妻が、俺の従弟に一目ぼれしたんだ。三人で離婚届を出しにいく途中、運悪く交通事故にあってしまった。次に目を覚ましたら、なぜか三人そろって、俺と妻が婚姻届を出したばかりのあの日に戻っていた。今度は、お互い何も言わなくても、このまちがった結婚を終わりにしようってことになった。そして、妻は従弟と籍を入れて、二人で海外へ行ってしまった。俺というと、国内に残って、必死に法律を勉強して、仕事に打ち込んだ。あっという間に、5年が過ぎた。従弟のおかげで、元妻は海外で人気のヴァイオリニストになっていた。高い出演料をもらって、たくさんのファンに囲まれているらしい。一方で俺は、相変わらず法律事務所で、助けを求める人のために地道に働いていた。そんなある日、親戚の集まりで、俺たち三人はまた顔を合わせることになった。……俺がホテルのロビーに着いたとき、親戚たちはまだほとんど来ていなかった。適当に静かな席を見つけて座ると、ノートパソコンを開いて厄介な事件の検討を始めた。事件のことに集中していると、佐々木夏美(ささき なつみ)と佐々木渉(ささき わたる)がホテルのドアを開けて入ってきた。二人が現れた瞬間、親戚たちの視線がぱっと集まる。みんな一斉に立ち上がって、彼らの周りに駆け寄り褒めちぎっていた。「夏美さんは本当にすごいわ。こんなに若くして海外で成功するなんて。それに、旦那さんもこんないい方で!」「なんでも今回は、音楽家協会に招待されて演奏会のために帰国したんだって。私たち一族の誇りよ!」「ねえ夏美さん、うちの子がバイオリンが大好きでね。あなたのこと、いつもすごいって言ってるのよ。よかったら、ちょっと時間を作って教えてあげてもらえないかしら?」親戚たちの申し出に、夏美は目をぱちくりさせ、渉の腕に寄り添いながら、くすくすと笑った。「あらあら、身内なんだから、そんなにかしこまらなくてもいいのに。何か分からないことがあれば、いつでも電話してくれればいいわよ!」その一言で、親戚たちからのお世辞が堰を切ったようにあふれ出す。みんな、この薄いつながりを頼って、自分や子供の将来の道筋をつけたいのだ。夏美は少しだけあごを上げて、自分が主役であるこの状況を心から楽しんでいるようだった。俺はキリのいいところで仕事をやめて、イヤホンを
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