剣を構えると、二頭のオオカミが地を這うような低い唸り声を上げ、牙を剥いて同時に襲いかかってきた。ユウヤは冷徹なまでに冷静な動作で、バリアを纏わせた剣を一閃、薙ぎ払うように振るった。 空気を切り裂く鋭い音と共に、勢い余って三頭の首が空中に舞い、鮮血が霧の中にどす黒い花を咲かせる。仲間が一瞬で屠られた光景を目の当たりにし、残りの三頭は本能的な恐怖に駆られたのか、じりじりと後退を始めた。「逃がすと面倒だしな」 ユウヤは逃走を許さず、足元の地面を蹴った。縮地に近い速度で肉薄し、バリアを刃として振るう。抵抗する間もなく、残りの三頭もまた、その首を地面に落とした。「うぅ~ん……見た目だけで手応えナシか」 ユウヤは剣を軽く振り、付着した血を払った。期待外れだったことに、少しだけ肩透かしを食ったような気分だ。「えっと……魔石あるのか? これだけデカかったらあるだろ」 試しに『収納』の機能を使って回収を試みると、手のひらに収まりきらないほどの巨大な魔石が六個、ぼうっとした輝きを放ちながら現れた。「で……このワンコ達は片付けなきゃいけないのか? 面倒じゃない……? 一応……収納に入れておくかな」 死体を放置して腐敗させるのも寝覚めが悪いため、ユウヤは巨大なオオカミの死骸も手際よく収納へと放り込んだ。 作業が終わろうとした、その時だった。 風を切る鋭い音が響き、ユウヤの足元に一本の矢が突き刺さった。「弓矢……? 人か? 盗賊?」 ユウヤは瞬時に身を翻し、矢が飛んできた方向を鋭い眼差しで見据えた。モンスターが多発しているこんな危険な場所で、わざわざ人間が攻撃を仕掛けてくるだろうか。「盗賊も知能が低下し過ぎてモンスターになっちゃって、共存し始めたのか? それとも頭が悪すぎて体内に魔石でも出てきちゃって、モンスターに進化したとか!? あはは……な訳ないか」 ユウヤは自嘲気味に笑い飛ばしたが、周囲の霧がさらに濃くなり、その奥から複数の不気味な気配がじわじわと近づいてくるのを感じていた。それは、先ほどのオオカミたちとは明らかに異なる、知性と殺意を孕んだ気配だった。「それにしても、気配を全く感じられないのは、この黒い霧のせいなのかな……?」 ユウヤは、視界を遮るねっとりとした闇を忌々しげに睨んだ。弓矢が飛んできた方角へと視線を向けると、その違和感の正体がようやく
Última actualización : 2025-12-25 Leer más