LOGIN妻が、俺の従弟に一目ぼれしたんだ。 三人で離婚届を出しにいく途中、運悪く交通事故にあってしまった。 次に目を覚ましたら、なぜか三人そろって、俺と妻が婚姻届を出したばかりのあの日に戻っていた。 今度は、お互い何も言わなくても、このまちがった結婚を終わりにしようってことになった。 そして、妻は従弟と籍を入れて、二人で海外へ行ってしまった。 俺というと、国内に残って、必死に法律を勉強して、仕事に打ち込んだ。 あっという間に、5年が過ぎた。 従弟のおかげで、元妻は海外で人気のヴァイオリニストになっていた。高い出演料をもらって、たくさんのファンに囲まれているらしい。 一方で俺は、相変わらず法律事務所で、助けを求める人のために地道に働いていた。 そんなある日、親戚の集まりで、俺たち三人はまた顔を合わせることになった。 元妻は従弟に寄り添い、勝ち誇ったような顔で、俺に嫌味を言ってきた。 でも、俺が、「別の女性と結婚するつもりだ」と伝えたとたん、彼女は逆上してこう叫んだ。 「あの時は、ただの気の迷いだったのよ!なのにあなたが他の女の人とくっつくなんて、絶対に許さない!」
View More最近、夏美にずっとつきまとわれていることを、かいつまんで話した。胡桃は顔をしかめたけど、ただ俺の腕をぎゅっと抱きしめただけだった。「しばらくはゆっくり休んで。あの女が退院したら、私が話をつけてくるから」胡桃はいつも俺の厄介事をぜんぶ片付けてくれる。だから、彼女の言葉を聞いて安心して、すべてを任せることにした。家に帰るとベッドに倒れ込んで、そのまま次の日の朝までぐっすり眠った。結婚式の会場は、俺が思い描いていたとおりに飾り付けられていた。衣装も、海外の高級ブランドのデザイナーが手作りしてくれたものだ。胡桃と付き合い始めたころ、彼女は約束してくれた。俺が昔受けた心の傷をぜんぶ埋めるために、必ず最高のものをくれるって。この何年もの間、胡桃は本当にその約束を守ってくれた。だけど、誓いの言葉を交わす直前夏美がウェディングドレス姿で、車椅子に乗って入口に現れたんだ。彼女は花束を抱え、熱い眼差しで俺を見つめて言った。「翔太、他の人と結婚しちゃだめ!前世も今世も、どちらでもあなたは私の夫だった。私の夫になれるのは、あなただけなの!」招待客たちは一瞬でざわついた。胡桃は険しい顔になって、俺の手を握る力もどんどん強くなっていく。俺は彼女をなだめるように手をポンと叩いて、壇上から降りた。夏美の目には、得意げな色がどんどん濃くなっていく。俺が必ず彼女を選ぶと、確信しているみたいだった。彼女の目の前で立ち止まり、少しうつむいてフッと鼻で笑った。「夏美。俺の完璧な結婚式を台無しにしてくれたな。よくも俺の前に現れられたね。まさか、俺が君を選ぶと本気で思っていたのか?自分の厚かましさ、卑劣なやり口を頼りに、ここまで来たというわけか?」夏美は信じられないという顔で俺を見た。「翔太、私たち、人生をやり直してるんだよ!これがどういうことか分かる?私たちは、この世界の主人公なの!私たちが望む未来を、絶対に手に入れるんだから!渉もそうだったし、あなたもそうなの!」俺は冷たい視線で夏美を一瞥すると、ゆっくりと後ずさった。「何を言ってるんだ?さっぱり分からないな」彼女は突然俺の手を掴んだ。その目は、血走っていた。「前世では私が悪かった。渉に浮気して……それであなたは車で無理心中を図って、次に目を覚ましたら、結婚したばかり
夏美は俺を見て、後悔の涙を流しながら言った。「お願い、私を助けて。見捨てたりしないよね?以前はぜんぶ私が悪かったの。あなたともう一度やり直したい。一生、大事にするから。やっとわかったわ。本当に私を愛してくれたのは、あなただけだったって。渉が愛してるのはお金だけ。私は、利用されてただけなの……」俺は冷たい顔で夏美の口に酸素マスクをかぶせ、そのおしゃべりを黙らせた。救急隊の人たちと彼女を救急車に乗せてから、俺は事務所に戻った。慌ただしい仕事がやっと終わった頃には、もう次の日の深夜だった。胡桃は、みんなのためにとっくに夜食を買って、俺のオフィスに置いてくれていた。同僚たちが仕事終わりに温かいものを食べられるように、って。温かいスープを一口飲むと、同僚たちの顔に満足な笑みが浮かんだ。「福田先生、石川さんは本当に気が利きますね。2日続けて差し入れしてくれたんでしょう?今回しか食べられなかったけど、俺たちのぶんもお礼を言っといてくださいよ」胡桃のことを思うと、俺の心は温かい気持ちで満たされた。やっとご飯を食べ始めたら、同僚の一人が慌てて俺のオフィスに駆け込んできた。「福田先生、面会です。お友達の佐々木夏美さんが危篤だそうで、すぐに病院に行ってほしいとのことです……」俺は夏美の友人に連れられて、病院へ向かった。病室に入った途端、悲しみに満ちた夏美の瞳と目が合った。思わず息を飲み、喉の奥に詰まってしまったかのようだった。うまく息ができない。「翔太、この2日間、どうしてお見舞いに来てくれなかったの?私のこと、もうどうでもいいの?私が悪かったってわかってる。許してくれない?これからは絶対にあなたを大事にするから」死ぬほど働いたせいでまだ足がガクガクするのに、夏美のわざとらしい声を聞くと、余計に腹が立った。「夏美、そんな冗談、面白いと思ってんのか?!それに、俺にはもう婚約者がいる。3日後には結婚式なんだ。だからもう、プライベートなことで俺を煩わせないでほしい」夏美は俺をじっと見つめて、確信したように言った。「信じない。もし他の人を好きになったなら、どうして事故のとき、真っ先に私のところへ来てくれたの?」俺はベッドのそばに立ち、冷たく言い放った。「出勤途中に、たまたま通りかかっただけだ」そして、彼女
