないじゃない」 教室に入ってもまた苦難。 座席表とかないのかね。なんて回帰者に優しくない学校なんだ。 未来から過去に戻って来た人の事も考えてほしい。 「おーい、圭太! そんな所にぼーっと突っ立って何してんだ?」 「お、おう!」 えーっと。そうだ
その日の夜。 夕方頃に梓とはバイバイしてからも家でこれからの事を考えていると、母さんが帰ってきた。 「あんた、今日学校サボったんですって? 一体何やってるのよ」 どうやら学校から母さんに連絡がいってたらしい。ぷんぷんと怒ってる母さんをぼーっと見ていると自然と涙が出てしまった。 「な、なによ。どうしたの? どこか体調が悪いの?」 「な、なんでもない」 急に涙を流した俺を見て母さんはアタフタしている。口調は厳しいけど優しい母さんだった。 自分の事を後回しにして、俺の学費やらを捻出する為に必死に働いてくれていた。 恩返しする前に亡くなってどれだけ泣いたか。 「もう。明日はちゃんと行きなさいね」 「うん」 俺の頭をポンポンと叩いて台所に向かう。 しかし、今日はご飯は用意してるのです。梓が。 「あら? ご飯作ってくれたの?」 「梓が来てたから」 「よく出来た子ね〜。あんた、あの子は手放しちゃだめよ?」 「分かってる」 幼稚園からずっと一緒だった事もあり、梓と母さんは仲が良い。 というより、向こうの家とは家族ぐるみの仲だ。 母子家庭同士助け合いながら頑張ってきた。 「じゃあ頂いちゃいましょうか」 出来ていた晩御飯をレンチンして、テーブルに並べる。 「「いただきます」」 うまっ。え? うまっ! 「あら? とても美味しいわね?」 生姜焼きにご飯と味噌汁。至って普通のメニューなのに、高級料理かってぐらい美味い。 いや、確かに未来での梓は料理が上手だったけども。ここまでの味じゃなかったぞ? 「これがスキルの効果か? 一流シェフレベルじゃん」 「? 何か言った?」 「ううん」 梓の料理のレベルは5だったはず。 5でこれだけの味って…。10になったらどうなるんだ。これはスキルの検証も早い事しておいた方が良さそうだ。 「はぁー、美味しかった。あの子は良いお嫁さんになるわね」 「それは間違いない」 実際良いお嫁さんだった。 俺はガラケーを操作して梓にメールを送る。 久々すぎたけど体は覚えてるもんだな。 スマホの便利さに慣れてたけど、ぽちぽちと押すのがなんか懐かしく新鮮だ。 『料理がべらぼうに美味しいんだけど』 『私も家でびっくりしたわ。ママにどうやったのかって詳しく聞かれたぐらいよ』 メールを送ったらすぐに
「たっけぇ」 「とても中学生に払える額じゃないわね」 俺達二人の家はどちらかと言うと貧乏寄りだ。 両方共母子家庭で、生活に余裕がある訳ではない。お互いの母は俺達を養う為に必死に働いてくれている。 しかしその無理が祟ったせいか、俺の母は大学在籍中に、梓の母は大学を卒業してすぐに亡くなってしまった。それもあって働くのが嫌になったってのもある。 せっかく過去に戻ってこれたんだし、このバッドエンドは回避したいところ。 「ふむ。容姿とか学力を上げるのですら、こんなにお金がかかるのか」 例えば容姿は今50だけど、1上げるのに50万かかる。 運は20で1上げるのに20万。 「二桁の所の数字で金額が変わるみたいね」 「全部MAXにしようと思ったらどれだけお金がかかるんだよ」 スキルはもっと酷い。 歌はLv2で3に上げるのに200万。 競馬なんで6に上げるのに500万だぞ。 「あら? 新しくスキルを覚えられるのね? 一つ覚えるのに…ひえっ! 1000万!?」 たまんねぇなおい。 どれだけお金を取れば気が済むんだよ。 「いや、お金を払えば努力不要って事だろ? そう考えるとかなりお得なのか?」 「それでもよ。現状はどうしようもないじゃない」 俺達はまだ中学生。 バイトも出来ないし親にお金を無心する事も出来ない。しかしである。 「株なら出来るんだよな。母さんにお願いして、口座開設やらはしないとだけど」 「あら? そうなの?」 けど、ハードルがある。 まずはパソコンがない。ノートでもいいからとりあえず必要。その購入資金がない。 次にさっきも言ったけど親の説得。 株取引とかは、良く知らない人からしたらギャンブルと変わらないからな。 それを中学生の俺にやらせてくれるのか。 「これ、なんかお金の投入口みたいなのがあるから、ここに入れれば良いんだろうけど」 領収書とかくれるのかな? 無ければかなり面倒な事になるよね。 主に税金関係で。大金をこのステータスに注ぎ込む訳だしさ。 「とまぁ、軽く考えるだけで問題がいくつもある訳よ」 「私達の家は貧乏だものねぇ」 俺と梓は両方ともボロアパート住みだ。 必死に働いてくれている母さん達にお金を無心するのは気が引ける。 「でもせっかく戻って来れたんだぜ? 早く稼いで母さん達を仕事から離さ