その日、上司が他社の社長を会議室に連れて入った瞬間、私・中野南(なかの みなみ)は呆然とした。「尾崎社長、これが私たちのチームです」目の前の男は私の元夫・尾崎風斗(おざき ふうと)だ。三年前、彼は初恋の女・松下望海(まつした のぞみ)のために何度も私の真心を踏みにじり、私たちの愛を裏切った。今この瞬間、彼は眉をひそめ、じっと私を見つめている。幾多の修羅場をくぐり抜けた上司は、風斗のその様子を見て、すぐに私たちは「ワケあり」だと悟り、瞬時に視線を私に向けた。上司はこう言った。「私と尾崎社長がこのプロジェクトを担当する。中野さん、会議室を片付け終わったらもう出て行っていいぞ」言いながら、上司は私に必死に合図を送った。「結構。このプロジェクトは中野さんに担当させてもらおう。他のやつは論外だ」風斗が言い放つと、他の全員がびっくりしてその場に固まった。「尾崎社長……それは……わかった、中野さん、任せるから尾崎社長ときちんと打ち合わせするんだぞ」上司は他の全員を連れて退室すると、会議室には私と風斗だけが残された。彼の目はわずかに赤く、声を詰まらせて私に問いかけた。「この二年間、お前はどこにいたんだ?なぜ連絡を返さなかった?」それを聞いた途端、記憶が波のように押し寄せ、かつての苦い記憶が再び胸に込み上げた。しかし、かつてのようなヒステリックな反応はなく、私はただ淡々と流した。「尾崎社長、おかけください。プロジェクトについてご説明します」私の無表情な様子に、風斗は少し茫然としているようだった。それから彼はしばらく話を聞いてから、ようやく口を開いた。「このプロジェクトの担当がお前なら、すぐにサインしよう」「……」私は無言だった。風斗は眉をひそめ、上司を呼び入れた。先ほどと同じ内容を伝えると、上司は嬉しそうに即座に承諾した。風斗を見送った後、私は椅子に座って気怠さを覚えた。この二年間、私は自分に言い聞かせてきた。過去のことで悲しむな、と。そんな必要はないと。だが、そう自分に言い聞かせれば聞かせるほど、過去の光景は鮮明になる。絶えず私を苦しめる。ようやくそのトラウマから抜け出せたと思ったのに、まさかたった二年で、また風斗に会うことになるとは。私と風斗は五年間夫婦だった。学生時代
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