俺は鼻で笑って、冷ややかに言った。「俺はこつこつ努力して、上を目指してるんだ。誰と並んでも、見劣りすることはないんだ。夏美、君は別にそんなにすごいわけじゃないだろ」演技がうまいこと以外、俺から見れば、夏美に良いところなんて何もなかった。そう言い捨てて、俺はその場を去ろうとした。でも、夏美が俺の腕をつかんだ。彼女は目を赤くして言った。「私が別にそんなにすごいわけじゃないってわかってる。でも、あなたは私の夫だったじゃない。どうして他の人と……」夏美の理屈はさっぱり理解できなかった。でも、俺は自分の理屈で言い返してやった。「俺たちはとっくに離婚した。一度ならず、二度もだ。夏美、君は前世も、今世も渉を選んだだろ。だったら、もう二度と俺の前に現れるな」彼女は目を赤くして首を振り、俺の手を離そうとしなかった。「あの人とは……どうやって知り合ったの?」その質問には、すぐには答えられなかった。前世のあの事故で、記憶を持ったまま時間をさかのぼったのは、俺たち三人だけじゃなかったんだ。あの場所を通りかかった胡桃も事故に巻き込まれて、目が覚めたら数年前に戻っていたんだ。彼女は何が起きたのか確かめようとして、俺にたどり着いた。そして一緒に過ごすうちに、俺たちは惹かれ合うようになったんだ。でも、夏美に受けた心の傷が深くて、今の関係になるまで、俺たちは5年もかかったんだ。俺は唇を引き結び、冷たく言い放った。「君には関係ないことだ」それだけ言うと、俺は背を向けて歩き出した。夏美が慌てて追いかけてきた。「翔太、私のこと、まだ少しでも想ってくれてるの?」彼女の言葉に答える必要なんてない。前世で夏美にされたことを考えれば、やり直しの機会があったのに復讐しないだけでも、俺は大目に見ている方だ。ましてや、今の俺には本当に生涯を共にしたい人がいる。これ以上、面倒なことにはなりたくなかった。だから、渉のことは、個人的な恨みは置いといて、あくまで法律に基づいて対処する。渉が壊したのは夏美のバイオリンだ。彼女がどうするかは知らないが、俺は名誉毀損で訴えるつもりだった。ただ、この一件が、次々と別の問題を引き起こすとは俺たちも思っていなかった。夏美はなんと、示談を拒否し、渉への厳罰を求めたのだ。渉も黙っておらず
胡桃が心配そうな顔で俺を見て、「また頭が痛いの?」って聞いてきた。彼女はそっと俺のこめかみに手をあてて、周りを気にするそぶりもなく揉みほぐしてくれた。渉は目を細めて、冷たい声で言った。「あなたは誰ですか?」胡桃は渉を一瞥し、その目には軽蔑の色が浮かんでいた。ホテルの支配人が胡桃に挨拶した。「石川会長、本日はどうされたのですか?何かご用でしょうか?」胡桃はうなずいて、「婚約者の家族に、結婚の報告をしに来たんです」と答えた。その言葉で、個室は静まり返った。人だかりの中にいた年下の従弟が、突然叫び声をあげた。「この人は石川胡桃だ!あの石川グループの会長だよ!」その言葉を聞いて、その場にいたみんなの顔色が変わった。石川グループは海市を代表する大企業で、その事業は全国の人々の生活に関わっているほどだ。俺は周りを気にせず、ただ胡桃の隣に疲れた顔で立って、さっきまでの状況を説明した。胡桃の顔は見る見るうちに険しくなり、すぐに支配人に防犯カメラを調べるよう命じた。渉は顔面蒼白になって、支配人を呼び止めた。「調べなくていいですよ!たいしたことではありません。みんな身内だし、事を荒立てたくないんです」胡桃は冷たく支配人を見ると、「調べなさい」と一言だけ命じた。「佐々木さん、1億6千万円もするバイオリンが壊されたのは、決して小さなことではありません。犯人を見つけ出して、法による裁きを受けさせたいと思っています」渉は額から冷や汗を流し、唇が震えるだけで、何も言えなくなってしまった。一方、夏美は複雑な表情で、俺の腕をとっている胡桃をじっと見つめていた。母が笑顔で人混みをかきわけて出てきた。「胡桃さん、いらっしゃい。ずっと待ってたのよ。この嬉しい知らせは、どうしても胡桃さんから伝えてもらいたくて!」胡桃の表情はすぐに和らいで、母ににこやかに挨拶をした。俺は胡桃の手をとり、親戚一同に改めて紹介した。「皆さん、こちらが俺の婚約者の石川胡桃です。1週間後に結婚式を挙げるので、皆さんにご報告したくて集まっていただきました」「ただ、こんなトラブルが起きるとは思ってもみませんでしたけどね」胡桃は俺の言葉を引き継ぎながら、固まっている渉と夏美にちらりと視線を送った。さっきまで夏美にお世辞を言っていた親戚たちは、気まず